第6話※

※作者の主観で激しめの性的表現をカットしていますので、気になる方はムーンライトノベルズ又は個人サイトの方をお読み下さい。

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目の前に鮎川の顔。

鮎川の切れ長の目が智風の瞳を捉える。

何が起こっているのか理解出来ない智風は、大きく瞬きを繰り返していた。


「君の負け」


輪郭をなぞる様に顔を撫でられ、長い指が頬からゆっくりと唇に移動し、下唇を撫でる。

鮎川の指が唇に振れ、今度はゆっくりと顔が近づいて来る。

そこで漸く先程、鮎川にキスされたのだ、と気づき智風は慌てて躰を離した。


「あ、鮎川君!な、な、なんで、」


「何でって…賭け、したよね?」


「賭け…、あ、」


その言葉に彼が言い出した賭けをようやく思い出した。

本当に、冗談だと思っていた。


「で、でも、あ、あれは、冗談、…でしょ?」


あれから鮎川も何も言わなかったし、その事に触れようともしなかった。

それに、鮎川のような人間が女に不自由しているはずはなく、そもそも智風のような人間は対象外で、カケも冗談だと。


すると鮎川は、困った顔をして


「ごめん、あれは口実。でも、あれ以上言って警戒されるのが怖かったから言わなかったんだ…。ボクはね、君と友達以上の関係になりたい。その先に進みたい」


智風の頭を優しく撫でる。


「友達…以上?」


「うん」


「あ…あたし、で……いいの…?」


「君が良い。君だけに触れたいんだ」


「で、でも、…んっ」


続きの言葉を出そうとして、智風は口を封じられた。


「ふぅ…ん、ん」


ゆっくりと。優しく。

しっとりと濡れ、温かい舌が口内を味見する様に動いて行く。


誰にも相手にされず死んでいくのだろう、と思っていた。

こんな体験だって。

お近づきになれるような人ではない鮎川と出来るなら、自分にとっても損なない。

彼にとってこれがお遊びでも。

どうせ、高校を卒業すれば二度と会わないだろうし、会っても話す事もないだろう。

それなら割り切った関係で居ればいい、等考えていると舌を絡み取られ、思わず智風は躰が跳ねた。

現実リアルに戻され、大胆な思考に馳ていた事に恥ずかしくなり、逃げたい訳ではないのに、驚いて逃げ腰になっていく。

そこに、鮎川の腕が智風の腰に回され、引き寄せ、くちづけが先程よりもっと深くなっていった。


ちゅ…、くちゅ…と音を立てられ、全身に今迄に感じた事の無い電気の様なものが流れる。

目を開けたいが、煌煌と照らす部屋の電球がまぶしい。

すると、急に鮎川の腕の力が緩み、そして、唇が離れた。



「はっ…はぁ…」


智風は酸素を求め、荒く呼吸を繰り返していると、その間に鮎川は立ち上がり、部屋の明かりを消し、戻って来た。

呼吸を繰り返している智風の腕を掴み、引っ張り上げる様にベッドに移動させる。

そのまま押し倒すと、智風の長い髪がベッドに広がった。


カーテンを通し、外の灯りで鮎川が自分の上に居る事は分かるが、どんな顔をしているのか、解らない。

智風の腹部辺で跨ぎ、鮎川は着ていたVネックのセーターを脱いだ。

その仕草が妙に色っぽく、智風は顔を赤らめる。

霞んで見える彼の躰は意外と色は白い方なのかもしれない。

前に抱きしめられた時、以外と筋肉質だと思った。

そんな引き締まった躰で抱きしめられ、あの長い指で自分の躰を触られる、と思うだけで心臓が破裂してしまいそうだ。

鮎川に心臓の音が聞こえてしまう。

緊張しているのが凄く恥ずかしく、智風は胸の前で手を握り締めた。


それに気づいた鮎川は、胸の前で握られている手を優しく握ると、甲にキスを落す。


「ちー」


