幼馴染の女の子と自分の父親が〇〇な関係ということを主人公は生涯知らない。

さとうはるき

第1話 父親の喫茶店

 金曜日の学校帰り、俺の父親が経営している喫茶店のカウンター席で晩飯のカレーライスを食べている。


「すごい食欲だね〜。超特盛カレーライスが五分で半分になってる」


 食事をしている俺にカウンターの厨房側から話しかけてくる女の子がいる。名前は近藤静香。幼馴染で同じ高校に通っている。


 彼女は学校が終わってから毎日、この喫茶店でアルバイトをしている。


 高校一年生の夏休みからで、もうすぐ一年経とうとしている。よく続いていると思う。


「このくらい普通だろ?」


 俺は顔を上げ、静香に返事をしてまたカレーライスを食べる。


 父親の作るカレーライスは絶品だ。


 超特盛カレーライスを十分ほどで食べ終え、グラスに入っている水を一気に飲み干す。


 静香が他の客に注文の料理を出し終えると、俺のそばに来て空になったグラスに水を入れた。


「サンキュ」

「仕事ですから〜」


 お礼を言った俺に微笑む静香。喫茶店専用の制服とエプロン姿がよく似合っている。


「ん? 何?」

「あ、いや、おまえさ、最近痩せたなぁと思って」

「え? そう?」


 静香に見惚れていたとは言えない。俺の言葉に自分の体を捻りながら見ている。


「う〜ん。最近体重計に乗ってないから分からな——」


 静香の体が一瞬ビクッと震え動きが止まる。


「どうした?」

「う、ううん。ちょっと筋肉がつりそうになっただけ」

「は? 筋肉がつりそうって、バイトばかりやっているから運動不足とか?」

「そ、そうだね。うん。そうだよ。運動しないとなぁ〜」


 静香は俺から離れ父親がいるカウンターの厨房の方へ戻って行った。カウンター越しに『大丈夫か』と聞いたら、『もう大丈夫』と静香は返事をした。


 ……静香の顔が少し赤いのは気のせいだろうか?


 父親が俺の側に来たので食べ終えたカレーライスの皿をカウンター越しに渡す。それを受け取り流し台で手際良く洗う。


 しばらくするとお客さんもいなくなり、三人だけになった。時刻は午後七時半。喫茶店は八時に閉店する。


「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」


 と言っても、喫茶店と家は繋がっている。ちなみに静香の家はここから歩いて五分の距離。帰りは父親が車で送っている。


 一旦外に出て家の玄関へ向かう。店の中を見ると先程までいたはずの静香がいない。父親だけが一人カウンターの厨房にいる。


 俺と目が合うと手を振る父親。俺も手を振る。


 改めて隅から隅まで店内を見渡してもやはり彼女の姿はなかった。


 ……うーん。トイレにでも行ったのかな?


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