4話 恐怖! リアル アナライズ スキル

 翌日の帰宅後、僕とミラと益男の3人は人気FPSゲーム「Saver and Demon Online」を楽しんでいた。

 世界1位だから楽しくて当然だ。連戦連勝で敵なしだ!

 そんな僕達に挑戦を挑む相手が現れた。

 プレイヤーネーム『ユーズレス』? しかも一人か……


「こやつランク外。ランク戦初めての様であるな」

「たったの一匹なのだ。世界一の我らを知らぬ野良の『悪魔憑き』など敵ではないのだ」


 益男とミラの二人は対戦相手のデータを確認して、相手を完全になめ切っている。

 知らないで絡んできたんだろうけど、初心者を虐めたくないんだよなぁ。

 うーん、無視するのも可哀そうだからチョット遊んであげるか。


「初心者いじめにならない様にハンデをあげながら対戦しよう。俺達は世界一だからな」

「当然でござる。王者の風格を感じてもらうでござるよ」

「それなら我の出番はないな。見物させてもらうのだ」


 よし、対戦を始めるか。対戦フィールドは都市部に決まった。

 廃墟となった都市に降り立った、剣聖のシュライン、華麗なるチャーチミラ、剛腕のテンプル益男の3人。

 無敵の3人! 俺達が最強チーム『神教寺しんきょうじ』だ!!

 僕達は直ぐに進行せず、スタート地点で誰が先に戦うか話始めた。


「さて、先手は誰からにしようか?」

「拙者が一番「チュン」ーー」


 話始めたテンプルの眉間に銃弾が軽快な音を立てて突き刺さった。

 狙撃?! 弾丸の射線を追った先のビルの屋上に光が見える。

 スナイパーライフルの銃口の煌めき。

 生き残った僕とチャーチは狙撃されないように散開した。


「どうするのだシュライン?」


 チャーチの問いかけに作戦を考える。

 油断していたとはいえ、テンプルが容易に狙撃されたのだ。

 相手は狙撃が得意なタイプだから、接近戦は苦手な筈だ!


「僕が前に出る。チャーチは援護を頼む」

「分かったのである」


 チャーチがビルの影から手を出した瞬間、手の平が撃ち抜かれる。


「痛いっ! 痛いのだ!」


 チャーチが叫ぶ! いやっ、ゲームだから痛くはないのだけど……

 アーマーゲージがぐんぐんと削られていく。

 僕は狙撃されているチャーチを囮にして、迂回しながら敵に接近する。


「アーマーが! アーマーがぁっ! 尊、早くなんとかしろっ!」


 チャーチは動くたびに的確に狙撃されているようだ。

 既にロールプレイをする余裕がなくなり、チャーチからミラに戻っている。

 僕が敵がいるビルに侵入したと当時に「チャーチがユーズレスに倒されました」とキルログが上がる。

 ギリギリ耐えてくれたか。

 スナイパー狙撃手は接近されたら終わり。

 だからスナイパーが一か所に留まる事はない。

 逃げられる前に敵を捕捉する為、全力で階段を駆け上り屋上を目指す。

 屋上に上がり見えた敵影。

 氷の様な冷たい青色の虎獣人の『悪魔憑き』!


「唸れっ、エリミィネェタァァァァ!」


 駆け寄り振るう必殺武器エリミネータービームサーベルを敵が後方にジャンプして避ける。

 相手は素人か? 空中に避けたら、銃弾から逃げられなくなる。

 僕はエクスクルージョンサブマシンガンを取り出しーー

 んっ、突如足元から閃光が立ち上る。

 僕は何が起きたのか足元に目を向けたが、それを知る前に画面が暗転した。

 画面に映る『LOSE』の4文字。それは僕達の『死』を意味する不吉な英字。

 僕が死んだという事は、足元の閃光は地雷が放ったものか……

 隣を見ると益男とミラもうなだれている。

 僕達『神教寺』は無名のプレイヤーに敗北した事でランキング一位から転落したのだから。

 誰なんだコイツは? 有名なプライヤーは全員知っている。

 新人がいきなり勝てる程、甘いゲームじゃないんだよ!

『ユーズレス』か……『ユーズレス役立たず』?

『役たたず』ってなんか最近聞いた様な気がするけど……

 氷の様な冷ややかな目を向けた虎の獣人……冷虎……まさか玲子?!

 でも玲子なら僕の思考を読めても不思議ではない。

 僕の疑念を肯定するかのように、スマホが玲子からの着信を伝える!

 恐る恐る電話に出る。


「ねぇ、もうやらないの?」


 玲子の冷たい声が僕の心臓を鷲掴わしづかみにする。

 恐怖で思わずスマホを投げ捨てる。


「何してるでござる? 玲子殿からの電話ではないか」


 僕のスマホを拾った益男が、画面を見て玲子からの着信だと気づいた。

 そして、スマホを耳に当ててーー


「仏の額のホクロみたいなの白毫相びゃくごうそうっていう毛なんだって? 益男のキャラに付いてなかったから銃弾で作ってあげたけど、喜んでもらえたかしら?」

「ア”ァァァァァ!」


 益男が叫び声をあげて僕のスマホを投げる。

 投げられたスマホがミラの足元に落下する。


「ねぇ、死んで天使になる聖人っているけど、天使が死んだら何になるのかなぁ?」

「イ”ィィィィッ!」


 ミラが悲鳴を上げて僕に抱きつく。

 スマホから距離を開けて、僕達3人は抱き合って震える。

 僕は恐怖を紛らわす為にゲームの話をする事にした。

 初心者だったハズの玲子が僕達に勝てた理由も知りたいしね。


「どどどどうして僕達の動きが分かるんだ?」

「ステータスを見れば簡単よ」


 ステータスを見れば?

 そんな機能は「Saver and Demon Online」に存在しない。

 転生者特典で解析スキルでも身に着けたってのか?


「冗談はよしてくれよ……ステータスを見る機能なんてないだろ?」


 疑問を投げかけた僕に玲子が恐怖のリアルアナライズスキルを見せつける。


「ステータスオープン。脈拍数:102/分、呼吸数:32/分、瞬き頻度:36回/分。少し緊張気味ね。尊は普段、脈拍数:68/分、呼吸数:23/分、瞬き頻度:21回/分よ。だから緊張状態の尊は1.6秒毎に行動の起点があるの。益男とミラのもわよ」

「「「イヤァァァァァァァァァァッ!!!」」」


 僕と益男とミラは同時に悲鳴を上げた。

 そして、それぞれの神と仏に誓った……玲子を怒らせないようにと!!

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