3話 唸れっ、エリミィネェタァァァァ!

 ピンポンパンポーン!

 これから始まるのは『奇跡が舞い降りた街』の3話です。

 序盤の登場人物・ノリが違いますが引き続きお楽しみ下さい。


 2X21年。突如現れた『悪魔憑きdemon』によって世界は危機に瀕していた。

『魔力』を扱い、あらゆる武器が通じない『悪魔憑き』達。

『悪魔憑き』が現れた当初、人類に対抗手段はなかった……

 だが、神によって選ばれた『聖力』を行使する『救済者Saver』の登場によって、人類は『悪魔憑き』に対抗する事が可能となった。

 戦いは激化し、次第に『力』を現代兵器に込める様になった。

 そして戦場は『魔力』と『聖力』の弾丸が飛び交うものとなった。


【生き延びたければ銃を取れ!!】


 *


 ダーン!

 筋骨隆々の男が僕を狙っていた『悪魔憑き』を打ち抜く。


「ありがとうテンプル!」

「感謝は敵を殲滅してからでござる」


 僕は相棒に感謝した。さすが長年戦場を共にした僕のバディだ。

 タタタタッ! アサルトライフルが軽快な音を立てる。


「ぼさっとするなシュライン!」

「ありがとうチャーチ! ここも安置では無くなったな」


 僕は新しい仲間チャーチの援護を受けてビルの影に隠れた。

 どうやら友軍が押されているようだ。

 僕達『救済者』側が不利な状況だ。

 リーダーとして決断しなければいけない……


「友軍が押されてるな。こうなったら敵の大将を討ち取るしかないな。僕が切り込む、協力してくれるか?」

「当然でござる。支援なら任せるでござるよ」

「私が援護するんだ。ヘマをするでないぞ」

「ありがとう二人とも」


 簡単に協力と言ってのけたが、僕の進路を確保する為に仲間の二人に死んでくれと言ってる様なものだ。

 僕は決意を確かめる様にチームメンバーの目を見つめた。

 タンクトップを着た頑強でマッシブな僕の相棒テンプル。

 今日仲間になったばかりの修道服に身を包んだ美女のチャーチ。

 これから僕はたったの『3文字のアルファベット』の為に、この二人を犠牲にするんだーー

 銃弾が飛び交う中、僕は敵の本陣に向かって走り始めた。

 右側に悪魔憑きの群が現れたが、降り注ぐ砲弾によって直ぐに吹き飛ばされる。


「行けシュライン! 拙者にかまうでない! 消し飛ばせタイラニー迫撃砲!」


 テンプルが砲撃を続けながら僕に向かって叫ぶ。

 僕を援護したせいでテンプルの位置は敵に把握された。

 砲撃主体のテンプルだけでは生き延びる事は難しい。

 だけど作戦通り、勝利の為にテンプルを見捨てた。

 別れは辛いがテンプルの意志を無駄には出来ない。

 僕とチャーチは振り返らず、敵の本陣のビルに突入した。

 そしてロビーで大量の『悪魔憑き』の待ち伏せを受けた。

 だが、


「チャーチ!!」

「『悪魔憑き』如きが本物の天使に勝てると思うなあああああ!」


 僕の呼びかけより早くチャーチが敵前に躍り出る。

 華麗に銃弾を避けながらジャッジメントアサルトライフルが火を噴く。

 先行したチャーチを『悪魔憑き』が囲む中、僕はこっそりビルの奥に進む。

 ビルの中の閉鎖空間では近接戦闘のプロの僕に敵う相手はいない。

 敵の『悪魔憑き』の背後に忍び寄り、串刺しにしながら敵の大将を目指した。

 そして辿り着いた最深部。

 待ち受けていたのは『悪魔憑き』の大将と5体の部下。

 僕はエクスクルージョンサブマシンガンを部下の『悪魔憑き』に向かって乱射しながら突撃した。

 倒すのが目的じゃない。少しだけでいい! 足を止めろ!!

 弾丸を打ち切ったエクスクルージョンサブマシンガンを投げ捨て、僕の必殺武器を手に取る。


「唸れっ、エリミィネェタァァァァ!」


 僕のエリミネータービームサーベルが敵大将の『悪魔憑き』を両断する。

 画面に浮かぶ『WIN』の文字。


「「「やったー!」」」


 僕と益男とミラは歓喜の声を上げる。


「早くランキングを見るでござるよ」


 僕は益男にせかされてランキングページを開く。


【ランキング1位:神教寺】


「うおおおおおおっ。世界一だ! ミラが奇跡を起こした!」


 僕達は互いを称え抱き合った。

 人気FPSゲーム「Saver and Demon Online」でランキング1位。

 世界の頂点に立つという事は、俺達にとって最大の栄誉なんだ!

 後ろで見ているだけの玲子には理解出来ないだろうけど……


「うるさいわね。このランキングの『神教寺』って何よ?」

「見て分からないのか? 僕たちのチーム名だよ」

「フォーメーションの順番で名付けたでござるよ。前衛の尊、中衛のミラ、後衛の拙者の順番でござる」


 そう、神社の尊、教会のミラ、寺社の益男だ。

 ベタなネーミングだとは思うけどな……


「あ、そ」

「まぁ、玲子には我の凄さが分からぬようだな。世界一位、これぞ神の奇跡!」

「奇跡? 普通にゲームしただけでしょ? 凄いのかもしれないけど……」

「まぁ、世界一位の僕達の仲間になれなくて嫉妬するのは分かるけどね」

「玲子殿が参入しても、安置で芋るだけであるな」

「アンチって何よ? 別に否定はしてないわよ。いもるって意味も分からないし……」


 玲子は意味が分からないようだが、『安置』とは安全地帯を意味する略語。

 変換しやすいから『』ではなく『』を使ってるのさ。

 芋るは一か所にこもって戦う嫌われる戦法だ。


「玲子は基本も知らないでござるか」

「まったく……高校生にもなって、変な名前で呼び合うの恥ずかしくないの?」

「何を言っている。ネットゲームなんだから本名で呼び合ったらまずいだろ?」

「それで、その変な名前で呼び合っているのね」

「変な名前とは心外でござる。拙者は神教寺の砲撃手、豪腕のテンプル!」


 益男がボディビルダーの様に上腕の筋肉を誇示する。

 僕は何度もこの筋肉に救われたーー


「我は神教寺の遊撃手、華麗なるチャーチ!」


 ミラが華麗にターンを決める。

 敵と弾丸を引きつけ避け続けたミラの華麗な動き。

 僕は敵の注意を引きつけるミラに何度も救われたーー

 そして僕の番ーー


「僕が神教寺の白兵戦及びリーダー担当、剣聖のシュライン!」


 僕は剣をつかむ様に、虚空を握った。

 そしてーー


「「「三人揃って神教寺!」」」


 ズドォォォォン!

 ーーと心の中で爆発音が聞こえた。


「我がいれば玲子は役立たずなのだ」

「ふーん、役立たずね。尊は私がどういう人間か知ってるわよね?」


 玲子が不敵に微笑んで去っていった。

 僕は知っている……玲子の執念をーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る