恐怖の痕

バブみ道日丿宮組

お題:幸福な平和 制限時間:15分

恐怖の痕

 生まれた瞬間、ラスボスと戦うことになったら。

 僕はまさにそんな状態で生まれた。

 母親が世界を恐怖政治で圧政してたんだ。

 簡単にいえば、母は難産して死んだ。

 僕を一人残して。

 国民は喜んだ。

 魔女が消え去ったと。

 呪われた子ども、救世主と僕は様々な呼び方で日々を生きてる。

 幸せな世界を母とは違うやり方で作ろうと。

 それが僕に載ってる世界の統治者という役目。

「じゃぁ学校いきますので、あとはお願いします」

 高層ビルのとある会議室で僕が立ち上がると、全員が立ち上がりお辞儀をする。

 そんな敬意を払うようなことはいらないのに彼らはやめようとしない。

「運転はおまかせください。お嬢様」

「うん、安全運転でお願いね」

 扉の前で待ってた執事が扉を開き一緒に、高層ビルの一階までエレベーターで移動する。

「僕がいなくてもなんとかなってるよね」

「はい、お嬢様の母上さまが土台を作っていましたからーー」

 と長い母の歴史を執事は話し始めた。

 なんども聞いた興味深い話。

 恐怖政治を行ってたというのに、その裏では世界を安定に向けて動かしてたなんて誰も信じない。

 関わり合いがある企業ぐらいかな、その辺に詳しいのは。

 確か……1万社ぐらいあるんだっけな。僕はまだ数千の社長さんとあったことはないけど、母のようにもっと関わっていかないと平和な世界はできない。

 なぜなら、幸福になったと言われるのだから、それを永遠にしたいじゃない。

「お嬢様聞いてましたか?」

「はい、暗唱できるくらいにはもう聞きましたよ」

 執事は不満そうであるが、静かに頷き、

「歴史の点数が落ちてると聞きました。家庭教師を追加いたしますか?」

「い、いや、いいよ……歴史は大きく変化するからこれからを大事にしたいんだ」

 なるほどとまた不満そう。

 母と父のことを慕ってたから、執事は親代わりのように僕を育ててる。

 もちろん、強制力はないから僕が断れば折れちゃうんだけどね。

「友だちとの交流も大事にしたいから、なるべく仕事は最小限したい」

「そうですね。今のうちでしか楽しめないことばかりですからね。学校生活は楽しいですか?」

「うーん、母を打ち倒した劇をやることになったんだけど、複雑な気持ち」

 あははと笑う僕を執事は、優しい笑みで返してくれた。


 高層ビルの一階には既に車が用意されて、周囲には守衛さんたちが見張ってた。

「ご苦労様です」

「いえ、仕事ですので学校をお楽しみください」

 みんな笑ってる。

 きっと母が作りたかった世界はこんな優しい平和な世界だったんだろう。

 でも、それを作るには1つにまとめて誰かが生贄にならなきゃいけなかった。そう思う。話したこともないからわからないけど……きっとそんな酷い人じゃなかったはずなんだ。

 まぁ……たくさんの反乱分子を破壊したから、印象はよくない。

「旦那様にはお会いに今日はなりますか?」

「学校次第!」

 車に乗り込むと、執事はいつもと同じ質問をしてきた。

 父は恐怖政治が崩れたあとのトラブルで怪我をして今病院で生活してる。

 だから、僕が仕事を受け継ぐことになったんだ。父のかわり、母のかわりにね。

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恐怖の痕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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