転送屋さん

@undoodnu

転送屋さん

お好きなものを、お好きな場所へ――。


俺の住むオンボロアパートの郵便ポストにチラシが入っていた。

近頃流行りの転送屋らしい。

指定したものを、指定した場所へ瞬時に転送してくれる。

チラシをよく見ると、料金がかなり安い。

これは頼んでみる価値があるかもしれないな。

ゴミが散乱する部屋を見ながら、俺は携帯電話に手を伸ばした。


転送屋に電話を掛け、料金を支払う。

すると、すぐに折り返しの電話が掛かってきた。

「お世話になっております。ただいま転送が完了いたしました」

部屋を見回したが、何も変化が起こっていない。

「どういうことだ。何も転送されていないぞ」

「いえ、たしかに転送いたしました」


まさかと思い、部屋のドアを開けてみた。

まわりはゴミだらけ。

そこに俺の部屋が切り取られたように存在していた。

どうやら部屋そのものがゴミと見なされてしまったようだ。

この俺も含めて。

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