第15話やっぱり。

 エドガーと婚約破棄出来てから数日。ここ最近では1番穏やかな日々を過ごしています。


「どうだい?君の望み通り公爵家にダメージを与えずに婚約破棄出来ただろう?」


「えぇ、あなたのおかげだわ。ありがとう」


 今まで胡散臭いなんて言って申し訳なかったわ。と反省し、これにはちゃんと感謝を伝えました。確かにジルさんが私を聖女に任命してくれなければここまでスムーズに婚約破棄できなかったかもしれませんから。


 それにしても、エドガーはあの日なぜあんなに自信満々でやって来たのでしょう?私がエドガーとの婚約を破棄するはずがないと信じていたからこそなのでしょうが……もしかしたら誰かに入れ知恵されたのでは……とも思ってしまいます。


 いえ、もう考えるのはやめましょう。彼は遠い所へ行ったのですから。あの時はお母様に抱き締められた反動でさらに泣いてしまってお父様たちの会話はよく聞けなかったのですが、後から確認したらエドガーは「もう2度と姿を見せない場所」へ送られたそうです。


 あんなに馬鹿にしていたレベッカ様と同じように修道院のような場所へ連れていかれたのでしょう。こんなことを言ったら性格が悪いと思われるかもしれませんが金品の強奪は犯罪ですし、あれほど私を罵倒したのですからお父様もとてもお怒りになったようでした。……自業自得ですね。

 子爵家には申し訳なく思いますが、アミィ嬢との浮気がさらに上乗せされればもっと大問題になっていたかもしれませんので、私のワガママだと言われても許して欲しいです。


 アミィ嬢との事も……もちろん許せませんが、今は公爵家を巻き込まずに婚約破棄出来た事に心からホッとしました。


「さて、じゃあ次はオレの方に協力してくれよ?」


「それはもちろんですが……なにをさせる気ですか?今度こそちゃんと事前に教えてくださいよ?」


 この腹黒ジルさんはいつもはぐらかして肝心な事を教えてくれないので困ります。


「なぁに、簡単なことさ」


 そう言って1枚の封書を私に手渡し、差出人のところを指差しました。


「こ、これは……!」


「そ。ロティーナ嬢宛の招待状。王女様からのね」


 そう、それは、この国の王女様からのお茶会の招待状だったのです。


「な、な、なんで私なんかに王女様からの招待状が届くんですか?!私と王女様はなんの接点も無いし、私は伯爵令嬢で「、異国に選ばれた聖女様だ」えっ」


 またもやにんまりと笑うジルさん。もうこの顔は見飽きました。


「ところで、ロティーナ嬢は王女様についてどのくらい知ってる?」


「えっ、そうですね。ご年齢と……その、」


「ワガママ三昧だって?ついでに時代遅れの縦ロールね」


「!……えーと、まぁ。ちょっと、ジルさん!誰かに聞かれたら不敬で捕まりますよ!」


「まぁまぁ、さらに情報を追加するとかなりの珍しいもの好きなんだ。迷信とか占いとか……もちろん“聖女”にも興味津々なわけ。それで今ならその珍しい“聖女”が見れるってなれば……どうなると思う?」


 はっ!まさか、あの時エドガーが言っていた「大使が王女に謁見」って……。


 私が疑いの目を向けるとジルさんはにんまりのままそしらぬ顔で話を続ける。


「なんとそのお茶会には現公爵令嬢も招待されてるんだ。君は“異国の聖女”として王女と公爵令嬢に堂々と会えるってわけ」


「……アミィ嬢が?」


「色々とチャンスかもしれないよ?」


 確かに今までの私ではアミィ嬢に直接会うことも話すことも出来ませんでしたが、“異国の聖女”としてなら同等の立場で会えると言うことですね。


「……今度はなにを企んでるんですか?」


「んー?企むなんて人聞きが悪いな!王女様の願いを聞き入れて君を無事に聖女として異国に連れ出したいだけさ。下手に反対されたらめんどくさいだろ?上手く行けば公爵家のこともなんとかなるかもしれないよ?


 それに……オレは優しいから、君の元婚約者だれかさんの願いも叶えてやろうと思っているだけさ」


 一体なにをする気なんでしょうか。

 やっぱり胡散臭いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る