インターミッション 第7話 - サウスポー
直樹がグラウンドを出ると、ファンとも言える女子学生や新聞部に取り囲まれていた。
それを見送りつつ、朝夢見がマウンドを降りてきた。
朝夢見は由起子を見つけると、少し照れたように「打たれちゃった」と呟くように言った。それに対して由起子は、朝夢見に近づくと、思いっきり頬を叩いた。
驚くしのぶとは裏腹に、仙貴はいつものようにやさしく笑んでいた。由起子はグラウンドの方へと歩いて行った。
しのぶは、戸惑いつつも、朝夢見に近づくと、大丈夫と声を掛けた。
朝夢見は、普段とは違って小さく頷くと、そのままグラウンドを出て行った。しのぶが止めようとしたが、仙貴は、「ほっといてやりな」とだけ言った。
でも、と言いつつ、追いかけようとするしのぶに対して仙貴は、
「あゆみは優しすぎるんだよ」と言い放った。
「え、どういうこと?」
「あゆみは観衆の前で直樹さんをノーヒットに打ち取るのをためらったんだ。だから、由起子先生は怒ったんだ」
「え?」
「手抜きではないにしても、全力で打ち取ろうとしなかったのは、直樹さんに対して失礼だ、ってことさ」
「そうなの…」と言いながら、しのぶは朝夢見がそんなにも優位に立っていたのかと驚いていた。
「もしかしたら、あゆみは直樹さんのファンなのかもな」
「え?!」意外な言葉が仙貴の口から出てきて驚いてしまった。「ファンって」
「ファンって言えばファンだろ。憧れの人なのかもね」と仙貴は笑った。
「え、でも…」しのぶは、次の言葉を言えなかった。
―――仙貴さんはあゆみさんのこと好きなんじゃないの?
由起子先生がホームベース近くで全員集合と号令をかけている。
外野から、内野から、ブルペンから、そして仙貴としのぶもベンチから集まっていった。
「今日はみんなに相談があるの」と由起子先生はそう言うと、全員に向かって、とは言っても朝夢見はいなかったけど、こう言った。
「野球部から愛球会のメンバーを合体させたいという申し出がありました」
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