第8話

【×月1日 土曜日】



「……」


「……」


しばし、無言で見つめ合う。

この瞬間、俺と貴之が考えていることは……たぶん、一致してる。


──先に沈黙に耐えられなくなったのは俺だった。


「……何で貴之が、みずきん家にいるんだ?」


「和臣こそ……こんな時間に何の用だ?」


質問に質問が返る。埒が明かない。

俺達の間に再び沈黙が降りる前に、俺は自分の事情から話すことにした。


「俺はその、ちょっとみずきに用があったっていうか……てか、みずきは?」


「バイトに行っているからいないぞ」


「なんだ……そうなのか。ん?じゃあ何で貴之が一人で家にいるんだ?」


貴之がしばし、虚空を見つめる。

貴之と話すといつもこうだ。独特の間に自分のペースを乱される。


みずきっていつもどう接してるんだろう──貴之の言葉を待ちながら、俺はぼんやりと考えていた。


それから、一体どのくらい経っただろう。

満を持して、貴之は重い口を開いた。


「まあ、色々あって」


「色々ってなんだよ!」


待った割に合わない、要領を得ない返事だ。

頭を占める「?」が増えていく……そんな俺に、貴之はさらに言った。


「話せば長くなる……が、そうだ。せっかく来たんだから上がっていったらどうだ、和臣」


「いや、ここ、お前ん家じゃないだろ」


つい語気が強くなる。

今ひとつ、状況が分からない苛立ちが滲んでしまった。


だが、内心悪いなと思っていたところに、貴之は畳み掛けてくる。


「少し狭くて申し訳ないが……麦茶でいいか?」


「だからお前ん家じゃないだろ」


今度のは呆れ混じりだった。


この困った友人が、何故親友の、それも不在中だというのに家にいるのか──気にならなくはない。

が、それ以上に、貴之を相手にすることに、俺は疲れ始めていた。


──みずきがいないなら、ここにいてもしょうがないか。


また来るわ……そう言おうとした瞬間だった。


「一週間もここに住んでいると自分の家のような気になってしまってな」


「え?そういうもんか……?いや、え?住んでる?」


流そうとしても流せない。

それなりに衝撃的な事実が貴之の口から飛び出た。


住んでる?


俺は、恐る恐る貴之に訊いた。


「え、何……貴之と、みずき……って、同棲?してんの……?」


「正確には、半同棲だ」


「半分か全部かとかの問題じゃないって」


「目覚まし時計をしている」


「ますます分かんねえ……」


俺は頭を抱えた。


そんな俺を見下ろす貴之が、言った。


「……和臣」


「なんだよ」


一瞬の間。

だけど、今度は貴之の方から口を開いた。


「和臣に、聞いてほしいことがある」


「……聞いてほしいこと?」


顔を上げると、貴之はこくりと頷いて、こう続けた。


「俺と……みずきの、今までのことだ」





── 一週間前。



【〇月26日 日曜日】



「はぁ……」


会議用テーブルに突っ伏して、ため息をつく。

パーテーションで区切られただけの事務所の会議室で、俺は一人、昨日のことを考えていた。


──何でもいいんだ。


── みずきの……ためになることがしたい。


つい、どうぞなんて言ったけど。


正直なところ、俺は……怖かった。

貴之の厚意を、受け取るのが怖い。何故か。


あれは受け取ってしまったらいけないものだと、本能的に感じる。


──だって、あれは……。


「何よ、みずき。そんなにため息ついちゃって。昨日のデートのこと?」


降ってきた声に顔を上げると、私服からジャージへと着替えを済ませたなこさんがいた。


「……今そういうの冗談にならないのでやめてくれます?」


「だってデートだったじゃない!それに、あの後、家まで来てたんでしょ?私、知ってるんだから」


「ちょっと上がってただけです……すぐ帰りましたし、何もありません……たぶん」


「たぶんって何よ」


「俺も分からないです」


なこさんが首を傾げながら、俺の隣に腰掛けた。


今日は「Vine☆girl」の活動がある日なので、俺は隣に住んでいるなこさんと一緒に事務所へ来ていた。

幸弥くんも、これから来るだろう。もちろん、俺達を呼び出した小牧さんも。

(ちなみに「目覚まし時計」の貴之には、今日は家に来なくていいと念押ししまくった。余計な詮索を避けたいからだ。)


