氷室冴子先生の『落窪物語』 和風シンデレラストーリーに胸キュン

 『落窪物語』(おちくぼものがたり)は10世紀末頃の作品と言われる作者未詳の和風シンデレラストーリー。


 中学校の図書館で氷室冴子先生が訳したこの古典文学を読み、キュンキュンした。


 以下、盛大にネタバレしますので、これから読みたい方はUターンくださいませ。


 主人公の落窪(おちくぼ)姫は、王族の血筋を持つ母親が若くしてなくなり、継母にいじめられて、まるで使用人のような扱いを受けて育つ。


 シンデレラはひたすら掃除をしていたが、落窪姫はひたすら裁縫仕事をさせられ、着物を縫うのがとても上手。


 母が生きていた時代から仕えていた侍女の阿漕(あこぎ)が唯一の味方。


 阿漕は帯刀(たてわき)という男と結婚する。


 帯刀は将来有望な右近の少将の部下である。


 落窪姫は中納言の父を持つが、使用人のような生活をしていたので、中納言家に王族の血筋をひく姫がいるとは世間に知られていなかった。


 妻となった阿漕から、落窪姫の話を聞いた帯刀はそのことを右近の少将に話す。


 すると、右近の少将は美しいという落窪姫に興味を持ち、手紙を何度も送るが、姫の態度は素っ気なく、彼はますます夢中に。


 あるとき、中納言家の継母たちが、石山詣で(いしやまもうで 当時は旅行みたいな楽しみだった)に出かけた際に、右近の少将は落窪姫の部屋に押し入り、強行突破に出る。


 この時代の結婚は、通い婚がスタンダードで、男性が女性の家に夜3日間通い続け、最後の日に三日夜餅を食べて、婚姻が成立する。


 最初は茫然としていた姫と、右近の少将と帯刀の強引なやり方に怒っていた阿漕だったが、使用人のような扱いを受けていた姫にとって右近の少将は悪くないお相手。


 落窪姫は次第に彼に心を開き、阿漕も大急ぎで三日夜餅の準備をし、姫は右近の少将の妻となる。


 そんなことは全く知らない継母が帰ってきてからも、変わらず落窪姫は使用人として働き続け、右近の少将はこっそり姫の元に通っていた。


 意地悪な継母は落窪姫をスケベなお爺さんと結婚させようとする。


 なんとか逃げ出した落窪姫は右近の少将の元で不自由のない生活を送るようになる。


 継母は落窪姫が逃げたのを知り、裁縫上手な使用人が逃げたと悔しがった。


 まさか落窪姫が右近の少将と結婚していると知らない継母は、自分の娘を右近の少将と結婚させようと手紙を送る。


 右近の少将は落窪姫がひどい扱いを受けていたことを知っていたので、落窪姫に内緒で継母への復讐を思いつく。


 「結婚しましょう」と手紙を送っておいて、婚姻の際には自分は行かず、親戚で変わり者と悪い意味で評判の兵部の少輔(ひょうぶのしょう)を行かせた。


 継母は今をときめく右近の少将が娘と結婚するのだと思い込んでいたので、たくさんの人を呼んでいたが、実際にその場にいたのは違う婿。


 間違いだったと取り消したくても、見栄からたくさんの人を呼んでしまったので、取り返しがつかなくなり、継母の娘はそのまま兵部の少輔と結婚する羽目に。


 それからも継母の家は不運続き。


 この悪い流れを断ち切ろうと、引っ越しを思いつく。


 落窪姫の母親がかつて住んでいた場所に御殿をつくることに。


 本来、その土地は娘である落窪姫のものであるが、落窪姫は行方不明なため好都合だった。


 それを聞いた右近の少将はまた復讐を思いつく。


 土地の権利書を姫が逃げる際に阿漕が持ってくれていたことを知り、新居ができたタイミングで、この家は自分の妻のものだと伝えたのだ。


 継母は右近の少将の妻が落窪姫だと知ってビックリ!


 「さてはこれまでのひどい仕打ちは落窪姫の仕業だったのか!」と怒り爆発。


 しかし、心優しい落窪姫は夫がそんな仕返しをしていると知ってビックリ!


 母が住んでいた家に数日泊まらせてくれたらそれでいいのだと言い、その家は父親や継母に渡し、夫である少将と元の家に戻って終わり、というストーリーである。


 これまで苦労してきた落窪が幸せになり、継母は自分の行いを反省するという読み終わった後のスッキリ爽快感が堪らない!


 難しく感じる古典文学が、氷室冴子先生の手にかかると、イマドキな感じの胸キュン小説ちっくに読みやすく仕上がっていて、図書館で何度も読んだ本だった。


 氷室冴子先生、古典文学をドラマティックに表現してくださってありがとうございますm(__)m


【素敵なコメント】


北浦十五様


ホントにシンデレラにそっくりでビックリですね(^^♪


この落窪物語の他にも中国の唐の時代に「葉限」などの類話があるそうです。

古くから世界の広い地域に伝わる民間伝承みたいですね。


氷室冴子先生って聞いた事あるなぁ、と思って調べてみましたら、

ジブリのアニメ作品「海がきこえる」の原作者でした!

この「海がきこえる」はジブリの作品では1番マイナーですが、

私は大好きなのです(^.^)

きっと「落窪物語」もとても繊細でステキな文章なのでしょうね(*^^)v


それでずっと調べていったら2008年に肺癌で死去・・・・・。

まだ51歳でした(>_<)


氷室冴子先生のご冥福を心からお祈りいたします。


(北浦十五様)


北浦様のコメント、毎回教養と知識の宝庫で素敵で本文に掲載させてくださいm(__)m


コバルト文庫の氷室冴子先生、めっちゃ大好きでした♡

『なんて素敵にジャパネスク』、『ざ・ちぇんじ』、『金の海 銀の大地』どれもファンでしたm(__)m


いつも素敵なコメントありがとうございますm(__)m

心より感謝をこめて♡


黒川蓮

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