第5話
「スワンボートなんて、小学生以来だ」
ボート乗り場へと続く桟橋を渡る途中。隣を歩く貴之が言った。
「そうなの?俺は……乗ったことないな」
「なんだ。なかったのか?」
「うん。昔、姉さんが乗りたいって言ったけど、俺は『水に落ちたら怖い』って言って、嫌がって。で、姉さんに『意気地なし』とか、めちゃくちゃ言われたっけ……」
あまり思い出したくない記憶だが、この桟橋に来ると、嫌でも甦る。
ちょうど、今歩いているあたり──湖の周りを囲むように植えられた木々の隙間からジェットコースターが見えていたあたりだ──で、俺はしゃがみ込んでわんわん泣いてたんだよな……。
まあ、まさか十年後、女装してそこを歩いているとは思わなかったけど。
不思議な巡り合わせに、一人、感慨にふけっていると、貴之が笑った。
「はは、うちの弟と同じだな」
「弟?」
「ああ……幸弥も昔、ボートを怖がってな。結局、父さんと一緒に、俺と母さんが乗っているところを見ているだけだった……」
そう言って、遠くに見えるベンチを指す貴之。
きっと昔、あのあたりで、貴之の弟──「ゆきや」くんとお父さんが、スワンボートに乗る貴之とお母さんを待っていたんだろうな。
ん?
「ちょ、ちょっと、待てよ……へ……?ゆきや?」
ふと、その名前が引っかかり、思わず、貴之の話を遮る。
「ゆきや」って……。
「ああ。俺の弟だ。高校生で、今は実家にいるから、一緒に暮らしてはいないんだが……」
「へ、へえ……。ひょっとして、字は『幸』せに弥生の『弥』で『幸弥』くん?」
「その通りだ」
目をぱちぱちさせて、驚いた風の貴之。
貴之にも、俺自身にも……たまたま当たっただけだと、言いたいところだが、俺の予想はたぶん外れてない。
高校生で、「幸弥」という名前の弟。それだけなら、偶然と言えるかもしれない。
──だが、俺はあることを思い出していた。
それは、貴之の「名字」だ。
幸弥くんの名前──「杜 幸弥」を初めて聞いた時から引っかかっていたが、そういえば、貴之の名字も「杜」なのだ。この字の「もり」はかなり珍しいし、幸弥くん自身も、以前「Vine☆girl」の配信で「兄」の存在を仄めかしていたような気がする。
ここまで一致する条件が多いと、さすがに、完全否定はできない。
幸弥くんは──貴之の弟。
いや、「友人の弟とユニット組んで女装アイドル」て。
俺が「Vine☆girl」に加入したことだけは貴之にバレたくないのに、一気にそのリスクが跳ね上がった。
「その、幸弥くんってどんな子?」
違っていてほしい。
半ば祈るような気持ちで、俺が尋ねると、貴之は顎に手を当てて考えながら、言った。
「そうだな──顔は俺にあまり似てないんだが……綺麗な顔をしていると思う。歳の割にすごくしっかりしていて、物怖じしない。弟だが、俺も頼りにすることが多い」
「うん」
なるほど、これは俺の知っている幸弥くんの印象通りだ。
今ので「幸弥くんは貴之の弟率」が99%くらいになった。
だが、まだ1%……そうじゃない可能性が──。
「最近はアルバイトに精を出しているな。土日が中心で、接客業らしい。歌ったり、踊ったりする上に、制服がやたらフリフリしていて、趣味に合わないのが困ると言っていた」
ないですね。
「それから……」
「やめろ!それ以上もう……やめてくれ……」
もう諦めかけたその時、貴之が言った。
「ちょうど、みずきの尻から、聞こえてくるような声をしている」
「は……?し、尻……?」
突然、貴之が俺の尻を指差すので、思わず、両手で尻を抑える。
尻?