二人が来るまで、まだ時間がありそうだったので、俺は昨日のことでなこさんが知らないだろう部分の経緯をさっくり話した。


なこさん達に一部始終を聞かれていると知って、動揺してスマホを湖にぶん投げたこと。

そして失くしてしまったこと。


そのことで警備っぽい人に追われたけど、女装姿だったから、それを解くことで撒けたこと。


貴之と幸弥くんは兄弟だったこと。


貴之が幸弥くんの「バイト」を案じていること。


俺と幸弥くんが同じバイト─Vine☆girlのことはバレてない─をしていると知り、ひとまず、安心できた、と言っていたこと。


色々ありすぎて、俺自身、なこさんに話しながら整理する形になった。


本当、たった一日でごちゃごちゃしすぎだよな。


「それより、みずき。私が仕上げた女装、完璧だったわよね?たかゆきもメロメロだったでしょ?」


まあ、聞かされた方のなこさんは、その辺あんまり興味なかったみたいだけど……。


俺はやれやれと首を振りつつ、言った。


「はあ……確かに、すごく手が込んでて、色んな配慮が詰まってるんだなとは思いましたけど」


「可愛いって言われた?」


「それは……言われてないですね。ていうか、女装を意識されてなかったような……いや、ちょっとは動揺してた気がするけど、あれは単に距離が近かったからかな……?」


「そんなの、みずきが可愛いからに決まってるじゃない!ふふ、やっぱり大成功ね!」


「そうですかね……?」


「そうよ!」


まあ、女性に間違われたりしたくらいだから、クオリティは確かだったけど。

肝心の貴之がどう感じたのかは、そういえば、分からず仕舞いだった。


なこさんも、俺も、結構頑張っていたので、正直、何の感想もないっていうのは寂しいもんだな。


いや、貴之に「可愛い」って言ってほしかったわけじゃないけど……。


でもちょっとくらいは、そう思ってもらってたと、なこさんに乗っかる形で勘違いしてもいいのかな。


悩む俺になこさんは笑って言った。


「ま、みずきからしたら、色々あったかもしれないけど。私的には、みずきが好きな人に可愛いって思ってもらえて、それがみずきの自信になったなら、それで十分よ」


「……は?す、好きな人?」


聞き捨てならないワードに俺は目を見開く。


好きな人?


