第21話 エヘッ! 21

「ああ~私にやることが無い!」

 おみっちゃんは苦悩していた。

「最後に歌を歌って敵を倒して終わりなんだから、その過程なんてなんでもいいのよ! どうして私は音痴なの!?」

 おみっちゃんは自分の背負っている宿命を恨んでいた。

「コン。」

 呪われているぜとコンコンは言っている。

「私が人間になった話だろうが、私がソフトクリーム屋さんで掛け持ちバイトした話とか、足が無い幽霊なのにウンピーを踏んだ話とか、どんな話をしても最後に歌って終わらせればいいだけの人生なんだわ! ウエエエエーン!」

 自暴自棄になるおみっちゃん。

「コン。」

 呪われてるぜを流行語にしたいコンコン。

「そこら辺で主人公たちはちょい出演で、毎回ゲストキャラクターを変えたり、新しいアイテムで何とかしのいでいるのが既存の長寿アニメたちね。」

 ただし絶対に見なくてはいけないことはない。もっといえば、見ていない作品ということになる。

「なんでもいい! 物語なんて暇つぶしだ!」

 開き直るおみっちゃん。

「コン。」

 大好きな油揚げが食べられれば何でもいいですといっているコンコン。


「もし私が商店街に買い物に行ったら。」

 おみっちゃん買い物編。

「いらっしゃい! おみっちゃん!」

「どうも。」

 おみっちゃんは商店街の人気ものである。

「このお魚下さい。エヘッ!」

「いつもカワイイね。このマグロも持っていきな!」

「ありがとうございます! エヘッ!」

 カワイイおみっちゃんに商店街のオッサンたちはメロメロ。

「こんなにたくさんの荷物になっちゃいました。エヘッ!」

 おまけで山盛りの荷物を獲得するエヘ幽霊であった。

「コン。」

 可愛いってお得ですよねと言うコンコン。


「もし酒呑童子がコンビニ買い物に行ったら。」

 酒呑童子が買い物にコンビニに行く。

「強盗だ!」

 見た目でコンビニ店員から迫害される酒呑童子。

「え? 私は客だぞ。」

 戸惑う酒呑童子。

「カラーボールを投げつけろ! 鬼は外! 福は内!」

 節分が始まる。

「ガオー! 鬼だぞ! アメリカンドックにチキンを寄こせ!」

 結局、怒って強盗になる酒呑童子。

「差し上げますから、命だけは助けてください!」

 命乞いするコンビニ店員。

「あばよ。」

 酒呑童子は去って行った。

「ああ!?」

 その時、コンビニ店員は驚いた。

「300円置いてある!?」

 酒呑童子はアメリカンドックとチキン代をしっかり払っていたのだ。

「なんて良い人なんだ。酒呑童子さん。」

 普通に買い物できない酒呑童子であった。


「もし玉藻の前がネットスーパーを行ったら。」

 今の時代、妖怪もネットで買い物する。

「ネットスーパーの宅配便です。」

「来た来た。はい~直ぐにドアを開けます。」

 玉藻の前が宅配員を出迎える。

「ブシュー!」

 宅配員は玉藻の前を見て鼻血を出す。

「大丈夫ですか? 少し休んで行きますか?」

 宅配員を心配する玉藻の前。

「ここはキャバクラか風俗ですか!?」

 宅配員は夢を見ている。

「あなたの生気を頂きましょう。アハッ!」

 果たして玉藻の前がネットスーパー注文したものはもやし20円なのか、若くて生きの良い人間なのか。

「ヒーハー!」

 宅配員は天国に召天したそうな。


「なんだろうな? 一話完結の4コマ風だと簡単に小話ができてしまう。怖いな。私の才能がエヘッ!」

 酔いしれるエヘ幽霊。

「コン。」

 大嶽丸の買い物編はやらないの? とコンコンは言っている。

「やりませんよ。買い物編に飽きちゃったんです。眠たくなりますしね。ふあ~あ。」

 欠伸するエヘ幽霊。

「やはり物語だ。次に行うこと、次に戦う相手が決まっている方が進行が楽なんだもの。」

 どんな物語にしよう。

「コン。」

 ドラクエ風? 時代劇風? 逆におみっちゃんが狙われる風? 逆におみっちゃんを外してみる風? 全部に侍をつける風?

