第7話※
『友逹以上の関係』とはどのような関係なのか。
眩しい程美しいプラチナの歯車は、継ぎ接ぎだらけのみすぼらしい歯車を支えるように歯車を回す。
一見、綺麗に噛み合っているようにみえるが不釣り合いな歯車は、微妙に噛み合っていない儘、回っていた。
***
昨日は目が覚めると時計は10時半を指しており、尚かつ腰骨辺りを舐められていた。
そして、そのまま…。
それだけでも恥ずかしいのに、それから半日匠馬のパーカーのみで居させられた。
漸く解放(といっても逃げ出した)されたのは、夜の9時半を過ぎていたはず。
帰り着いてもなんだか恥ずかしくてなかなか寝付けなかった。
今日は今日で昨日、珍しく無断欠席をしたせいで朝から担任に呼びだされ『何か嫌がらせでもされたのか!?』と質問攻めにあってしまい、余計に疲れを感じた。
他の教師より若干若い担任(28歳)はまだ虐めとかそういった類いの事に敏感だ。
有名進学校の教師になれるのはかなりの倍率。給料もいいしなにより羨望も眼差しで見られる事が快感になるらしい。
事故死や不祥事を起こさなければ大半の者が定年退職まで居る。
なので必死なのだろう、と思い無論声は震えているが『大丈夫。何も無い』と言い続けた。
疲れて戻って来た智風は何時もする予習をする気になれず、肩の力を抜いてぼんやりと外を眺めてすごした。
抱かれたからといって学校での関係が変わる事はなかった。
匠馬は何時ものようにたくさんの生徒に囲まれて談笑している。
智風との事は…何も無かったかのように。
何時ものように智風は教室の隅で空気のようなような存在に徹するだけ。
しかし当たり前の事なのに、寂しさを感じてしまう自分に少し苛立ちを感じる。
ひっそりと彼にキスされた手の甲を撫でてそう思っていたのだが、帰宅前になると匠馬からの怒濤のメール攻撃にそんな鬱気分は一気に吹っ飛んでいってしまった。
帰宅すれば即、匠馬の家に行きたわいもない話をしたり宿題や予習復習をする日々を送り始めた。
智風が勉強している間、匠馬は略、料理を作っているか掃除をしているか。
流石にあれからお泊まりはしていないが、1日1回だけ、という約束で躰を重ねた。
学校で話さないのは、智風がまた虐められる事に怯えている事をどことなく匠馬が分かってくれているからだ、と暫くして気づいた智風はこんな関係でも満足してしまっていた。
初めて抱かれてから2週間程過ぎ、12月20日。
何時ものように昼休み中、パンを食べていると携帯が震えているのに気づいた。
携帯をカバンから取り出してみると
『メール1件:タクマ』
ライトが点滅しそう表示していた。
不思議だ。
何時もならこんな時間にメールを送って来る事は無い。
突然のメールが嬉しくて、口端が自然と上がっていく。
落ち着かせる為にお茶を飲み、メールボックスを開けると
『夕方、図書室で待ってる』
それだけの短い文。
何か用事でもあるのだろうか、と思いながらもメールを送ってくれただけでも、嬉しくて微笑んでしまう。
『了解です。』
相変わらず色気も素っ気も無い返信しか出来ないが、それを打つのに何分もかかってしまった。
そして、夕方。
教室には智風以外誰も居なくなり、辺りは静けさに包まれる。
他のクラスの生徒も帰ったようで、智風はカバンを持つと足早に図書室に向かった。
図書室は奥ばった場所にあり、人通りも少ない。
人に遭わないように辺りを見渡しながら図書室に向かうと、戸には“休館日”の札。
ここに本当にいるのだろうか、と不安になりながらも戸を横に引くと、中には匠馬が机に腰を下ろし、本を読んでいた。
『…あ、良かった』
安堵のため息を吐き静かに戸を閉めた。
日当たりが良くない場所でもある為、少し薄暗い室内。
照明がいい具合に匠馬を照らす。
彼が格好良く見えるのは、照明のお蔭だけでは無いが。
何度も抱かれておきながら、智風は相変わらず心臓を高鳴らせる。
無意識に髪を分けて匠馬に近寄ると、それに気づいた匠馬は本を置き、智風の腕を引き寄せ自分の胸で受け止めた。
「ちー不足で死ぬかと思った」
「き、昨日も会ってましたけど?」
「プッ…ちーらしい返事」
匠馬はくすくすと笑いながら智風のメガネを取り上げ、キスをする。
智風は相変わらずビクッとなるが、大分スムーズに受け入れられるようになってきた。
しっとりと交わされるキスに体温が一気に上昇していく。
しかし、こんな処でキスをするなんて。
唇が離れ、ちょっと抗議するような目で見つめていると
「ちー、そんな目で見詰められたら、我慢出来なくなる」
「!!!ち、ちが、」
そう言われ、智風は耳まで赤くした。
「あ、ちょっと待ってて」
匠馬は貸出カウンターに入って行き、ゴソゴソと何かを探し出し、お目当ての物を見つけると部屋の電気を消して智風の許に戻って来た。
すると、2人分の荷物と腕を掴んで奥の“持ち出し禁止書庫”と書かれた部屋に手を引かれて向かって行く。
探し出したのはどうも、ここの鍵らしい。
手慣れた様に鍵を開け、中に入ると内側から鍵をかけた。
智風は落ち着かず、メガネを掛け直し辺りを見渡す。
中は外の外灯で幾分か明るく、少し埃っぽいが、ある程度掃除はされている。