「え、だって!みずきが好きなのは、たかゆきなのよね?」


「はあ?!どうしてそんなことになって……?」


驚きのあまり、椅子から立ち上がると、なこさんは目をぱちぱちさせながら弁明するように言った。


「ユキが言ってたわ」


「幸弥くんが……?」


何故。首を捻っていると、パーテーションの向こうから噂の人物の声がした。


「おはようございます」


「え、あ、おはよう……幸弥くん」


「ユキ!ちょうどよかったわ。今ね、ユキの話をしてたの」


「僕の……?一体何を……ああ」


「あ、えっと……幸弥くん?」


会議スペースに入ってきた幸弥くんは流石で、たったこれだけの説明で色々察したらしい。

兄にもその聡さを分けてあげてほしいところだ。


俺の向かいに座りながら、幸弥くんは言った。


「昨日のことですか?僕も兄から概ね聞きましたが」


「え、貴之から……?何て?」


つい、身を乗り出して聞くと、少し考えてから幸弥くんは答えた。


「楽しかったそうです」


小学生並みの感想。


「よかったわね」


「よかったですね、みずきさん」


「いや、そういうことじゃないって……」


もっと何かないのか、という俺の言わんとすることを察したらしい。幸弥くんはさらに付け加えた。


「でも便器の水で化粧落としはよくないと思います」


「ちょっと!私の努力をトイレに流したの?!」


「仕方なかったんです!やりたくてやったわけじゃ」


あえてなこさんに言わなかったことをあっさりバラされてしまった。

そうだよな、あんなに手間をかけて可愛くしてくれた結果が、便器の水で化粧落としは怒るよな……。

パニックになっていたとはいえ、本当に申し訳ない。


「それから……その……」


「まだあるの?」


幸弥くんが珍しく、躊躇いがちに口を開く。

……嫌な予感がしたけど、先を促すと、意を決して幸弥くんが言った。


「兄を……よろしくお願いします……」


「なんだ!やっぱりそうだったのね!」


「違います……!誤解です!何でそんなことに……」


やっぱりだ。どこをどう勘違いされたのか、幸弥くんは、俺が好きな相手は「貴之」だと思ってるらしい。


「……違いましたか?」


しかし、そこは真面目な幸弥くんだ。俺の否定する様子を見て、誤解だと分かってくれたみたいだな。

幸弥くんの言葉に俺は頷く。


「うん、なんか勘違いさせてごめん……?貴之はただの友達だから……ていうか、俺、最初の挨拶の時に、好きな人のこと、ちょっと話したような……?」


「ああ、そういえば確かに……まあ、初対面の人間の恋愛事情なんて、長々話されても興味ないですし、失念してました」


「……すみません」


「大体、そんな前の話覚えてるわけないじゃないですか。一体何週前の話だと思ってるんですか?間に違う話も入ってきたのに」


「……すみません!本当に!」


「妙に刺さる指摘ね……」


ぐうの音も出なかった。それに、なこさんの言う通り、妙に「刺さる」指摘だった。何でだろうなあ……。


「……まあ、みずきさんは、そのうち本当に刺されるかもしれませんね」


「へ?」


「いえ、何でもありません」


幸弥くんは首を振った。一瞬、何か言われたような気がしたけど、気のせいだったのかな……?


