醜いあひるの子

第10話※

自分が何をしたと言うのか。

謝れば反対に怒られ、不機嫌になられ、服を剥ぎ取られて、あんな事迄させられて…。

思い返すだけで段々と腹立たしくなっていく。

『自分が一緒に買い物に行けなかったからって、仲間はずれにされたからって、八つ当たりする事無いでしょ！』

そう考えが纏まると、段々、腹が立って来る。

『あの女の人がしてる事、ちーにして貰おうか』という匠馬の莫迦にしたような台詞。

『やればいいんでしょ？やれば！』と、口を一文字に結び、彼の立ち上がっている塊（アレ）を掴み上げた。

「え！？あっ！ちょ！っちょっと！智風！何やってんの！」

流石に掴み上げられるとは思ってもいなかった匠馬が、珍しく慌てた声を出し、智風の腕を掴んだが、それでも腰を落とし入れようとする。

が、幸い初心者の為、上手くいかずに空振りで終わってしまい、悔しさで智風は匠馬を睨み上げた。

「ちょっとどうしたっていうの！生（ナマ）でやって、もしもの事があったらどうするつもりなの！？」

「タクマがあの女の人がしてる事しろって言ったんじゃない！しろって言ったからやろうとしたのに、今度はそれで怒るってなんなの！？もしもの事っていうけど、コンドームだって１００パーセントの避妊率はないじゃない！」

「そうだけど！今出来ちゃったら学校は！？そこまで考えてしてる訳！？勢い余ってこんな事するもんじゃ無いでしょ？リスクも考えた上でしなきゃ！」

「ならＨなんてしなきゃいい！１００パーセント子どもなんて出来ないんだから！…っ」

言いたい事を言ってしまうと、今度は何を言っていいか分からなくなり、智風の目から滝のように涙が溢れだす。

急に泣き出した智風に、今度は匠馬は慌てるしかなかった。

「ち、ちー？」

「とっ、友達も居なくって…ひっく…喧嘩も仲直りもした事無いのに…、ぅっ…どうやって謝ったらいいか分かんない…のに、…ぐずっ…タクマ一人で怒ってるし…“ごめん”って、謝ったら…余計怒るし…うっうっく」

「ストラップだけなら未だしも、あんなメモまで見ちゃったらね、誰でも怒りたくなっちゃうよ…」

「あたしが、欲しいってっ、頼んだ、訳じゃないのにっ！」

「あーうん…その通り。ちーが頼んだ訳じゃないもんね…。…ごめんなさい。ボクが怒り過ぎました。…あの、ごめんね？…仲直りの、キスしていい？」

流石に悪いと思ったのか、平謝りする匠馬を見ていると自分も怒り過ぎたのではないか、と慌ててこくり、と頷くと彼は何時ものように優しく唇を寄せて来た。

軽く触れるだけのキスを繰り返し、瞼と額にもキスを落とす。

が、何分もしないうちに匠馬は冷や汗を掻き、唇を放した。

「…？タクマ？」

「…のぼせた…き、気持ち悪い…」

「え！？大丈夫！？」

匠馬が口を押え、ふらりと立ち上がると、目の前に現れた塊（モノ）に智風は釘づけになった。

先程、握ってしまったのだ。

目の前に有る塊（コレ）を。

保健体育の授業でリアルな性器の模型を見たが、こんなに大きかっただろうか。

しかし、お湯越しで見たときはここまで大きくなかった。

目を白黒させていると

「…先に上がるから、ちーはゆっくりしてきて…」

と、フラフラなりながら匠馬は出て行く。

その引き締まったお尻を脱衣所へのドアが締まるまで、しっかりと見届けた。

『ちょっ！！！模型と大きさも全く違うよね！？あんなにグロテスクだった！？赤黒かったよね！？ちょっと待って！待って！模型、あんな色してなかったもの！……うん。そうだ見なかった事にしよう…』

