愛の形

バブみ道日丿宮組

お題:愛、それはロボット 制限時間:15分

愛の形

 父を父としてみたことがない。

 私を育ててくれたのは、3番目に生まれた兄。

 そもそも私の父が本当に父なのかわからない。

「お兄ちゃん、今日のご飯は?」

「ハンバーグかな」

 幸せな家庭。

 と世間体にはいえない。

 父と母は同棲してなく、お金だけが振り込まれる。

 そして住み込みの執事が子どもにつき1人ついてる。

「お嬢様そろそろ入浴の時間です」

「わかった」

 命じられたまま私はお風呂へ向かい、湯船につかった。

「……」

 私たち子どもはロボットに近い。

 愛のカケラで子どもは生まれるというけれど、それは一般的な話。

 私の父と母は、子どもを作るだけ作るということをただ繰り返してる。今では50人もの子どもがいるということを兄が話してくれた。

 ただそれは父と母の子どもなのかはわからないらしい。

 血の混じりが入ってる子どももおり、父と娘、母と息子の子どもがいる。その証明はDNA鑑定でもすればいいのだろうけど、病院にもというよりもどこにも私の家系が関わってる。

 だからこそ、暗黙の了解があるのだろう。

「お嬢様着替えを置いておきました。奥様から新しいものを頂戴しましたので」

「そう」

 母は誰か。父は誰か。

 それを考えるのは中学に入ってからやめた。

 私を育ててくれる兄を父のように感じ、執事を母のように感じ生活してる方が健全だと思った。

 兄もそれがいいといってた。

 隣にいる友だちが自分と同じ血がつながってる可能性すらあるのだから、何も考えないのが生きるのに一番いいエネルギーをくれる。

「それとお嬢様、今度妹さんがこちらにやってきますのでお願いします」

「妹……ですか」

「はい」

 私も等々姉妹といえる状態になるのか。向こうは姉だと私を思ってくれるのか、執事はどんな人がくるのか……色々考えることはあるけど、今は夕飯を食べることだけを考えよう。


「お前にも妹ができるんだってな。まぁ……妹自体はかなりいるんだけどな」

 兄の顔は笑ってるけれど、冗談ごとじゃないので笑えない。

「可愛いかな?」

「どうだろう。写真送られてきてないからわからないな」

 連絡事項はいつも執事経由。

 子どもたちには関与しないのが父と母と呼ばれる存在。実在するのかも怪しい。ロボットのように子どもを作ってると私は思ってるけど、案外母と父がロボットだったりするのかもしれない。

 試験管の子ども。

 そんな映画が実際にあるとは思えないけど、減らない財産と周辺の警備状況……何が裏があるとしか感じられない。

「友だちとうまくいってるのか?」

「うん、面白い家だねって言われたよ」

「まぁ……面白くはあるか」

 番犬のようなペットが庭を10匹生活してる。家には猫達もいる。生命が多い家。

「こんなにたくさんのペットが飼えていいなって言ってた」

「今度泊まりにこさせればいいさ。朝猫まみれになって驚くぞ」

「そうだね」

 今日の夕飯も執事に見られるまま終わった。

 他の兄弟姉妹たちがどうしてるかはわからない。

 幸せなのか不幸せなのか、繋がりがない。

 だから、兄と今度来る妹を大事にしたいってそう思った。

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