そんな俺の思考を遮るように、幸弥くんは言った。


「色々ご迷惑をおかけしているみたいですが、兄はみずきさんといると本当に楽しそうで、よかったと思います。今後とも、よろしくお願いしますね」


「あ、いえ……こちらこそ」


綺麗なお辞儀。相手は高校生だというのに緊張してしまう。この生真面目な感じはちょっと貴之に似てるかもな。


なんて思っていると、幸弥くんが口を開いた。


「それで……」


「おや、いつのまにか全員揃ってましたか」


そこで、間が悪く、最後の一人が現れてしまった。

小牧さんだ。


相変わらず、涼やかな雰囲気を纏っていて、辺り一帯がスポットライトで照らされるみたいな眩しいオーラを放っている。

この人が入ってきただけで、殺風景な会議室がぐっと華やかになった。


「遅かったじゃない」


「早く着いたので差し入れでもと思ったのですが」


小牧さんが腕に提げていたエコバッグから、ペットボトルを机に並べながら答える。紅茶、緑茶、炭酸飲料を俺達三人の前に置き、自分は水を取っていった。


「私紅茶ね」


「幸弥くん、先に取ってよ」


「じゃあ……お茶で」


俺は炭酸飲料を貰った。

正直そんなに好きじゃないけど、幸弥くんがいる手前、一応年上らしい振舞いをしてみた結果だ。仕方ない。


「なるほど……」


すると、それを見た小牧さんがぼそりと呟く。


何だろう?まあ、特に気にせずペットボトルの蓋を捻っていると「みずき君」と小牧さんに制止された。


「な、何ですか?」


小牧さんは真っ直ぐに俺を見て言った。


「本当は何が一番良かったんですか?」


「何のことですか……」


「これです」


小牧さんが手にした水のペットボトルを見せる。

ペットボトル?……ああ、差し入れのことか。


「何がって……俺は、これでいいですけど」


「別に責めないので、本当のところを教えてください。みずき君は、本当は何が飲みたかったんですか?」


「それは……」


俺は炭酸の入ったペットボトルを見つめる。


何だ?一体何の意図がある?俺は何を試されてるんだろう……どう答えるべきか、全く分からない。

大したことじゃないとは思うけど、この人が相手だからな。


──まあ、正直に答えるしかないか。


ちょっと気は進まないけど……。


俺はそれ以上考えるのをやめ、答えた。


「えっと……その、水です……俺、紅茶とかお茶とか、炭酸も、そんなに好きじゃないので……」


「そうですか」


小牧さんがにこりと笑う。すると、自分が持っていた水のペットボトルを俺に差し出してこう言った。


「そういうこと、忘れないでくださいね」


私がこちらにしましょう、と替わりに炭酸のペットボトルを取られた。

俺は「ありがとうございます」と言って、水のペットボトルを手にした。


その様子を傍観していたなこさんが口を挟む。


「あんたにしては気が利くわね」


小牧さんは柔らかに微笑んだ。


「いえ、私も本当は炭酸がよかったのですが、大の大人が炭酸はな……と遠慮していただけです。それっぽく威厳を保ちつつ交換ができてよかったですね」


「じゃあ何だったのよ、今の会話!?」


「特に意味はありませんが?」


涼しげな顔で、小牧さんは言った。視界の端で幸弥くんが呆れている。全くの考え損だったと知り、俺もなんだか、がっかりした。


──と、そこで、なこさんが仕切り始める。


「ていうか……今日は何でこんなに集合が早いわけ?生配信で何かするの?」


「おや、裏回しですか。気が利きますね」


「あんたのと違って、ちゃんと意味はあるけどね」


はは、と小牧さんが軽く流す。この人は反省とかしないんだろうか……。


部屋中の冷めた視線もものともせず、小牧さんは続けた。


「では、そんななこに聞きましょうか。なこ、夏といえば何か、分かりますか?」


「ユキ、夏だって。何かあるかしら?」


「急な季節感とか反応に困るからって僕に振らないでください」


そこはなこさんが答えるところじゃないですか、と幸弥くんがあしらう。

俺もなこさんから目を背けた。裏切り者!と言いたげな視線が痛いほど体に刺さった。


小牧さんは笑顔でもう一度尋ねる。


「夏といえば、何か、分かりますか?」


「あーはいはい。分かったわよ!えーと……海?」


なこさんが答えると、小牧さんは頷く。


「他には?幸弥くん、分かりますか?」


「山ですか?」


「なるほど……では、みずき君は?」


俺は腕を組んで考える。夏か……夏といえば、昔、和臣に連れられて行った──。


「うーん……フェス……とか?」


「その通り。合宿です」


「いえ、誰も言ってませんが……」


「というわけで、私達は来週の日曜日から強化合宿を行います」


「どういうわけですか」


幸弥くんと俺は話が飲み込めず、首を傾げる。しかし、なこさんはパッと顔を明るくして言った。


「何?もしかして、海?それとも山でキャンプ?フェスの見学とか?楽しそうね!」


「いえ、普通に泊まりで練習メニューを組んで行います」


「へえ……?じゃあ場所は?どこか借りるの?」


事務所ここです」


「……は?」


ここでやっと、三人の気持ちが揃う。全員言いたいことは同じだった。


──どういうこと?


それに対して、小牧さんは「やれやれ」とばかりの態度で説明した。


「外に行く予算なんてあるわけないでしょう。事務所で合宿します。事務所にテントと寝袋を置いて『六泊七日×一日十二時間生配信付き』の楽しい合宿です。皆さん、準備しておくように」


「「「はあ?????????」」」


今度は声も揃った。俺もなこさんも幸弥くんも、全員、困惑していた。

準備しておくように……って言われても、色々分からないことが多すぎる。


俺はほとんど反射的に小牧さんに尋ねた。


「じ、十二時間って、一日の半分じゃないですか……そんなに長い時間何をするんですか?」


「事務所に定点カメラを仕掛けて皆さんの生活をライブ配信します。朝三時間、昼三時間、夜六時間と三回に分けて配信をして、計十二時間です。合間にはイベントに向けて練習もします」


