死なずのお嬢と絶殺の殺し屋さん

FM

プロローグ

 その銃口は三度光った。


 幾度もの死線を乗り越え…、今この世界に置ける「神」と呼ばれる存在をも討つ事の出来る存在となったその銃から放たれた霊力を帯びた弾丸は、一瞬の閃光を放ち…

一発は僅かに外れ、

一発は僅かに表面をかすめ、

最後の一発は、その「神」と呼ばれ続けた球体の中心を貫いた。


「…任務完了だ。」


 かつて『神の間』とされていた重力も無視したその空間の中心に存在した人工の球体は、いつか異世界の神を召喚するまでに進化し、密かに世界を破滅に導こうとしていた。


「まだです、DDさん!

 器が壊れただけです!今こそ神託の弾丸であの光を打ち抜いて下さい!」


 やがてこの世界の神々と人類が手を結び、今ここに『それ』を追い詰め、トドメの時である。


「…何…?

 ……さっき撃ったのが…それだったんだが…。」


 世界の未来を託されたのは一人の殺し屋。

子供の頃から殺しのエリートとしての教育のみを受け続け、請けた依頼は全て成功させてきた

『死の決定者』…いつしかDDと呼ばれるようになったこの男…それ故に実は数字に多少弱かった。


「は!?

 順番教えたでしょう!何度もっ!何度もっ!!

 ケラウノスは何やってたんですか!」


 振り回されてボロボロの銃身から声がする。


「無理である。

 これほどの強力な霊力のこもった弾丸を何発も打ち出すだけで我も限界である。」

 

「やかましいな…もう反撃もしてこないし早く次の弾でも用意しろ。

 神の使いだろう?」


 DDは落ち着いた様子で球体から溢れる光を睨みつけながら、後方で瓦礫に身を隠して叫び続けている背中に羽を生やした、如何にも天使な人物に言い放つ。


「神々の力の結晶がそんな何発も何発も有る訳がないでしょう! 

 アナタそんなんでよく今まで失敗せずに来れましたね!」


 言い返されると、口元に笑みを浮かべながらグリップを握る手を銃身に持ち替える。


「ふん、神々の力の結晶とやらならココにもあるじゃないか…

 討つ弾が無いなら…殴り殺せば良いじゃない!」


 と、飛びかかり、球体から溢れる光に殴りかかろうとしたその時…


『コワイ…モウイヤ…タスケテ…モトノセカイニ…カエシテ…

 …ソノ…チカラデ!!』


 突然光は輝きを増し空間を裂くと、DDごと神の銃『ケラウノス』を包み込んでその中へと消えてしまった。

その光景を呆然と見守っていた天使は…


「……この世界に縛っていた依代が破壊されて自我が戻ったみたいですね…。

 DDさ~ん?ケラちゃん~?お~…い…。」


 辺りを見渡しても姿は無い。


「ん~…コレはどうも…

 ケラウノスの霊力を使って尻尾巻いて逃げるのに巻き込まれちゃいましたか…。

 ま、この世界の崩壊は止まったようですし、怒られることも無いでしょう!

 手伝ってくれた方々にお礼をして天界に帰りましょうか♪

 あはは~♪」


 くるりと回ると天使はその場から消え…数時間後にまた同じ場所に現れた…。


「人間からも神様からもめっちゃ怒られましたぁ~~…。

 うう…。

 なんちゃっ天使ってなんですか、非道いです!

 堕天案件です!

 私だって頑張ったじゃないですかぁぁ~…。

 …そもそも私がDDさんを選んだから世界も救われたハズじゃないですか…。

 皆さんが選んだ人達はさっさと脱落した癖に…!

 誰か手伝ってくれても良いはずですよぅ…。ぐすぐす…。」

 

 と、泣きながら彼らが消えた辺りの反応を探る。


「すんすん…え~と、ここいらですね…。

 いくらこの部屋から繋がる世界が限られるからって…幾千ですよ…。

 無理に決まってますよぅ…ひぐ…」


 ブツブツと愚痴をこぼしつつ神より特別に渡された神具で空間を切り裂き、天使は恐る恐る中を覗き込んだ。


「行きたくないよう…

 二人とも…自力で帰ってきてくださいよぉ~!ひ~ん!

 もーやだ~~!」

 

 意を決した天使『ララメミル』は半ばヤケクソにその空間へと飛び込んでいった。


「堕天案件ですぅう~~ぅぅぁぁぁ……!!」  

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