バブみ道日丿宮組

お題:燃える検察官 制限時間:15分

 ねぇ、私は誰かの役に立ったのだろうか。

 守れる人は守れず、人に間違ってると言われ続け、誤解は解けないまま。

 いっそのこと死んでしまったほうがいいのだろうか。

 どうせ報道でやっと死んだと言われるのがオチだ。ならせいぜい華麗に死んでみせようか。できたら良かったのだけど、満足に動かせるのは首だけで、あとは重い鎖が私を縛り付けてる。おまけにチューブが私を生かし、生き血を吸い、薬も盛られてる。

 舌を噛んで死ぬ力さえも残してくれてはいない。

「ねぇ、私の血は役に立ってるの?」

「あぁ、今日もたくさんの人を殺したよ」

「そう」

 現場に残されてるのは私の血。

 検察官が人殺し。

 正義は悪に染まった。

 世間はそう騒いでると目の前の男はいってた。

 新聞もいくつか見せてもらった。

 毒性のある血を投与されたがために内部から爆発したと。

 それはまるで赤い花火。

 犯人は私、行方不明で犯行現場には何も残ってない。まるで死者か、幽霊のような存在。悪魔の生まれ変わり。世間は私をそう呼ぶ。

「私はどうしてーー生きてるの?」

 生かされてるの。

「俺が必要だから」

 必要。私は必要じゃない。いるだけで世界を脅かす。

「なぜ」

 わからない。この男の考えがよめない。

「人は多すぎる」

 私には理解できない。人が多いのは本当のことだけど。

「君の血が火薬として使えるとしれたのは良かったよ」

 男はそういって、採血するボタンを押した。

 チューブに赤い血が次々と抜かれてる様子が見えた。

 またこの血が誰かを殺す。

 そして事件として私の名前が載る。

「お母さんたちは生きてるの?」

「こないだ死んだ。軟禁状態が悪かった」

 男の表情は一辺たりとも崩れない。

「姉さん、自由になりたい?」

 男、弟、人殺し。

「自由になっても私には残ったものがない」

「そうだね。ならそのまま汚職に塗れてもらうよ」

 私は弟に身体をいじられるだけの人生をこれからも送り続ける。

「いい忘れてたけど、姉さんの子どもがこないだ産まれたんだ」

 何を言ってるのだろうか。

「血だけじゃなくて他のものも抜いてたんだ。僕の血とあわさったおかげか、もっと強い毒性の血になったよ」

 あぁ、もう弟は人ではないんだ。

 そして私も人ではない。悪魔の仲間。


 それから何年かすると、弟は私の娘に殺されるのを目の前で見た。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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