「何で貴之の弟の声が俺の尻から聞こえるんだよ」
「それはむしろ俺が聞きたいんだが……もしかして、みずきの独特な屁か?」
「そんなわけないだろ」
「だが、本当に、幸弥の声が聞こえてくるぞ。まあ、その……何というか、正確には
「正確すぎるだろ」
ちなみに臀溝とは大腿部と尻の境目で、正座した時に踵がつくあたりを差すとのことだった。
怪訝な顔の俺に貴之が言った。
「そうだ。嘘だと思うなら、自分でその尻に幸弥がいないか探ってみたらいい」
「いるわけないだろ……」
「なら、俺が確認してみよう」
「へ?!」
貴之が俺の背後に回りこんできたので、すかさず体を回転させて、尻を守る。
何故か残念そうな貴之に、俺は言った。
「おい!俺の尻が気になるからってやめろ。そんなに言うなら自分で確かめる……」
俺は後ろに回した手で、そっと、貴之に言われたあたりを触ってみる。すると、確かにショートパンツの片方の尻ポケットが膨らんでいた。
その膨らみは布の上から触れても分かるほど熱く、何か硬いものが入ってそうだった。ていうか、これは──。
「あ、スマホだ……」
「スマホ?」
首を傾げる貴之を前に、尻ポケットからスマホを取り出して、画面を見る。
『通話中』の文字と、今なおカウントを刻む、二時間越えの通話時間の表示。通話相手は──。
『なんか……お尻って言ってる』
『し、尻?!何ですか、それ?』
なこさんと、もう一人の声は……幸弥くん?
どういうことだ?
「もしかして……それ、幸弥と繋がっているのか?」
「え……!いや、それは……」
貴之が肩越しにスマホを覗いてくる。俺は、咄嗟に体を捻り、画面を隠した。
しかし、貴之が回り込んでまで覗こうとするので、その度に俺は体を捻って逃れる。
その調子で、しばらく二人でぐるぐるしていると、目を回した貴之が一旦、離れて行ったので、俺はほっと息をついた。
少しくらくらする頭を抑えながら、落ち着いて考える。まずは状況の整理だ。
──どうやら俺は、なこさんに電話をかけた後、通話を切らないまま、貴之と合流していたようだ。
さらに、なこさんは、いつの間にか幸弥くんまで呼び出している。
つまり、今の今まで、俺と貴之の「
「きっっっっっつ……!!」
知りたくなかったどぎつい現実に、思わず声が出る。え、無理。俺の調子に乗った言動も全部聞かれてたの?しかも貴之の弟にまで?恥ずかしい。恥ずかしすぎる。今後どうやってあの二人に顔を合わせればいいのか分からない。
それだけじゃない。
貴之に幸弥くんと繋がっていることがバレたら、当然、兄である貴之はその理由が気になるはずだ。
どう説明したらいいか分からない。
貴之は、俺が秘密にしたいところほど、躊躇なく踏み込んでくるし、本当に厄介なのだ。
俺が「Vine☆girl」に入ったことも、隠し通せないかもしれない。
……それに。
幸弥くんだって、もし、貴之に「Vine☆girl」として活動していることを隠しているなら、俺がボロをだせば、彼にも迷惑がかかる。
それは俺が恥ずかしい思いをする以上に、まずいことだ。
どうしたらいい?
