パイロット

バブみ道日丿宮組

お題:憧れのパイロット 制限時間:15分

パイロット

 人間には支配欲というものがある。

 もちろん、私にもある。あの娘が欲しい。これは絶対に消えることのない感情。

 私の欲望は日に日に強くなる一方で、あの娘の回りにいる人間が邪魔に思えた。

 お母様に相談すると、そんな人を愛することは破滅を招くと言われて家にある歴史ある書物を読めと渡された。その中に答えがあるというお母様の顔は普段見る笑みと違って何か壊れかけた人形を見るかのようだった。

 書物の中は大変興味深いものだった。

 昔私の祖先は忍びとして様々な暗殺やら指令をこなしてたということは散々お父様から聞いてたが、実際にどのくらいの規模でどんなことをしてたかのは知らなかった。

 この書物にはその謎が、これまでに行ったことと、その術が記されてた。まさに術の秘伝書というものだった。まさに一族秘伝というやつだ。

 そのいくつかを見よう見まねで作って、邪魔に思える人物にバレンタインデーとして渡してみたら、翌日から風邪をひいて休むようになった。

 間違いなく薬の効果がでてると思った。少ししか入れてなかったのにそうなってしまうのなら、正しい分量を入れたらどうなるのだろうか。

 少し怖くなった。

 友だちが休みがちになってしばらくした夜、突如としてお父様に呼ばれた。

 一体何のことだろうかと思ったら、薬の作り方が甘いと言われた。

 お父様は一流のパイロットで世界各地を操ってる。そんな人に言われたら私でもさすがに赤ん坊レベルに過ぎないと思う。

 本当にここに書かれてることが起こるのと聞くと、それ以上のこともできると笑われてしまった。

 お父様はテレビをつけると、見てなさいといった。

 私がテレビを見てるうちにお父様は、何かを書き始めてた。そしてそれが書き終わると私に渡してきた。

 中身はテレビに出演してる芸能人と政治家のトーク内容でどんな展開になり、どんな結末になるかを書いたものだった。

 これが起こるのと聞くと、まぁ見てなさいと言われテレビに視線を寄せると、そのとおり政治家が口から血を吐き出して放送が中止された。

 お父様は凄いだろうと私の頭を撫でてきた。

 これが支配欲を実現するパイロットという職業だ、と自慢げに。

 本当にできるんだと思ったら、私の恐怖は徐々に薄らいでった。


 だって、世界はお父様がパイロット。思うがままに動いてる。


 そんな私にパイロットになる資格があると言われたら、嬉しいに決まってた。

 その日から私はお父様の仕事を手伝うようになった。

 色んな薬品、色んな人に顔を覚えてもらった。

 

 そしてようやく愛しいあの娘のパイロットになることができた。

 これでずっと一緒にいられる。

 お父様のお母様のようにーー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パイロット バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る