「なるほど……大変ですね、なこさんと幸弥くん」


「みずき君にもやってもらいますが?」


「正気じゃねえ」


「みずき、素が出てるわよ」


想像を絶する鬼企画に、つい本音が漏れてしまった。十二時間。一日の大半を監視されながら、さらに合間には練習もする。

そんなの耐えられるのか?というか、普通に嫌すぎる。


しかし、小牧さんは淡々と続ける。


「みずき君も幸弥君も、学校はもうすぐ長期休みに入るでしょう?ちょうどいいかと思いましたが、都合つきますか?」


「……昼間は補習があるので厳しいですね。あと夜も、家に帰らなければいけないので。一日通しては無理かと」


幸弥くんが腕を組んで思案しながら答える。小牧さんも「それは仕方ないですね」と納得している。チャンスだ。俺も何か言って──。


「俺も……」


「なるほど、じゃあフル参加はみずき君となこで、幸弥くんは来られる時に来てください」


無視だった。否応無くフル参加確定だった。

肩を落とす俺に、なこさんが背中をぽん、と叩いてきた。戸惑いこそしてたけど、なこさんはやる気なんだな……俺も諦めるしかないのか。


どうなってしまうんだろう、と息を吐く。


すると、小牧さんはいつになく真剣な表情で、さらに告げた。


「この合宿の配信の最後に──ファンに、新体制になることを発表します。私の卒業も、そこで伝えます──みずき君」


「は、はい」


押し出されるように返事をする。一呼吸置いてから、小牧さんは言った。


「あなたが正式にメンバーになったことも、そこで発表します。この合宿は──新体制の披露に向けた、いわば第一段階です」


「第一段階……」


そうか。

実際に『その日』を迎える前に、俺は、自分がこの人の代わりになると、ファンの前で宣言することになるんだ。


こんな、俺が。


怖い。


俺は昨日のトイレでのことを思い出していた。


弱く、声も上げられず、ただじっと閉じ籠もるしかなかった惨めな俺が。


あの頃と何も変わってなかった俺が……表に出ていくことなんてできるのか?


一度湧いた弱気が、ほんの少し持っていた希望を飲み込んでいく。そりゃそうだ、この弱さの方がずっと長く俺の中にあったんだから。


返事をしなきゃいけない。だけど自信がなかった。


その時、押し黙る俺に小牧さんが言った。


「──あなたがここで言ったこと、忘れていませんね?」


はっとした。


『……俺は、俺が好きになった人みたいに、真っ直ぐに、誰かのことを想える人になりたいと思いました。だから、ここで、その人の『好き』のために力になりたい、です』


『……俺、もう逃げたくないんです。逃げて、好きな人に顔向けできないような、そんな生き方はもう、したくないんです……そのためにここに来ました』


そうだ──俺は『好きな人を真っ直ぐに想える』ように、胸を張って生きられるようになりたかったんだ。


──今は、余計なことを考えるのはやめよう。


不安はある。分からないことだらけだ。自分のことも、まだ信じられない。それでも逃げるのは、やめよう。


逃げなかったことを重ねて、前に、進んでいこう。


仕方なくでも、諦めてでもなく、今度は自分の意思で、俺は小牧さんに返事した。


「はい。俺──この合宿を、やり遂げます。それで……少しでも、理想に近づいた自分で、和臣の……ファンの前に立ちたいです」


小牧さんは口の端を上げて笑った。


「その意気ですよ」


気がつくと、隣のなこさんも笑っていた。幸弥くんも頷いている。

不思議な縁で繋がった人達だけど、俺は今、一人じゃないんだな──今さら、そう思った。


では、と小牧さんが切り出す。


「今日の夜の配信で、合宿企画の話をします。それから、企画に関してもいくつかお話しておくことがありますので、今日は早く集まってもらいました。ではまず──」

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