『あれ?一瞬よく聞こえるようになった気がしたんだけど……また聞こえなくなったわね……?二人のお尻はどうなったのかしら……』
『な、なこさん、どういうことですか……!兄はみずきさんの尻に、何をしたんですか』
『大丈夫よ、ユキ!みずきだって、もう大人でしょ?自分のお尻を、守るか、差し出すか、それくらい、ちゃんと自分で決められるわよ』
『さ、差し出すって……!どういうことですか!だって、まだこんな……こんな、白昼堂々……え?』
『チャンスに昼も夜もないのよ、ユキ』
『それが……大人なんですね……?』
……本当にこれからどうしたらいいんだ。
「大丈夫か、みずき」
「うわ!」
チャンスどころか、ピンチが続く。
スマホを抱えたまま振り向けば、すぐそこに貴之がいた。
まずい。
とにかく、幸弥くんやなこさんの存在に気がつかれる前に、早く通話を切らないと。
ドキドキしながら画面をタップして──これでもう大丈夫。
通話は切れた。そう思ったのだが。
『でも、みずき。たかゆきと上手くいってるみたいで良かったわ!研修大成功ね』
『え?どういうことですか?』
『だって、今日はみずきが【たかゆきにいっぱい可愛いって言ってもらって自信をつける】のが目的なのよ?上手くいってるってことは、たかゆきはもうメロメロってことでしょ。あー……良かった〜!みずき、しつこいくらい私に【これ、本当に可愛いんですか?たかゆきでも、俺に可愛いって言いますか?】って聞いてきたし。私もみずきも、報われたってことよね?』
押したのは──スピーカーボタンでした。
「うわああああああああああ──!!!!!」
振りかぶって放り投げたスマホは、弧を描いて湖へと飛んで行く──まあ、学生時代のボール投げの記録・十五メートル程度の俺ではそれほど遠くまでは飛ばなかったが。
それでも、スマホを湖に沈めるのには充分な飛距離だった。
○
つー、つー、つー。
通話の終了を告げる無機質な機械音が、無言の間を埋める。
僕となこさんは、真っ暗なスマホの画面を見つめ、呆然と立ち尽くしていた。
「ぼちゃん……て、水、の音、ですよね?」
「分かんない……」
何か言わなければ。その一心で発した僕の問いかけに、なこさんがほとんど反射的に返す。
僕は、またすぐに口を開く。
「みずきさん……まさか、落ちたんですか……湖に」
「分かんない……」
「音がする前、何か言ってました?……尻以外で」
「分かんない……」
「ここ、結構深いんですかね……」
「分かんない……」
「分かんないばっかりじゃないですか……」
「分かんない……」
「ああ、もう!」
ぼんやりと明後日の方を見つめるなこさんに、痺れを切らした僕は、その両肩を掴んで揺さぶった。
「しっかりしてください。仮に落ちたとして、人のいないところで落ちたわけじゃないでしょうし、大丈夫です」
「ここ、そんなに人いないじゃない……」
「なこさんのフォロワーよりはいます」
「それは言わないの!!」
今度は、なこさんに、僕が両肩を掴まれて揺さぶられる。よかった、元気になったみたいで。
「まあ、みずきさんのことは兄もいるから大丈夫ですよ」
「そうかもしれないけど……でも、やっぱり心配じゃない?」
なこさんが、しゅんとした表情で下を向く。感受性の強い人だ。
さっきまで、あんなに楽しそうにしていたのに、今はみずきさんのことが心配で仕方ないんだろう。
僕は少し考えてから言った。
「僕達がデートの覗き見をしていたことがバレるリスクは多少ありますが……兄に電話してみましょうか?」
「たかゆきに?」
僕の提案に、なこさんが顔を上げる。僕はひとつ頷いてから言った。
「はい。僕なら、兄さんが今日、友人──みずきさんと出かけることは知ってましたし、事前に相談もされています。様子を聞く体で、電話しても不自然じゃないはずです」
