四季の組曲

波野留央

四季の組曲

序章

「愛と海の共通点て、何だと思う?」

 白いダイニング。白い椅子に腰掛けた少女が問い掛ける。開いた窓から吹き込む風に、白いカーテンが揺れている。辺りには白い光。大きな栗色の目が向かいに座った青年を見据える。

「どこかで読むか聞くかしたのよ。でも、答えを忘れちゃったの。あなた、わかる?」

「愛と海の共通点、か」

 青年は頬杖を突き、考え込む。

「……どっちも溺れたら危険、とか」

「標語みたいね」

「……」

「溺れたことあるの?」

「愛に溺れたことはないけど、海でなら……いや、あれは川だったかな」

「怖かった?」

「怖くはなかったよ。一人じゃなかったし。……助けてもらったからね」

「その話、聞きたいわ」

「愛と海の話はもういいの?」

「いいのよ。話を聞き終わるまでに思い出すかもしれないし」

 少女は椅子から降り、青年の足下に身を預けた――。

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