「え?」


「ちーって呼んでいい?」


「う、うん…」


親以外の人からそんな親しみを持って名前を呼ばれた事も無いので、顔が赤くなる。


「ボクは?」


「え、っと……タ…クマ?」


こういった時は名前で呼んだ方がいいのだろうか、と恐る恐る呼んでみれば鮎川の目尻が下がっていくのが分かった。


「もう1回呼んで」


これは喜んでもらえてるのだ。

こちらまで嬉しくなるが、人の名をそれも下の名前を呼んだ事が無いので恥ずかしくてたまらない。


「…タクマ…」


「ちー」


本当に優しく笑い、そして、智風の顔の横に両手を着いて額にキスをした。

そして、目尻に頬に、鼻頭に。

優しいキスに心も躰もふわふわとした感じがする。


「途中で止めれないと思う。ずっと、ちーに触れたかったから」


ぎゅっと頭を包み込まれ、今度は容赦無くキスをされる。

苦しいくらい、とても激しく。


「んん!ふ、ん…ぁ、ん」


角度を変え、重なる唇。

それは甘美で脳まで溶かしていく。

正直に、気持ちいいと思った。


鮎川は息荒くキスを終えると、今度は首に舌を這わせ、ぷち、ぷちっとシャツがボタンを外していく。

その間も舌は休む事無く這い続け、鎖骨に強く吸い付いて来た。


「は、…ぁ…っ」


痛みとは違う感覚。

躰がおかしくなったのではないかと思う程、熱い。


…気付けは胸がスースーする。


見れば着ていたシャツもブラも脱がされており、火照っていた躰が急激に冷めて行く。


「服着てた時も大きいだろうなって思ってたけど、予想以上に大きいね…」


観察するかの様に鮎川がまじまじと自分の胸を眺めている。

裸で抱き合うのだから見られるのは当然の事。


なのだが…。


身体測定で必ず“何あれ、みっとも無い”と言われて来たのだ。

その胸を彼がまじまじと見て、呆気に取られた顔をしているようで…。

やはり、自分の胸はみっとも無いのだ、と脱がされたシャツを掴み、慌てて胸を隠した。


「何で隠すの?」


「みっとも無いから、あたしの胸!見ない方がいい!」


「ちー…」


睨みつける様に鮎川を見ていた。

しかし、その目からは止めど無く涙が零れていく。


「だって、っ…気持ち悪いんだもん、あたしの、むねっ、きもち、わる、いからっ、」


何時からこんなに、弱くなったのだろう。

髪を切られたあの日から、絶対に人前で泣くまいと変なプライドがあった。

なのに…。

弱くなってしまった自分に、弱くさせた彼に歯がゆさを感じる。

何時も独りでいたのに鮎川に関わったお陰で独りでいるのが怖くなり、鮎川が側に居る事に心地よさを感じている自分に恐怖すら感じてしまう。


すると鮎川は、ふぅ…と大きなため息を吐き


「ボクはちーの胸をみっとも無いとか思っても無い。今迄見てきた中で一番おっきいとは思う。だけど、こんなに一番形も良くて綺麗なのに触りたくない男なんていないよ?ボクはずっと触ってみたいって密かに思ってたし、可能ならずっと触っていたい!それにさぁ胸も皆が皆、大きくなれるわけないでしょ?ちーは特別だったんだよ。身長だって何だってそうだよ。それを周りが自分にないから勝手に嫉妬してるだけ。ちーは何も悪くないよ」


智風の涙を拭い、強く抱きしめた。


「色々、言われて傷ついたんだよね。……他の人が言う言葉なんて聞くな…って言っても無理か…。なら、これからはボクの言う言葉だけ信じて。いい?」


「…う、うん…」


「ちーは綺麗だし凄く可愛いよ。嘘だと思ってる?ボクは嘘は言わないよ。綺麗な物は綺麗って言う主義だからね。…ボクも戸惑ってるんだけど、不思議なくらいちーが側に居てくれると心が本当に安らいで、毎日がね信じられないくらい凄く楽しくって…」


