黒春

永遠

第1話 野良猫

ぐちゃぐちゃな部屋。

両親の怒鳴り声。


汐里は今夜も眠ることに苦悩していた。


時計は半年前に電池が切れ今が何時かすらもわからないので、スマホの電源を押して画面を覗いた。

「十二時 四十四分…」

伸ばした腕を瞼の上に乗せた。


喉が渇いた汐里は

リビングに向かった。

すると、ドアを開けた途端

両親がこちらを睨む。

「てめぇなんでまだ起きてんだよ!!!」

父親の罵声と共に、七味を入れた赤い瓶が飛んできて、汐里の顔に当たった

「…ご、ごめんなさい」


汐里は逃げるように自分の部屋へ戻った。

(まあこうなるって分かってたんだけどなぁ)

濡れた枕とぬいぐるみを傍に

彼女は明日が来ないことをただひたすらに願っていた。



ー翌日ー

結局何時に寝たか分からないが

ノンレム睡眠が取れた汐里は昼食の弁当を作り出す。

空っぽの冷蔵庫をみて目を逸らした。

「おにぎりでいっか…」


両親が起きるのを恐れてそそくさと家を出た。

玄関の扉をガラガラと開くと

近所の野良猫が玄関の前で佇んでいた。

「みゃー」となき汐里の脚に擦り着いてくる

汐里は猫を抱き抱えしばらく歩いた後に

落ち着いた声で言った。

「お辞めー?

あのお家には近づいちゃダメなんだ。いやーなおじさんとおばさんがいるからあなたも何されるかわかんないだからね!見つかったら七味飛ばしの刑だよー?」

猫は、緑の瞳でクスりと笑いながらもどこか悲しげな汐里の顔をのぞいた。

少しして駄菓子屋の前で猫は汐里の腕から飛び降りた。

「ここでいいの?…じゃあね」

汐里は猫に手を振った後

茶色い猫の毛が付着した制服で学校に向かった。

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