Will

バブみ道日丿宮組

お題:マンネリな体 制限時間:15分

Will

 彼は平常という言葉が嫌だった。

 老いという言葉も嫌いだった。

 だからこそ、幼い子どもを好んだ。

 未来の自分を見るかのように子どもたちを惑わせた。

 しかしながら、警察の厄介になることはなかった。

 被害は何も出てない。

 彼は子どもの親とも仲良く過ごし、平穏という日常を作り上げてた。

 高校生という身分もあったのだろう。

 制服姿だったこともあるのだろう。

 そして何より私という妹がいたからかもしれない。

 子どもたちの親は、次第に子どもを彼である兄に任せるようになった。

 育児放棄ではないが、お金の掛からない保育士と認識させたのだろう。

 兄は中学校の頃に、自分の遺伝子とハムスターをかけ合わせたモンスターを作り上げたことある。

「失敗だった」

 人間の心臓ではとてもじゃないがハムスターのエンジンにならないと。

 だからこそ、高校生になって人間という遺伝子が必要になった。

 はじめは私の身体から採取してたが、遺伝子レベルが似てることから実験は成功しなかった。いや、それらしい物体はできあがりはした。

 だが兄が望む、自分ではない自分はそこにはいなかった。

 兄は自分のクローンを作り上げたかった。

 自分のための自分だけの王国。

 永遠の生命に近い、自分の連鎖。

 失敗をしてもいずれ成功する自分のクローン。

 プロジェクト名『Will』

 意思を漂着させるという意味合いを持たせたという兄の表現には間違いはなかった。ケースに入ってるのは意思がない人間であるような人間でない見たことのあるマンネリした肉体。ただ空っぽ。

 そこで目をつけたのが若い遺伝子。

 まだ成長しきってない子どもの力。

 病気を治すという一貫として、子どもたちの親からは血の採取の許可をあり、また遺伝の源である体液の摂取までもを行った。

 無論、私も協力した。


 それはなぜか。


 マンネリ化してるのは私の体の方だったから。

 成長のない肉体、機能しない肉体。周囲から見られる哀れみの視線。それを封じるためには、理想の体を得るしかない。

 だから、兄に協力した。

 そしていくつかのクローンは完成した。

 そのクローンをその子どもの親に返し、子どもたちは私たちと暮らした。

 彼らには兄の言葉がとても重要であり、自分が勇者、ヒロインになれると信じ切ってた。無論病気が治った子どももいる。

 神様……に近い認識だったのかもしれない。

 増える家族のために兄さんは親の資産を使い、大きな土地へと移転した。

 そこで子どもたちはすくすくと育ち、新たな被験体を見つけてくる。

 私たちのためにお金まで入れてくれた。

『おかあさん、おとうさん、お仕事頑張ってね』

 彼らの頭にはもはや私たちが親という概念が埋まった。

 悪い気分はしなかった。

 私にはそういう機能はもうない。

 機能が生まれるときは別の体になったときでしかない。

「兄さんあとは頼みます」

 培養液に沈んでく私を兄は優しい眼差しで見つめていた。


 いつかまた会おうと、口元を動かしながらーー

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Will バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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