それはそれはキレイな女神様
男は夢の中で美しい女神と対面していた。
「DD…と呼ばれていましたね…。
意図せずとはいえ…人の世、
しかも別世の神の庭を荒らす事となるとは…。
何よりも、最悪の状況になる前に止めていただいた事に深く感謝致します。
どうやら逃げ帰…帰還のさいについ巻き込んでしまったようで…。
すみませんでした。」
DDは少し考えて結論を出す。
「…んん…、察するにお前があの玉の中身と言うことなのだな?
見た目は多少好みのねーちゃんになったようだが…心配ない。
俺は依頼を受けたターゲットを葬るだけだ。
死んでもらおう。たま子。」
「たま子じゃないです。
…あと私、一応…神ですよ!?」
「絶殺だ。」
「(…うわ…、嫌な世界の面倒なのに引っかかりましたか…?)
ちょ…ちょっと簡単にお返事出来る事ではありませんので…、
その件についてはまた後日ということで…。」
「ん!?神殺しの銃が無い!」
腰や懐をまさぐっても先程まで有ったはずの銃『ケラウノス』は見当たらない。
「…あの物騒極まりない鈍器の事ですか…。
今、会話しているここは貴方の夢の中です。
チョイっとやって存在を遠慮していただきましたよ…。
それにここで私を討ったとしても、現実には反影されませんから…。」
「俺の夢の中……」
DDは少しの間目を瞑り、考え込んだ後に見開いた…が、予想通りにはいかなかったようだ。女神の方は呆れている。
「いくら貴方の夢でも姿を投影しているのは私なんですから…
衣服が消えたりなんてしませんよ、まったく…。
こんな状況でよくそこまで平常心でいられますね…。」
「殺し屋は常に平常心だ。」
「さっき目を開けるまでドキドキしてたじゃないですか!」
「…いやまぁ…、多少好みではあるのでな。ははははは!
いや実際…突然戦争が起こったり、
天使からターゲットが人造の神で、
さらに世界を救うなんて依頼を受ければもう何も驚かん。
冗談は置いておいて、
俺は神を倒した殺し屋…と名乗らせてもらう事で問題はないか?」
女神は更に呆れた様子で…
「冗談って…。ではもう争うつもりは無いのですね?」
「元より請けた依頼は『世界を救う』であって、たま子の殺害では無い。」
「たま子じゃないです。」
DDは表情を柔らかくし、その場に胡座をかいて肘をつく。
「人間が造って独自に進化したアレを破壊できたなら任務は完了だろう。
何か証拠になりそうなものでもくれれば問題はない。
神、だろう?」
もうかないません…と言ったふうに両手を広げて首を振った女神は…
「わかりました、何か用意しましょう。
その前に…やっと本題なのですが…。
神でありながら別の世界からの召喚につい応じてしまい…
あまつさえ多大な迷惑を掛けてしまう力として利用されてしまった事で、
私はこれから上位の神達にめっちゃ怒られて来ます…。」
「いっぱい死んだしな。」
「あぐ!
…や、やったのはそちらが作り出したシステムですから…。
霊力を使われただけですし…。
今はこうして思念の欠片だけを貴方に残して夢の中で話してはいますが、
実際の私は既に天界へと召喚されています。
ですので…貴方を元の世界に戻すのに…少しお時間を…いただきたく…。」
だんだんとしどろもどろになっていく女神の様子を眺めながらDDは何かを察していた。
「つまり、
エサに釣られて異世界に顔を出してみたら罠に掛かって捕まって、
世界を危機に陥れる片棒を担がされたうえに
ようやく逃げ帰ってみたら人間を巻き込んで来てしまったけど
バレたら更に都合が悪くなるので、後でコッソリ戻すから暫く待っていろ…と?」
女神は姿勢を正して深々と頭を下げ、
「はい!さーせん!!
生き物の輸入は一番やベーんです!
魂の多さで世界間の優劣が付くので…最悪それぞれの神々同士で争うことも…。
気性が荒い神々も多いので…。」
今度はDDの方が呆れ気味に首をふる。
「(ウチの神とやらはそんな好戦的には見えなかったがな…。
人間に偽りの神を造られてもヤバくなるまで気付かなかった位だしな…。)
まぁいいだろう。
元の世界だろうが別の世界だろうが…どうせ独りだ。
で、そこはどんな世界なんだ?」
女神はパアァァ~…と喜び、説明を始めた。
「言語は私の方で貴方の知識を微調整はしておきますが、
そちらの世界の共通言語とほぼ似たような感じです。
だいたいどこも似たような進化するものなんです。
文明は…何度か滅亡を繰り返してるようで高度な機械等も有りはしますが、
今は中世…といったところが妥当でしょうか?
あ、貴方の頭にあるファンタジーというのが丁度良く当てはまりますね!」
「勝手に覗くんじゃない!
まったく…、そちらの都合を聞いてやる代わりに何かあるんだろうな?」
少し考えこんだ女神は…
「ん~、帰還の際には私打倒の証拠の品に加えて何かお約束しますが、
何ぶん今の私は本体ではありませんので…。
そちらにお持ちの神具の霊力は、
あちこちに有る私のテリトリーで補充出来るようにしておきます。」
いつの間にか手元に有るケラウノス…。
「わ…我がチョイっとされるとは…遺憾である。」
「死ね!たま子!」
咄嗟にDDは銃を女神に向けて引き金を引く!が、玉は全てすり抜けて行く。
「たま子じゃないです!あと本体でもないですから当りませんよ。」
「冗談だ。
なるほど…霊力とやらが弾丸の代わりになるのか。
便利だな。」
その時少し目の前が揺らぐ。
「とりあえず伝えたいことは以上です。ちょうど夢も覚める頃でしょう。
少し待たせてしまうでしょうが…必ず迎えに来ますので、
出来れば目立たずに生きていて下さいね。それでは、また。」
どんどん視界が暗くなって行く中、女神に手を伸ばす。
「おい!お前のテリトリーってどこなんだ!?」
遠くなっていく意識の中で最後に彼女の声が届く。
「あ、そうでした!
トイレです~~!」
その声を最後にDDは暗闇の底へと沈んでいった。
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