ガストン・ルルー先生の『オペラ座の怪人』 愛を知らない男の狂気の恋情
『オペラ座の怪人』を読んだとき、ブサメンの狂気の恋に震えた。
この小説は、ブサイク男エリック(怪人)と若きオペラ歌手クリスティーヌとラウル子爵の三角関係のお話。
ざっくりあらすじ。
毎度のごとく盛大にネタバレしますので、これから読みたい方はスルーください。
主な登場人物はこの3人
オペラ座の怪人(エリック)・・・オペラ座の地下の水路の空間に住み、天使の歌声を持つ、仮面をつけたブサメン。クリスティーヌを愛している。
クリスティーヌ・・・自分の楽屋から聞こえてくる天使の歌声(天使だと本気で思い込んでいたが、実はエリック)のおかげで若きオペラ歌手として成功を掴み始める 
ラウル子爵・・・クリスティーヌに恋をする幼馴染
【内容】
パリのオペラ座には怪人がいるという噂があり、そんな折に大道具係が首をつって死んでいるのが発見される。
その頃、病欠したオペラ歌手の女性の代役として舞台にたったクリスティーヌが拍手喝采、鮮烈なデビューを飾る。
それを見ていた幼馴染のラウルは彼女に恋をする。
公演後、周囲に「一人になりたい」と言ったクリスティーヌ。それをラウルは「僕と二人きりになりたいからかな」と勘違い。
クリスティーヌの楽屋に行こうとするも、部屋からは恋人同士のような会話が聞こえ、ラウルはショックを受ける。
しかし、部屋から出てきたのはクリスティーヌだけで他に人がいないという不思議。
この時期、オペラ座は支配人が変わった。新支配人は、旧支配人から引き継ぎの際に「オペラ座の怪人へ高額の給料を支払うことと、5番ボックスは怪人専用」という規定があることにビックリ。
さらに怪人はクリスティーヌを起用することを要求。
「そんなこと知るか!」と思った新支配人は怪人の要求を無視して、別の女性を舞台に立たせるが、その女性が大失態をするだけでなく、シャンデリアが落ち、一人死亡、多数の怪我人を出す大事故に。
怪人の仕業だとみんな怯える。
その頃、クリスティーヌはラウルと親しくなり、自分の楽屋にいつも音楽の天使がやってきてくれることを打ち明ける。
次第にラウルは天使の歌声に嫉妬し、正体を突き止めたくなる。
その音楽の天使だと思っていた怪人にクリスティーヌは誘拐され、オペラ座の地下に閉じ込められる。
怪人はエリックと名乗り、二人は数日過ごす。
クリスティーヌは怪人が常につけている仮面を剥ぎ取ると、何とも言えない醜い顔にショックを受ける。
素顔を見られたエリックはクリスティーヌを永遠に自分のものにしたいと妻になることを要求。
クリスティーヌは裏切らないから地下から出たいと彼に言い、彼からもらった金の指輪をつけて出ていく。
が、その後も地下に通う。
クリスティーヌから怪人のことを聞いたラウルは二人で逃げようと言うが、クリスティーヌは自分のことを愛し、信じてくれているエリックのことを思うと簡単に裏切ることができない。
最後にもう一度だけエリックのために舞台で歌ってから逃げたいと言う。
しかし、それを盗み聞きしていたエリックは嫉妬でメラメラ。
そして、これが最後と歌い終わった後、ステージが突然暗くなり、クリスティーヌは再び怪人に誘拐される。
それを追いかけるラウルの前に、怪人の過去を知る謎のペルシャ人が現れ、クリスティーヌの楽屋の鏡からオペラ座の地下につながる道を教えてくれる。
進むと、クリスティーヌと怪人エリックの声が。
二人は隠れていたが、エリックに気づかれ、さらに地下へ逃げる。
地下には大量の樽があったが、中身は水ではなく火薬。
エリックはクリスティーヌが自分を受け入れてくれないのであれば、オペラ座ごと爆破しようと計画していた。
エリックは、ラウルとペルシャ人を地下に水を流して殺そうとするが、クリスティーヌはエリックと生きて結婚すると誓い、ペルシャ人は外に出され、ラウルは人質になる。
怪人はクリスティーヌの額に生まれて初めてキスをする。
クリスティーヌは逃げずにそれを受け入れる。
醜い顔に生まれ、母親にすら愛してもらえなかったエリックは感動の涙を流し、クリスティーヌも一緒に泣く。
ここ私的に、最上級にキュンキュンですっ!
クリスティーヌもキスを返す。
初めて愛を知ったエリックは、ラウルとクリスティーヌを許し、二人は結婚することに。
怪人はペルシャ人に自分の死亡を新聞社に伝えてくれと頼み、彼の死後、クリスティーヌはエリックを埋葬し、彼からもらった金の指輪を一緒に埋めて、物語は終わる。
醜い容姿に生まれ、母親からも可愛がられず、愛を知らずに育った男が愛する女性とのキス一つで心が満たされて改心するというストーリー。
現実には、人を殺すことを何とも思っていない犯罪者が、キス一つで簡単に更生できるかは微妙だが。
でも犯罪者に共通する特徴は「幼少期、親の愛情を知らずに育ち、愛情不足で自己肯定感が低い」という点だとテレビで心理学者が話しているのを見たことがあり、この小説はオペラ座のミステリーの謎解きとともに、人間の本質も描いている壮大な物語なのかもしれないと思った。
親に愛されたことのない人は人の愛し方がわからない。
私はこのオペラ座の怪人を小学生の頃に、学校の図書館で読んだのだが、一番胸キュンのファントムとクリスティーヌのキスシーンが児童書だからかカットされていて、いまいちなぜクリスティーヌたちが解放されたのかよくわからず、あんまり面白くなかったという印象で終わった。
そして大学生のときに再び読んだのだが、ここでようやく面白さがわかった。
でも、ファントムとクリスティーヌのキスシーンは活字だからこそ想像力を掻き立てられて感動するのであって、実写の映画やミュージカルでファントム役を設定通りのブサメンが演じると、お客さんが入らなくて、ビジネスとして成り立たないかもしれないなぁとちょっぴり思ったりもするのであった。
醜い顔のせいで愛を知らずに生きてきた男が好きな女のキス一つで満たされるこの物語。
ガストン・ルルー先生、愛されない男の狂気の恋情を描いてくださってありがとうございますm(__)m
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