第6話 道標ない旅-6
「さて、諸君、例のプロジェクトだが、進行の方は如何かな」五十六
「気取らなくてもいいよ。早く本題に入ってくれ」健太郎
「チャットページは、私の方で既に作成してある」五十六
「へぇー、そうなの。手回しがいいわね」美弥
「後は、細部を調整して、現在のホームページに組み込むだけだ」五十六
「なんだ、前もって作ってあったんだろ」健太郎
「静かに。しかし、この細部が難しい。これを議論することが今日の君たちの使命だ。幸運を祈る。なお、このテープは自動的に消滅する、ドッカーン!」五十六
しらける4人と対照的に、早樹は驚いて美弥にしがみついた。サングラスを取りながら、五十六はニヤリと笑った。
「おい」健太郎が五十六に言った。「おまえ、早樹ちゃんを驚かせるためだけに、おんなじネタを使ったんだろ」健太郎
「わかる?」五十六
「もう、いいから、早く話し合いに入りましょ」美弥
美弥は五十六を無視して、早樹にもわかるように説明をしながら、話を始めた。
ひと通り話が決まって、下校時刻も迫ってきた。
「ちょっと、時間あるみたいだから、早樹ちゃん、コンピューター使ってみない」翔
翔の誘いかけで早樹が、コンピューターの前に座った。
「あの、五十六先輩」由貴子
みんなが早樹の周りに集まっている後ろで、由貴子が五十六に話し掛けた。
「なに?」五十六
「こないだの、メールの返事が帰ってきてるんですけど、見てもらえません」由貴子
「ん。いいよ」五十六
五十六は、別のコンピューターの前に座り、由貴子の指示通りメールを開いた。
*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*
こんにちは
お返事ありがとうございます。
お返事もらえるとは、思っていなかったので、
とても嬉しいです。
さて、ユッコさんの質問にお答えします。
「ドリフレ」というのは、
私が自分でつけたニックネームです。
Dream is my friend. から取って、
ちょっと、『ドリカム』を気取ってます。
おかしいかな?
それから、今度チャットを開設するそうですね。
楽しみにしてます。
それでは。
ドリフレ
*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*
「これだけ?」五十六
「そうなんです」由貴子
「住所とか、訊かなかったの?」五十六
「書いたんだけど、返事がなかったの」由貴子
「ーん。まぁ、いいか。チャットのことも書いたの?」五十六
「宣伝になるかなと思ったの」由貴子
「いや、まずこの手で行こう。これまで、メールをくれた学校にも、メールを送ったらいいんだ。そうすれば、結構参加してくれるかもしれない」五十六
「でも、外部参加は一度に四本でしょ」由貴子
「いいんだ、チャットは、一人でも参加してくれれば、見てるだけでもいいんだ。だから、誰かの質問に答えてれば、それを見てるだけでも、この学校の事を理解してもらえるってことさ」五十六
「じゃあ、何度もおんなじ質問に答えなくてもいいってことですね」由貴子
「そう。見てれば、質問の答えも出てくる。自分の質問がなければ、チャットに参加するか、あらためてメールを送ってくればいいって寸法さ」五十六
「そうか。ログを残しておけば、同じ質問も来ないし」由貴子
「そう。ようやく、わかってきたかね、チャットの意義が」五十六
「でも、単に手抜きしたいだけじゃないかな、っていう気もするんですけど」由貴子
「ま、そういう面もある。おんなじ質問にあっちこっち答えるのも、面倒だからね」五十六
「わたし、時々、五十六先輩って天才じゃないかなって思うんです」由貴子
「その通り。ようやく、わかってきたな、ユッコ君、きみも。決して、どこかの誰かさんみたいにならないように」五十六
「誰のことです?」由貴子
「ま、いいじゃない。そのメール、また返事送っといて。チャット、見てるだけでもいいし、参加してくれたら嬉しいな、とか書いて」五十六
由貴子は素直に頷いて、メールを返した。
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