我に返った智風は段々と恥ずかしくなり、ぶくぶくと湯に沈んで行った。

智風が風呂から上がると、匠馬はぐったりとベッドに臥しており、ペットボトルで頭を冷やしていた。

そっと匠馬の横に座り様子を伺う。

「大丈夫？」

「ん…。ボクさ、湯船に５分浸かっただけでのぼせちゃうんだよ。だから何時もシャワーで…」

「…じゃぁ、何であたしを抱えて湯船に入ったの？」

呆れた声で智風が聞くと匠馬は自嘲的な笑い方で『何となく？』と。

それが可笑しくてつい智風は笑ってしまった。

この人にも苦手なモノがあるのだと。

「何笑ってんの」

少し膨れた顔で匠馬は智風を見る。

「タクマでも苦手なモノがあるんだな…って思って」

彼はズリズリと寄って行き、彼女の膝に頭を乗せた。

「他にもあるよ〜苦手なモノ。トマトに胡瓜に小型犬、ゴキブリにガンＱ（ウル〇ラマンの怪獣）それに母方の伯父。あー１番苦手なのはフェラかもしれない」

目を瞑ったまま匠馬はクスクスと笑う。

「ふぇっ！…下ネタに走った」

「うん。でも、ちーには知ってて貰いたかったっていうか。…ちーは苦手なモノって何？」

「あたしの苦手なモノ？う〜ん、苛めっ子に怖い話に…それに、虫（ゴキブリは意外に大丈夫）あとは運動全般が苦手だけど、走るのが一番苦手かな…」

「あはは。ちーは胸が大きいからねぇ」

「笑う事無いし…」

「お｜相子（あいこ）」

「…タクマ、あの、…本当にごめんね。あたしも考え無しでした」

「いいよ。さっきのチューと掴んで挿れ損ねに免じます」

「…もう忘れて下さい。パニックになってたんで……」

つい例の物を思い出してし、智風は赤くなった顔を手で隠した。

「まぁボクも流石に掴まれるとは思ってなかったから驚かされたど。…あのさ、もっと感情をはっきり出して良いんだよ？さっきみたいに。ボクはどんな智風だって受け入れるから」