「フェニックス侍? 火の侍? 不死鳥侍? 火の鳥侍?」

「ジン侍? 風の侍?」

「シルフ侍? 風の侍?」

 昔、こんなのを剣物語でやったような・・・・・・。

「騎士を侍に置き換えてしまえばいいのか?」

 和風異世界ファンタジー。

「最後に私が歌えば追われてしまうのが悪いにしておこう。1話完結の話の連続ならそれでもいいが、それでは物語になっていかない。」

 困った。

「竜玉みたいに主人公を殺して天国で修行させて、2軍で敵と戦わせるか? それで最後に主人公がやって来て倒せばいいだけだもんな。」

 おみっちゃんを歌えなくすればいいんだ。


「おお! 私が美声になっている! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアー! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 おみっちゃんは善行を積み神様が音痴ではなく美声に換えてくれた。

「ガオー! 私は邪馬台国の卑弥呼だぞ! 世界征服してやる!」

 敵が現れた。

「私の歌を聞け! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア! アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 おみっちゃんは歌を歌い出した。

「いい歌だったよ。」

 卑弥呼は気分がよくなった。

「これでは敵を倒せない!?」

 おみっちゃんピンチ!


「私が美声で女神になっちゃうのが茶店の歌姫の本分だから、別にいいんじゃなかろうか?」

 おみっちゃんが戦えない。新たなヒーローが必要だ。

「おみっちゃんを慕う? おみっちゃんの美声に虜にされた哀れなピエロたち。」

 そいつらに戦ってもらおう。

「塾? 学校? 茶店で孤児をタダで働かせよう。人手不足も解消できる! イヒッ!」

 さすが女将さんの発想。

「あれ? 私って寿退社ですか?」

 おみっちゃんはヒロイン引退説?

「あんたが音痴じゃなくなったら面白くなくなっちゃうだろ。主人公にはなれないね。」

 おみっちゃん主人公降板説?

「そんな!? 夢が叶ったら用済みだなんて!? あんまりです!?」

 人間界、魔界、天界、宇宙、全てを支配する茶店の歌姫が去る時が来た。

「潔く終わりな。ダラダラ延命するよりいいよ。」

 冷たい女将さん。

「分かりました。終わりましょう。」

 諦めるおみっちゃん。

「次回は茶店の歌姫2でお会いしましょう! エヘッ!」

 決してエヘ幽霊はへこたれない。

「侍と忍者を育てよう。」

 新しいコンセプトである。一つだけでもいいが、日本の職業といえば侍と忍者だ。二つある方が使い勝手がいいかもしれない。

「侍忍者にしようか。使い慣れているし。」

 若しくは一つにしてしまおう。


「もう私は歌が歌えなくなりました!(極度の音痴でデスボイスではなくなった。)」

 遂に歌姫になれたおみっちゃん。

「そこで私の代わりに困っている者を助ける者を育成しようと思います。」

 意外に正義感の強いおみっちゃん。

「その者たちに茶店を手伝わせれば、外食産業の人手不足を解消! 人件費も無料で済む! 正に正義と銭の一石二鳥だよ! イヒッ!」

 さすが守銭奴の女将さん。


火、天狗、提灯お化け、火の鳥、不死鳥、フェニックス、サラマンダー、イフリート

水、河童、リヴァイアサン

氷、氷河?

雪、雪女

風、

土、

天、



「なんだろうな? 妖怪を侍にするのは難しいな。」

 妖怪侍説は却下。

「やはり、歌姫おみっちゃんのファンたちがおみっちゃんを守る為に戦うが正解かな。」

 茶店の歌姫はどこに行く?

