桑原水菜先生の『炎の蜃気楼』 歴女ブームの先駆け作品

 学生時代にハマったコバルト文庫のライトノベル『炎の蜃気楼(ミラージュ)』。


 戦国時代の武将の霊魂が現代の人間の肉体に転生し、織田信長を宿敵に天下をかけて戦いを繰り広げるサイキックアクション。


 1巻から5巻くらいまで「戦国武将がでてきて面白い」って感覚で読んでいた。


 ところが5.5巻にあたる断章の本(『最愛のあなたへ』)で、「ん? これもしかしてBLなん?」って感じになってきて、主君(現代名は仰木高耶で戦国武将名は上杉景虎)と臣下(現代名は橘義明で戦国時代は直江信綱)の400年間のドロドロの愛憎劇におったまげ!!


 まさかコバルト文庫でがっつり性描写のあるボーイズラブストーリーになるとはっ!!


 超衝撃だった!!!


 今でいう歴女ブームの先駆けとなった作品で、このライトノベルがきっかけで聖地巡礼も始まり、作中に登場する全国の寺や史跡などを巡る女性たちが現れた。


 戦国武将たちの下剋上以上に、臣下である直江が「あなたの狂犬ですよ」と自虐的に言い、プライドの高い孤高の女王様気質の上司である景虎に欲情するという下剋上設定にドキドキした。


 しかし、途中で主人公たちが思うようにならない展開続きなのに読むのが苦しくなり、買うのをやめてしまい、つい最近完結しているのを知り(超遅いよ、私っ!!)、全巻手放してしまっていたので、最初から順番に1巻~40巻、ついでに番外編まで図書館で借りて読み直した。


 友人に「あんた全巻図書館で借りるの勇気あるよね」と嘲笑される。


 うん、確かに……。


 借りるときに、景虎の下半身に直江が顔を寄せ付けているような表紙の絵があって(11巻の『わだつみの楊貴妃中編』)、カウンターで猛烈に処理を早く済ませてくれっ!! って思ったわ(恥)


 親友に「恥ずかしいなら電子書籍で買いなさい」って笑われる……


 しかし、その親友が私の借りた本をそのまま読む。


 自分で借りろッ!!


 「20巻(『十字架を抱いて眠れ』)で高耶のロストヴァージンかー! 正直、最後まで引っ張るのかと思ってた。」


 親友の感想これ。


 おまえはエロシーンしか興味がないのかっ!!


 しかし、臣下(狂犬直江)に押し倒される孤高の女王様気質の主君(高耶)という展開に萌える……(おいっ!)


 返却の際は図書館員さんに見られないよう、時間外に返却ボックスでお返し……


 ハッピーエンドじゃない結末……


 景虎は死に、直江は生きていく。


 最高に切なすぎる……


 最後は平和になった世界で直江と景虎が穏やかに暮らす、そんな展開にしてほしかった!!


 でもこれでこそ炎の蜃気楼!!


 思うようにならない苦悩の人生。


 あっさりハッピーエンドにしちゃったら物語の重みもリアリティもないだろう……


 400年間の二人の思い。


 景虎の生き様がかっこよすぎる!!


 フィクションの小説で号泣しちゃうラスト。


 ハンパな覚悟で読めない……


 最後に番外編の『炎の蜃気楼メモリアル』を読む。


 甘々エロ展開の話で、本編ラストで号泣した心を癒す……


 学生時代、試験に絶対出やしない戦国武将名までしっかり頭に叩き込めるくらい読んだライトノベル。


 思えば、歴史が大好きになったのも、歴史の成績が飛躍的に上がったのも、日本の地理にやたら詳しくなったのもこの作品のおかげだった。


 桑原水菜先生、愛憎渦巻く壮大なスケールの歴史物語をありがとうございますm(__)m

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