「みずきの身の安全の方が第一よ!もし覗き見がバレて、ユキが怒られそうになったら私が謝るわ!」
さっきまでの力ない目と違い、今度は真っ直ぐに僕を見つめるなこさん。
なこさんにいきなり謝られたら、兄さんはたぶん驚くだろう。そもそも、あの兄さんが「デートを覗き見されていた」と知って怒るとは思えない、けど。
僕を庇おうとするなこさんの気持ちが、僕は少し嬉しかった。
「ありがとうございます」と僕は頷き、自分のスマホを取り出す。
みずきさんも、兄さんも、何ともないといいけど。
いや、きっと大丈夫だ。
ぷるる、と発信音が響く。ほんの20秒くらい待っただろうか。ぷつ、と音がして、聞き慣れた声が言った。
『幸弥?』
兄さんだ。それほど、深刻な雰囲気は感じられない。極めていつも通りの声。
僕は少し、ほっとしつつ切り出した。
「兄さん。今……話しても大丈夫ですか?」
『大丈夫だ。ちょっと待ってくれ、外に出る』
「そ、外?」
僅かな情報からでも、兄さん達のことが何か分からないか。僕は右耳に全神経を集中させるが、聴こえてくるのは、風のざわざわとした音や、布が擦れるような音ばかりだ。
焦れるような数秒の後、ようやく、兄さんの声が聞こえた。
『すまん。で、どうしたんだ?』
「いえ、その……兄さんの、お出かけの調子はどうかな、と」
自分でも、変な言い方だと思いながら、口を動かす。兄さんにこんな電話あんまりしないし、ちょっと恥ずかしい。
すると、兄さんがふっと笑って言った。
『気にしてくれていたのか』
「相談されたからです。これは僕の性分です。ただのアフターケアです。それで、どうなんですか?」
からかうような兄さんの声に、ついムキになりながらも、僕がそう返すと、兄さんは言った。
『そうか……まあ、何から話していいか分からないのだが……とりあえず、大丈夫だ』
「そうなんですか?その、アクシデントとかもなく?」
疑うような言い方に、ちょっと不自然だったかな、と思いつつ、兄さんの返事を待つ。ややあってから、兄さんが言った。
『多少はある、が……何とかなった、と思う』
歯切れの悪い兄さんの言い方に、僕は首を傾げる。とりあえず、みずきさんの身に何かあったわけではない、のか……?
なこさんが背伸びまでして、僕と兄さんのやり取りに耳を澄ましているので、僕は音声をスピーカーに変える。それから、兄さんに尋ねた。
「みず……その、お友達は、今一緒ですか?」
『いや、今はトイレに行っている。……少し、色々あって服を着替えていてな。時間がかかるから、土産でも見てろと言われた』
「ふ、服を……?一体何が……」
『ああ、それは──』
その時、なこさんに服の裾をくいくい、と引っ張られた。僕は兄さんに聞かれないよう、声を顰めて言った。
「……何ですか?」
「ユキ、あそこ……」
なこさんの指差す方を見遣る。湖の周りを囲うように並ぶ木々を挟んで見える、遊歩道。
そこに。
「に、兄さん……?」
スマホを片手に通話しながら歩く──フロントに虎の顔が大胆にプリントされた白いTシャツに、「ZOO」を象った派手なサングラスを纏った兄さんが見えた。
それだけじゃない。
『ごめん……貴之。思ったより、その、手間取っちゃって』
スピーカーから聞こえてきたのは、みずきさんの声。見ると、遊歩道を歩く兄さんのもとへ、みずきさんが小走りで合流していた。
黄色い犬ともウサギともきつねともつかない不思議なキャラクターのTシャツを着て、それに何故か女装も解いている。
おまけに──顔をびしょびしょに濡らしながら。
何やってるんだ、あの人達。
○
ぽちゃん。
ウォータークラウンを作って、水底に消えていった自分のスマホを見つめる。
え?
俺、何やった?