「ということは侍は人間か。悪役は妖怪。人間界に悪さをすると。悪い妖怪と戦う茶店の歌姫の侍。」

 なんか知らんがミックスしてきたな。正に混沌だ。

「何でもいいや。だって何でもありが茶店の歌姫だもの。」

 夢を見ることは誰にも自由だから。

「きっと、そこから創作は始まるのだろう。」

 がんばろう! エイエイオー!


「人間とした場合、1番の問題が名前問題・・・・・・。」

 毎回これだな。

「火の侍? これはこれで良い。火の鎧。これもこれで良い。やはり問題は名前だ。」

 火に関係する名前? 若しくはまったく関係ない名前?

「やはり何らかの火に関係する名前の方が今後が楽だろう。」

 熟語から取る?

「塾語ではなく、子供の名前から貰った方が良さそうな気がしてきた。」

 しかし火で良い名前はなし。

「進まん。」

 思考時間が長すぎて、ただ個体を識別するだけのどうでもいい名前が決まらん。


「火鬼にしよう。火の鬼、火の侍。」

 これなら氷鬼、風鬼、水鬼、土鬼、星鬼、冥鬼など、全てに対応可能。

「これ河童でも狐でも天狗でも使用可能だな。」

 火提灯お化け、水唐傘お化け、雷のっぺらぼうみたいな感じ。

「雪女。火女? 水女? 雪男? 火男? 水男。」

 もう何でもいいな。

「流れとしては茶店でバイト。困っている人がいる。助けに行く。事件解決。めでたし、めでたし。」

 ムムム? この場合、妖怪は何と戦うんだ?

「人間か。」

 悪い人間。

「侍。忍者。化学兵器。ウイルス。AIロボット。」

 やはり主人公は人間か?

「茶店御庭番衆?」

 そんな良いものはいらないな。茶店のアルバイトで十分だ。

「妖怪よりも悪い者。それが人間だ。」

 それを倒す物語? 水戸黄門的な時代劇か?


「いや、人間か妖怪かは気にしないで話を先に進めよう。」

 後でどうにでもなる。

「火の鎧? 火の剣? 火鬼?」

 人間なら名前問題で良い名前がない。妖怪なら火鬼と火の鎧、火の剣をどう絡めるか? 難しいな。

「こういう時は先に進めるしかない。」

 問題がたくさん出てくるだろう。


「ラララララアラララララララララララッラアッララララララララララララッラララ! ラララララアラララララララララララッラアッララララララララララララッラララ! ラララララアラララララララララララッラアッララララララララララララッラララ!」