「うん…」

「もっと色々話して、色々な智風を見せて？」

「ありがとう、タクマ」

「では、仲直りのＨから！！！」

腰にしがみ付かれ、そのまま匠馬に押し倒しおされる。

が、匠馬が顔を上げたと同時、額をペシリと叩いた

「駄目！顔真っ青のくせに！それはお預け！」

「く〜〜〜ん（涙）」

捨てられた子犬の様な声で匠馬はおどけて見せる。

おどけた姿を見せてくれるというのは心を許してくれているということではないだろうか、と思い、そして嬉しくなってしまう。

そして、２人はクスクスと笑い合い、他愛も無い話をしながら眠りに就いた。

ーーーーー

『何考えてんの？こんな時間に掛けて来て』

匠馬の声が聞こえる。

『あ？お前に何の関係があんの？』

とても低い声で、怒りを含んだ声。

『常識ある人間（オトナ）がする行為（コト）とは思えねーけど？』

何時も智風に語り掛ける声とは全く違う。

『病院行けば？』

初めて聞く相手を罵る話し方。

『キチガイ』

怖い。

『独りで死ね』

目を開けて、この声の主が本当に匠馬か確かめたい。

『死ニゾコナイ』

だが、躰はそれを許さずにまた、智風の意識は闇の中に引き摺り込まれた。

ーーーーー

ビクッと躰が弾け、目を覚ませばそこには匠馬の寝顔。

昨夜の顔色の悪さは何処に行ったか。何時もの顔色に戻っていた。

しかし、あの声は本当に匠馬だったのだろうか。

もしかすると、夢を見たのかも…。

時計を見ると７時半になろうとしていた。

辺りがほんの少し明るく朝である事を教える。

躰を起こし冷蔵庫から水を取出し、半分ほどを一気に飲み干すと、水が躰を巡るのが分かる。

気持ちが落ち着いた処でお手洗いに向かった。

匠馬もまだ目を覚ましていないのだから、もう一眠りしたい、と思いながらお手洗いのドアを開けると壁にもたれかかった匠馬がいた。

「おはよう」

「…おはよう…」

「目が覚めたらちーが居ないんで吃驚した。トイレ行くんなら声掛けてよ」

「寝てたから…」

「心配だから寝てても声かけて」

智風は“変な人”と思い、困った顔で笑う。

匠馬は智風の髪を手櫛で梳き、ちゅっとキスをする。

そして額にも。

そのまま抱きしめられ、智風は躰を預けた。

「ねぇ…タクマのご飯が食べたい」

「……」

「タクマ？」

「“タクマが喰べたい”だなんて。何時からそんなに積極的になったんでしょうか。嬉しいんだけどさ、ボクは喰べられるよりも喰べる方が好きなんだよね〜」

「いやっん！｜んんんんん（字がチガウ）ーーー！」

「ちゅっ。さて、５日分プラス仲直り分、喰べさせて頂きましょうか。ね♪」

と匠馬はしたりと笑う。

そのしたり顔に血の気が引いていく。

「ぶ、分割払いとか出来ないんでしょうか！？」

「利子がつきますが、それでも宜しければ。ご利用になりますか？」

営業用スマイルで微笑まれ、更に血の気が引く。

「いえ、結構です…（涙）」

分割にしたい処だが、かなりの高利貸しになりそうなので、智風は泣く泣く諦めた。

一方ご機嫌な匠馬は、軽々と智風を抱き上げるとベッドに連れ戻す。

“…やっぱりあの声はタクマじゃない”

そう自分に言い聞かせ、智風は匠馬の唇を待った。

…何時間揺す振られているのか。

やはり、何時もより気持ち、抱き方が荒い。

「ふぅっ…ん、ぅ…んん！」

智風の唇を匠馬は唇で塞いだまま躰を揺らす。

酸欠になりそうで、堪らず顔を背けられた。

大きく息を吸い込み、酸素を求める彼女を捕まえ、また、唇で塞ぐ。

右腕は智風の左足、膝に差し込んで大きく開かせ組み敷いている。

逃げたくても逃げられず、智風は激しく与えられる快感に耐えて、涙を流す。

ぐじゅっぐぷっと繋がった場所から音を立てて蜜を押し出し、最奥、子宮口に塊を押し付けた。

「ひ！やぁ！！いっだ、だめっ、お、おくっ」

「奥がなに？」

意地悪く腰をより深く押し込めるとヒクヒクと胎内（ナカ）が痙攣を起こす。

「これ、だ、だめぇ…っ、お、おかし、く…なる、か、ら…やぁ！」

「押し付けてるだけなのに。ちーが一人で腰動かしてよがってるだけでしょ？」

耐えかね智風が首に腕を回し、縋り付いて来た。

腰を掴んでぐりぐりと押し付けてやると、きゅっと締り声が一層高くなり

「あぁっ、やだぁっも、イクッ！」

ブルッと躰を震わせて智風は達した。

「はっ…、すっごい締め付け…。持ってかれるかと思った…っ」

余裕を見せる匠馬は智風を横向きにさせ、再度、塊を挿入し突き上げる。

「まだ、２日分残ってるから、頑張ろうね〜♪」

「あ！ま、まってっ…、少し休憩させ、て！あ、やぁ！」

直ぐに快感にのまれてしまい、智風はシーツに爪を立て啼き声を上げた。

卑猥な音を立てて蜜が押し出され、太股を伝って落ちて行く。

匠馬は智風の顔に掛かった髪の毛を退け、蟀谷にキスを落とす。

「ちー、こっち向いて、舌出して…っ」

「あっ、は……ァ」

智風は言われる通りに匠馬の方を向くが、熱に浮かされて視点が定まらない。

それでも求められるままに舌をさし出すと、思考を停止させられるくらい激しくキスされ、全身が痺れる。

「はっ…、あ、タクマ…ふぁ、あ、あっ！」

「っは、…智風…っ、」

「あ、…ん！ぁっ、タクマっ」

息荒く、そして激しく挿入を繰り返される。

お互いの肌が激しくぶつかり合い、音を立て続け

「ち、かぜっ、イクッ…っ！」

匠馬の擦れた声はとても色っぽく智風の耳まで犯し、躰だけでは無く心も満たされた。

まだ、どくどくと波打たせながら、匠馬は満足そうに息を吐く。

そして

「ふぅ…。で、ご飯何が食べたい？」

満面の笑みで聞かれ、智風は言葉を失った。