第9話 お願い、私を忘れないで

「アリス……どうして、君が?」

マルクは問いかけたが、アリスは答えなかった。


「君は、俺が十八歳の時の一月一日に消えてしまった。そして今は、俺の魂の中にいるはずだろ? 何でこんなことを……」

マルクの問いかけに、アリスは答えない。ただ顔を背け、マルクの目を見ようともしなかった。一度は消えたはずの彼女の意思が、夢という形であれ蘇って来たのだ。何か理由があるはずである。

「なぁアリス、何で……うあっ!」

マルクの問いかけをさえぎり、アリスは彼を押し倒した。

「ア……アリス。何して……」

そこまで言いかけて、思わずマルクは息を飲んだ。見上げた先にあった彼女の顔は、今まで見たことがないくらいに悲しい表情をしていたのだ。瞳から大粒の涙を流し、それがマルクの頬に落ちる。

「ねぇマルク……。マルクは今、何歳になったの? あの町を出て、どんな景色を見た? 何を感じた? 私が消えちゃってから、随分ずいぶん時間がたったでしょ? ……色々なことがあったんだよね。私、マルクの中からずっと見てたよ。それで、思っちゃったんだ」

 アリスは、尚も悲しそうに話を続ける。マルクは口をはさめなかった。彼女の様子は、それほどまでに異常だったのだ。

「あなたは大人になったね。……でも、私はいつまでも十八歳の子どものままなの! 私はマルクがどれだけ変わっても、絶対にマルクが好き! 離れない! ……でも、マルクはどんどん変わって、私のことを忘れていくかもしれない! それが怖いの……!」

「そんなこと……俺は一度だってアリスを……」

「言葉じゃ足りないの! 気持ちじゃ……足りないんだよ。夢の中は、昔の記憶があるけど、一度夢から覚めたら、きっと忘れちゃう! ううん! 絶対忘れる……!」

「そんなこと……」

「あるよ!」

アリスは強く叫んだ。涙を流し、顔を紅潮させ、悲しみに歪んだその表情で。そして彼女は静かにマルクを抱きしめ、彼の耳元でささやいた。

「だって、今までも何度も夢で会ってるんだよ?」

「そんな!」

「覚えてないでしょ? 何度もお互いの思いを確かめたの。そして毎回マルクは私を好きなままでいてくれた。だからマルクは嘘をついてない。それは分かるの。でも、すぐ忘れちゃう。……だから、今度はもっと強い刺激をあげるの」

アリスがマルクの股へと手を伸ばす。マルクのペニスを、アリスは遠慮なく強くしごいた。

「あっ!」

こんな状況でも、体は刺激に反応してしまう。ムクムクと肥大するそれは、すぐに硬くイキリ立ってしまった。アリスは、マルクのそれの硬さが最大になったことを確かめると、それを自らの裂け目へとあてがった。アリスは股を開き、自ら裂け目をくぱぁと広げ、恥部の奥を見せつけるかのような体勢になった。そのままマルクの強張りを自ら中へと突き刺した。

「あぁあぁあ! ……絶対、忘れられない経験をあげるね。……いっぱい、気持ちよくなってね」

アリスは自ら腰を上下させ、自身の体を使ってマルクを刺激した。マルクも、先ほどとは違い自分の意思で動きをコントロールできないため、より敏感に反応してしまう。アリスは体勢を変え、動きを変え、様々な方法で極上の快楽を常に与え続けてくれる。加えて、マルクの目の前で、自らも敏感なところを責められているアリスの、快楽にもだえる仕草を見せつけられる。恍惚の表情、快感に震える身体、腰の上下に合わせて揺れる二つの乳房。そして耳には彼女の卑猥な嬌声が絶えず飛び込んで来るのだ。

「あん、あん! すごいよマルク! ゴリゴリする! 削られルゥ! あっ! ここいい! ここぉ! すごく気持ちいい!」

 マルクは再び、彼女の中で精を放った。

 しびれるような快感を噛み締める余裕もなく、アリスはなおも腰をふり続ける。射精中という最も敏感なタイミングで彼女は腰を激しく上下させる。同時に、前屈みになりその柔らかな乳房をムギュッとマルクに押し付け、快感に震えるマルクの口に熱いキスをした。上も下も最上級の刺激を受け、マルクはついにその精を出し尽くしてしまった。アリスの中はすでにマルクの精で一杯になり、入りきらなくなった分が外へと漏れ出ていた。

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