髪の毛にキスしながら鮎川は語りかけて来る。


「こんなに心許せる人、居ないんだ。…だから、ボクにはちーが必要。お願い、一人で強くなろうとしないで。……ボクの前では弱い君で居て欲しい」


「うん」


こんな自分にこんな優しい言葉をかけてくれるとは。

嬉しくて、嬉しくて。

縋り付く様に智風は鮎川の躰を抱きしめる。


「ボクだけを信じてればいい」


「…うん」


「君はボクの言葉だけを信じて」


優しく優しく。

頭を撫でられ、智風は鮎川の胸で頷いた。

それが始まりの合図の様に鮎川は智風にくちづけた。

重なる唇の間から舌が出し入れされ、一気に体温が上昇する。

智風がおずおずと舌を絡み返すと、彼の口角がくっと上がるのが分かり更に深いくちづけに変わった。

くちづけの間も鮎川の手は休む事無く、智風の腰から胸へフェザータッチを繰り返す。

そして、リップ音をさせ唇を離すと、その舌で彼女の乳首に吸い付いた。

ゾクリ、と背筋に何か今迄感じた事の無い痺れが走る。

恥ずかしいほど自分の乳首が立ち、どうにかして欲しくてたまらない。

立ち上がった乳首を舌で、指で転がされ、甘噛みされる。

巧みに舌を使われて、智風の躰が弓なりにしなった。





ーーーカチャ…と金属音の擦れる音が聞こえ、鮎川が何かしていてる、と思っているとまた、足を大きく開かれて智風は我に返った。


「あ…」


「これからする事分かるよね?」


「う…うん……」


保健体育の授業で性行為を勉強をした際、リアルな模型で男性の性器を見せられたので、どんなものかは知っていたが、自分がそれを受け入れる立場になっている。

一生処女のままで生きて行くんだろう、と半決定だったのに、こんなにも早く処女を捨てる事になるとは…。

やはり、緊張してしまう。


「ゴムは着けてるから。…挿れるね」


先程指を入れられていた処が、ぬちっと湿った音を立てて口を開けた。

塊の様な熱いモノが入り口に擦り付けられ、それだけで背中、というか腰がぞくぞくする。

それからゆっくり、ゆっくりと奥に挿ってくるのが分かった。

すると、急に圧迫感を感じ、呼吸が止まる。


「ひ!っ…うーーー!」


「ちー、息して……。力入れちゃダメだよ…」


「は…っ、はぁ…はぁ…」


言われた通り呼吸を繰り返していると何かミチッ…と裂けるような痛みがし、恐怖で全身に力が入り、鮎川が苦しそうに動きを止めた。


「ちから、抜いて…っ締めすぎっ…」


「む、む…りぃっ、ひぃっ!」


力いっぱいシーツを掴み、痛みに耐えようとする姿を見て、鮎川は躰を倒すと智風に首に腕を回させた。


「ゆっくり、息して?」


耳元で優しく囁かれて、智風はゆっくりと呼吸を繰り返す。


「はぁ…」


何故だろう、彼に抱き付いた途端に緊張が和らぐのが分かった。

ふっと力が抜けた瞬間。

鮎川がぐっと奥に入り込んだ。

智風は一瞬、何が起こったか理解出来ずに、ただ、鮎川の背に思いき引っ掻いていた。


鮎川はちゅっとリップ音を響かせる軽いキスを何度か繰り返した後、額・瞼・鼻にもキスを落とす。

そして、ぐっと躰を寄せて激しくキスした。

くちゅっと舌が絡み、その舌を吸い上げる。


痛いのに、それでも繋がっている部分トコロが熱くて、もどかしい。

躰を寄せられた為、更に奥迄鮎川が入り込むと不思議とそこがとても気持ちが好くて、頭がおかしくなりそう。

SEX依存症になる人もいる、という話を聞いた事があるが、何となく分かるような気がする。

人と肌を重ねる事は不思議と安心出来て、気持ちがいい。

しかし、何もされないとその甘いうずきはその場に留まり、どうしていいのか。

このうずきを介抱して欲しくて無意識に躰を揺すっていた。






ーーーぴちゃと何か湿った生暖かい感触がし、意識を取り戻した智風は、自分の躰を丹念に拭いている鮎川の姿を捉えた。


「あ…あゆかわ、くん…、あ、あの、恥ずかしいから、自分でする…」


「だーめ。これはボクの仕事だから」


躰を拭いてもらい、鮎川に渡されたシャツを羽織ると智風は躰を起こし、彼の作業をぼんやりと眺めていた。

だるいが、躰も心も満たされた感じでいっぱいだった。

手際よくシーツを交換し、レモン汁を入れた水を智風に手渡す。

そのレモン水を飲みながら不意に初めては出血する事を思い出した。

“あたしって血が出たのかな…。聞いた方がいい?それとも聞かない方がいい?”


「あの…」


「…ちー、辛かった?」


「え…?」


「ごめん。途中で余裕が無くなっちゃって…ボクだけ気持ち好くなっちゃって、」


「ううん、そんな事、ないよ…」


首を振ると、顔を真っ赤にして智風は俯いた。


「だって、あたしの処女なんて…欲しがる人が、居る訳ないって思ってたから…あたし、鮎川君が、えっと、タクマが初めての人で良かったって思ってる。すごくね、嬉しかったの…。だから、その、あたしの処女貰ってくれて、ありがとう…」


「……」


「?あゆ(違った)タクマ?」


「ちー!」


持っていたタオルを投げ出し、鮎川は智風に抱き付いた。


「そんな可愛い事言われたら、我慢出来ないでしょ?」


そう言って鮎川は智風の唇を奪った。

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