「みずき、今……」
俺と全く同じ姿勢で、スマホの軌道を眺めていた貴之が言った。
「スマホ……落とさなかったか?」
「落としたな」
「というより投げなかったか」
「投げたな」
二人して、しばらく固まる。えっと──。
「俺……取りに行く!」
「え、あ、待て!待てみずき……!」
無思考で湖に飛び込もうとする俺を、貴之が後ろから抱き止める。貴之の腕は意外と力強く、身を捩ってもびくともしない。
力づくで俺を抑え込みながら、貴之が言った。
「みずきまで落ちてどうする!」
「離せ貴之……!俺はあいつを助けに行かなきゃ……!」
「あれはもう手遅れだ、諦めろ……!」
「三秒ルール!三秒ルールがあるから!」
「いや、ないだろ!バックアップとかないのか……!」
「そんなのない……!バックアップ取るほど、あのスマホには何も入ってない……!」
「じゃあ尚更よくないか……」
「確かに……」
冷静になった瞬間、ふっと体の力が抜ける。
何気なく振り返ると、ほとんどゼロ距離で貴之と目が合い、そういえば俺今、貴之の腕の中にいるな、と思う。
「貴之ごめん……離して」
「うん」
貴之があっさり腕を解く。俺は、貴之から一歩離れた。腕に残る貴之の体温を、今更意識して、少し気まずい。
「……どうする?」
貴之が口を開いた。
「どうするって?」
俺は貴之の落ち着いた口調から、その先に言いたいことを何となく予感しながら、返す。
貴之は言った。
「大丈夫とは言ったが、スマホ、気になるだろ。……今日はもう解散するか?」
やっぱりだ。
俺は何て言ったらいいか分からず、曖昧に「ううん」と返す。貴之がゆるゆると首を振って言った。
「また、今度来よう。誘ったら、乗ってくれるか?」
怒りも呆れも、何も感じさせない声。
気を遣わせたと言うのは簡単だけど、紛れもなく、これは貴之の優しさだ。
自分を省みる前に、真摯に受け止めなくちゃいけないものだ。
その上でどうするのか、俺が決めないと。
そもそも、今日は「研修」でも「デート」でもなかったのだ。
家にいると塞ぎがちな俺を、貴之が外に連れ出してくれようとした、ただただ、友達と遊びに行くという、楽しい予定。
色々考えなくちゃいけないことはあったかもしれないけど、今一番大事なのは、大事にしたいことは──。
「貴之」
桟橋を引き返そうとする貴之の手首を握って、引き留める。貴之がちらりと俺を振り返った。俺は言った。
「俺、まだ行きたいところがある……」
貴之が首を傾げる。
「どこだ?」
「あれ」
それは、湖のずっと先で、建物の隙間からやっと頭を出している──観覧車。
貴之が乗りたいと言ったものだ。
「いいのか?」
戸惑うように、ぴくりと眉を動かす貴之。俺は努めて、笑うようにしながら言った。
「うん。だってもう、どうせ失くしたし、どうにもならないんだから、あと何時間遊んで帰ったって変わんないし」
「そ、そういうものか?」
「そうなの。ていうか、完全に俺が馬鹿やっただけだし、貴之が気にすることじゃないっていうか……むしろパーっと遊んで……一回忘れるの手伝ってよ」
自棄とも思えるようなことを言う俺に、貴之が頭を掻く。
「引きずってるのか、思い切りがいいのか……よく分かんないな」
「まあな」
貴之と顔を見合わせて笑う。その時だった。
『あの、さっきこの辺で湖にスマホ投げ込んでる女の人がいて……!』
『……なるほど、それで?』
『それで……その後、自分も湖に飛び込もうとしてたんです!』
大きな話し声に振り返ると、数十メートル後方に警備員と思われる男性を連れた、女性客二人組がいる。
しかも、俺達に近づいてきていて……。
まずい。
さっきの、他の客に見られていたのか。
どうする。
「みずき、とりあえず、ここを移動した方が……」
「そうだな」
貴之の手を引いて、気がつかれないよう、足早にその場を去ろうとする。が。
『あ、あの女の人かもしれないです!』
いきなり見つかってしまった。
すると、貴之が俺を隠すように、前に出る。
どうする、どうする……このままだと貴之も俺も捕まってしまうだろう。どうしたら……。
── あの、さっきこの辺で湖にスマホ投げ込んでる女の人がいて……。
── あ、あの女の人かもしれないです!
女の人。
俺はブラウスの裾をひらりと摘んで見た。そうだ。
「貴之行こう。俺に、ちょっと考えがある」
「みずき?」
戸惑う貴之の手を引いて、俺は駆け出す。
目指すのは──前方に見える、男子トイレ。
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