第19話 エヘッ! 19 八岐大蛇

「レジェンド・チャレンジ?」

 大妖怪になっても特にやることのないおみっちゃん。

「そうだよ。八岐大蛇とか、鵺とか、伝説級の妖怪と遊んできなよ。」

 女将さんは伝説の妖怪の名前を上げる。

「女将さんはタダ伝説の妖怪の財宝が欲しいだけですよね?」

 おみっちゃんはよく女将さんの性格を知っている。

「その通り! きっと金銀財宝をたくさん持っているに違いない! 儲かるぞ! イヒッ!」

 守銭奴な女将さん。

「私、大妖怪になったし独立でもしようかな。このままじゃ利益は全部女将さんに持っていかれるもん。」

 悪徳芸能事務所に所属しているおみっちゃん。

「コン。」

 油揚げが美味しいと言っているコンコン。

「あ、そっか。歴史上の人物って、みんな死んでるから悪霊かもしれない。そうなるとヤマトタケルノミコトとか、邪馬台国の卑弥呼とか、全員伝説級の妖怪なのよね。」

 英雄も過去の人である。

「ああ~! 怖い! 怖い! 全員と戦って金銀財宝を巻き上げろって女将さんならいうに違いない。」

 幽霊なのに悪寒を覚えるおみっちゃん。

「八岐大蛇を倒してきます。行こう。コンコン。」

「コン。」

 いち早く災難から逃げるおみっちゃんとコンコン。


「そうか。私が人間ではなく幽霊だから一般大衆は共感できないのか?」

 八岐大蛇を目指す道中にふとおみっちゃんは思った。

「コン。」

 かもねというコンコン。

「じゃあ、私の設定を人間にして、都合の良い時だけ幽霊になるっていうのはどう?」

 おみっちゃん人間論。

「コン。」

 おみっちゃんらしくていいねと言っている。

「そうなると時代劇ではなく、現代劇で私の設定は女子中高生かな。私は可愛いからセーラー服も似合います。エヘッ!」

 相当自分に自信があるエヘ幽霊。

「コンコン。」

 おみっちゃんなら大丈夫と言っている。

「コンコンは犬の代わりでペットで良いもんね。でも動物愛護法とかで狐を飼ったら引っかかるのかな?」

 コンコンはワンと鳴く。

「コン。」

 おみっちゃんの割に無い頭を使っているなと感じるコンコン。

「妖怪たちも現在の擬人化の延長で女子中高生にしてしまえばいいや。エヘッ!」

 単純計算なエヘ幽霊。

「コンコン。」

 それがおみっちゃんらしいというコンコン。

「でも今の時代劇にしろ、現代ファンタジーにしたとしても私が歌を歌ったら問題解決なんだよね。」

 オチは完璧。

「コン。」

 だっておみっちゃんが主人公だものと言っているコンコン。


「はい! やって来ました! 島根県!」

 おみっちゃんは八岐大蛇のいる所までやって来た。

「コン!」

 疲れた・・・・・・ちょっと遠いんじゃないと苦情を言っている。

「そしてゲストのスサノオさんです。」

 スサノオが現れる。

「どうもスサノオです・・・・・・って、おまえたちは何者だ?」

 スサノオが尋ねてみた。

「私は可愛いおみっちゃん。こっちがペットのコンコンです。」

 自己紹介するおみっちゃん。

「コン。」

 コンコンです。よろしくと言っているコンコン。

「ガオー!」

 八岐大蛇の叫び声がかける8倍で聞こえてくる。

「出たな! 八岐大蛇! スサノオさん! 天羽々斬剣で尻尾を斬っちゃってください!」

 おみっちゃんはスサノオに命令する。

「おお!」

 スサノオは八岐大蛇を攻撃した。

「え・・・・・・嘘ん。」

 スサノオの天羽々斬剣が折れた。

「はい! 八岐大蛇さんの尻尾から天叢雲剣が出てきます! それを私が頂きます! エヘッ!」

 ちゃっかり伝説の剣を手に入れるエヘ幽霊。

「コン。」

 さすがおみっちゃんと喜ぶコンコン。

「この剣の名前は、おみっちゃんの剣とします! エヘッ!」

 自分の音前を剣に与えるエヘ幽霊。

「この剣は布都御魂剣ともいうそうなんで、2本にしちゃいましょう。」

 おみっちゃんは剣を2本に分解した。

「二刀流おみっちゃん! 参上! エヘッ!」

 二刀流になったエヘ幽霊。

「八岐大蛇さん! 狩らせてもらいます!」

 おみっちゃんが八岐大蛇に攻撃を仕掛ける。

「パキーン!」

 剣は粉々に砕け散りました。

「使えないな。ブーブー。」

 おみっちゃんは剣士ではないので剣が上手に扱えなかった。

「ガオー!」

 反撃に出る八岐大蛇。

「どうするんだ!? おみっちゃん!?」

 パニックになるスサノオ。

「大丈夫です。私には夢があります!」

 堂々と仁王立ちするおみっちゃん。

「私の歌を聞いてください。」

 おみっちゃんが歌い出す。

「コン。」

 ちゃっかり耳栓をするコンコン。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。

「ガオー!」

 八岐大蛇はおみっちゃんの歌に耐え切れずに絶命した。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 更に歌い続けるおみっちゃん。

「またいつか戻って来るからな! ギャアアアアアアー!」

 スサノオもおみっちゃんの歌を聞いて消滅した。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! 歌って素晴らしい! エヘッ!」

 美空ひばりの様なエヘ幽霊。

「コン。」

 おみっちゃんの歌った後には草も生えないと恐怖したコンコン。

「お腹も空いたから茶店に帰ろうか。」

「コン。」

「今日は油揚げを2枚食べてもいいよ。」

「コンコン。」

 何事もなかったように去っていくおみっちゃんとコンコンであった。

 つづく。

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