 茶店で歌姫が歌を歌っていました。歌姫になるという夢を叶えたおみっちゃんです。

「おみっちゃんのおかげで毎日大行列のお客様だ。儲かって仕方がないね。音痴のおみっちゃんの夢に付き合ってやって正解だったね。イヒッ!」

 夢を食い物にする守銭奴の女将さん。

「コン。」

 油揚げが美味しいと言っているコンコン。

「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」

 新しい茶店の看板娘がアルバイトしている。

「おみっちゃん! 出てこいや! おまえにやられた恨みを晴らしに来たぞ!」

 昔、おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスだった頃にたくさんの恨みをかっている。

「俺の名前は赤鬼だ! 覚悟しろ! おみっちゃん! 音痴でなくなったエヘ幽霊など! 怖くはないのだ!」

 現れた赤鬼。

「すいません。うちの歌姫は歌い出すとなかなかマイクを離さないのでお待ちいただけますか?」

 そこに接客のバイトが赤鬼の相手をする。

「なに? 俺様に待てだと。ふざけるな! 今すぐにおみっちゃんを金棒で叩き潰してやる!」

 赤鬼は復讐に取り憑かれていた。

「そうはさせない。歌姫は気持ち良く歌っているんだ。おまえの相手は私がしてやる!」

 看板娘が赤鬼の相手をするという。

「なに? おまえが俺の相手をするだと? ワッハッハー! おまえなんかに私の相手が務まるものか!」

 赤鬼は看板娘を見て馬鹿笑いした。

「そうかい。それはやってみないと分からないぜ。」

 看板娘は赤鬼を相手に堂々としたものである。

「いでよ! 火の鎧!」

 茶店に火の鎧が現れる。

「なんだ!? 燃えている鎧が現れただと!?」

 赤鬼さんもビックリ。

「こい! 火の鎧よ!」

 火の鎧が看板娘に装着されていく。

「私は火鬼! 茶店の看板娘だ!」

 火の鎧を装備した茶店の看板娘の火鬼。

「どうなってるんだ!? この茶店の看板娘はおかしいぞ!?」

 こんな看板娘はいないとクレームをつける赤鬼。

「私は孤児だったが、ある日、歌姫に助けられたのだ。」

 軽く回想が入る。

「この子カワイイ。コンコンの遊び相手に丁度いいかも! エヘッ!」

 歌姫ことエヘ幽霊。

「コン。」

 お腹空いた。油揚げが食べたいと言っているコンコン。

「コンコンも気に入ったって。エヘッ!」

 未だに子狐の気持ちを理解できないおみっちゃん。

「仕方がないね。ただ飯はやらないけど、うちの茶店でタダ働きするならまかないぐらいは出してやるよ。イヒッ!」

 正確には女将さんが人件費削減のために奴隷としてタダ働きさせようと拾っただけである。

「そして歌姫を守る為に激しい特訓に耐えて、茶店の看板娘になったのだ!」

 茶店の看板娘になるのは非常に難しいらしい。

「こい! 赤鬼! 私が命を懸けて歌姫を守る、」 

 火の鎧を装着した火鬼が赤鬼と戦う。

「まあいいだろう。憎いおみっちゃんの前におまえを倒してやる! くらえ! 赤鬼金棒!」

 赤鬼は金棒を振り回して突進してくる。

「フッ。」

 火鬼は金棒を避けようとはしない。

「何!?」

 次の瞬間、火鬼は金棒を素手で受け止めた。

「真剣白刃取り! この場合は金棒取りかな?」

 笑っている火鬼。

「バカな!? 金棒を素手で受け止めただと!?」

 驚く赤鬼。

「こんなもの火の鎧を手に入れるための師匠の修行に比べたら屁でもないぜ。」

 赤鬼は火の鎧を手に入れるために修行したらしい。

「今度はこっちの番だ! 赤鬼! 受けてみるがいい! 私の火を!」

 火鬼は鞘から刀を抜く。

「刀が燃えているだと!?」

 火鬼の刀は火がついて燃えていた。

「私は火の鎧に選ばれし火の侍だ!」

 火鬼は火の刀を構える。

「くらえ! 赤鬼! これが私の火刀! 火斬り!」

 燃え盛る火の刀が炎が赤鬼を斬る。

「ギャアアアアアアー! 覚えてろよ!」

 赤鬼は燃えながら去って行った。

「茶店の平和は私が守る!」

 火鬼は赤鬼に勝利した。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! 歌って素晴らしい! エヘッ!」 

 歌を歌い終えて満足なエヘ幽霊。

「歌姫がいると茶店が儲かって仕方がないね! イヒッ!」

 おみっちゃんのコンサートは毎日大盛況。おかげでお茶とお団子の売り上げも伸びている。

「コンコン。」

 儲かっているので美味しい油揚げが食べれて嬉しい茶店の歌姫のコンコン。

「火鬼ちゃん。がんばって働かないと給料を下げるよ。」

 金の亡者の女将さんは厳しい。

「はい! がんばります! いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」

 火鬼の茶店の看板娘生活はつづく。

 つづく。

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