さほど広くない室内だが、最奥にベルベット素材の3人掛けのソファーと教卓が無造作に置かれていた。
「ここ、昼寝するのにたまに使うんだ」
ソファーにカバンを置くと『ちーとボクの秘密だよ』と耳元で匠馬は囁く。
確かに図書を管理している先生がいるが、特定した曜日にしか居ないので使おうと思えば使える場所だ。
「ちー、寒くない?」
「え?少し寒いけど…」
流石に12月に入れば寒くなるし、下校時刻ともなれば尚更。
それに学校指定のコートがあるが、値段が高くて智風はもっていない。
「じゃぁ、暖めてあげる」
匠馬は手早くブレザーを脱ぎネクタイを外すと、智風の口を塞いだ。
「ん!ん…た、くまっ……ぁ、ん……」
ちゅるっと舌を絡み取られ、キスが深くなる。
匠馬は智風の制服のリボンを解き、ブラウスのボタンまで外していく。
本来なら、こんな場所でする事さえ許されない事。
だが、それが余計に智風の好奇心を煽る。
“イケナイ事をしている自分”に酔いしれているのかもしれない。
ーーー押し倒されたのはソファーでは無く、教卓。
始めはヒンヤリとした感触から、心地好いものに変わって持て余した熱は吸い取られる。
そして、匠馬に揺す振られる度に、ギシギシと音を立てた。
先程までの寒さなど微塵も感じない。
反対に熱くて朦朧としてしまいそうだ。
匠馬もかなりの汗を掻き、シャツの袖で額を拭う。
教卓に寝かされた状態で、大きく足をM字に開かされ抜き差しされる。
ぬちぬちと甘い音が繋がった部分から出て、だらしなく蜜を垂らしていた。
「ん、んんぁ…あぁ…ふっ…はっ」
今迄、服を着てシた事は無い。
お互い中途半端に乱れた制服。
そこが興奮の材料ともなっていた。
シャツの上から乳首を摘ままれ、智風は思わず仰け反った。
「あ、…だめっ…ひゃぁ、ん!」
密着していた躰を離し、繋がった部分をわざと見つめ、智風に問い掛ける。
「ちーの
「やぁ、っ恥ずかしいから、言わないで…」
耳まで真っ赤にし、智風は手で顔を隠した。
「いや?ボクにしか分からないのに?」
涙目で睨まれ、匠馬は嬉しそうに口角を上げる。
「ちー可愛い」
そして激しく突き上げられ、智風は呼吸がついて行かずに、ひっと喉を鳴らした。
痛みのような鋭い快感がそこから駆け巡る。
「ふあぁ!…んぅっ…タク、マァ…」
「そろそろイッとこうか。時間も無いし」
匠馬の長い指が剥き出しになっているクリトリスを摘まむ。
その刺激に智風の目尻から涙が溢れていた。
くにくにと捏ねられ、だらしなく喘ぎ声を出し続けていた。
「ちーはココ、擦られる方が良いんでしょ?」
今度は指の腹で擦られ、ピリピリとした刺激が突き抜ける。
「ひ!あっぁ…イッちゃうっ…!!!」
強烈な快感は一気に突き抜けて、智風は躰も脳も真っ白に。
「すっごい、エロイ顔して締めつけて、この子は…」
満足した様に笑う。
そして、何度か激しく動くと、匠馬は根元までぐぐっと押し込み、どくどくと波打たせた。
仰向けでソファーに寝転がった匠馬はふにゃふにゃな顔をして、智風を抱きしめていた。
お互いまだ、服が乱れたまま。
「“こんな処で”って怒ると思ってたから嬉しい」
ちゅっと長い髪にキスされ、智風は顔を赤くして頬を膨らます。
「“駄目”って言ってもシたくせに」
耳まで赤くしている智風が可愛く、匠馬は抱きしめている腕に力を込めた。
「あのさ、明日からちょっと忙しくって学校休むから。終了式は出る気無かったけど…クリスマス会えないかもしれない」
クリスマスまであと5日。
テスト勉強中から考えると、ほんの少しの時間も2人で居る事が当たり前になっていた。
今迄感じた事の無い程の寂しさが湧きあがる。
本当ならここで『何故?』と聞くべきなのだろう。
…だが、聞く勇気は無い。
肝心な事は何時も聞けぬままだ。
「そうなんだ…。あ、タクマ、クリスマスプレゼントなんだけど」
“買わないで”と言うつもりだったのだが、それよりも早く
「ボクはもう、買ってるから」
匠馬はニッコリと笑う。
困った顔をした智風だったが、相手が“買っている”と言うのであれば、こちらも準備をしなければ、と仕方なく何が欲しいか聞く事に。
「…タクマは、何か欲しい物は?あ、お金で買えるのにして下さい」
今度は“ちー”といわれる前に先に釘を刺しておくと、不満たっぷりに匠馬はため息を吐いた。
「はぁ…。ん〜と…じゃぁ、ちーとお揃いの手袋が欲しい」
そう言った後、匠馬はしまった、という顔をした。
「手袋…。うん。了解です。色の指定とかある?」
と以外な答えに、匠馬は思わず躰を起こす。
前向きな彼女に驚いた顔をして。
ほんの少しの変化が、嬉しいようで
「ちーが選んだ色なら何でもいいよ?ショッキングピンクでも着ける」
「ぷっ、流石にそんなのは選ばないし」
「なるべくクリスマス会いに行けるようにするから」
智風に手を伸ばし、引き寄せてキスをした。
「さて。そろそろ帰らないと見回りが来ちゃうんだな〜(いそいそ)」
「え!?それは早めに言って下さい!」
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