ジェフリー・アーチャー先生の『ケインとアベル』 人生、誰に助けられるか分からない
『ケインとアベル』を読んだとき、衝撃のラストに震えた。
(ネタバレするのでこれから読みたい方には全くおススメしませんm(__)m)
1906年、ポーランドに生まれたヴワデグは貧しい罠猟師に拾われて実の子のように育てられ、成績の良かった彼はロスノフスキ男爵の息子レオンの学友として城で教育を受けるようになる。
彼は戦いによってロスノフスキ男爵や親友のレオンはじめ全てを失う。
ヴワデグには乳首が一つしかないのだが、実はロスノフスキ男爵も同じ身体的特徴があり、幽閉生活で死を前にした男爵はヴワデグは自分の息子であると確信し、ロスノフスキ家の全てを譲ると宣言して、美しい銀の腕輪を譲る。
彼はその後、ソ連軍の侵攻で強制収容所に連行されるが脱出に成功しアメリカ移民となり、実父の形見である腕輪に刻まれた「アベル・ロスノフスキ男爵」を名乗るようになる。
アベルはホテルで働き始め、学校にも通い、めきめきと頭角を現して、ホテル経営を学ぶ。
一方、アベルと同じ日にアメリカで生まれたウィリアム・ケインは銀行家の家に生まれ、苦労人のアベルと真逆で何不自由なく育ち、生まれながらの上流階級の御曹司。
ケインは子供の頃からお金の儲け方、株の運用を学び、中学校から親にお小遣いをもらわず自分でやり繰り。
彼はタイタニック号の事故で父親を亡くした後、アメリカ有数の銀行の頭取となる。
アベルはその頃、ホテル経営者の師匠が大恐慌で銀行からの融資を打ち切られ自殺し、そのホテルを引き継いだものの自身も窮地に追い込まれていた。
ケインに融資を頼むが、彼にきっぱりと断られたことを恨みに思い、いつか復讐してやると心に決める。
その後、ホテルの経営を立て直したアベルはケインへの復讐を開始し、ケインも応戦する。
さらにアベルの娘とケインの息子が偶然にも出会い、駆け落ちすると二人の仲はますます悪くなる。
最終的にアベルの復讐は成功し、ケインは経済的に破滅し、死ぬ。
ケインの死後、アベルが若かりし頃、経営が窮地に追い込まれたときに助けてくれた人物が誰であったのかを知る。
それは復讐し続けたケインだった。
彼は銀行の頭取として、いかなる受益者にも家族信託の投資を知らせてはならないという信託証書の条項に違反するという理由でアベルを救済したのが自分であることは言わなかった。
アベルの才能を誰よりも高く評価し、先見の明でアベルに個人的投資を行ったのはケインだったのだ。
最後に駆け落ちした二人の子供から生まれた孫の名前がウィリアム・アベル・ケインなのに号泣した。
この物語を読むと、案外アテにしていた人が全くアテにならなかったり、意外な人物が自分を助けてくれたりして、先入観や思い込みの怖さを思い知った。
フラットな目線で人と付き合うということがいかに難しいのか、そしてそれが大事なのだということを読んで感じたのだった。
人生、誰に助けられるのか分からないと思うと、誰とでも感じよく接することができる人間になりたいと思った。
ジェフリー・アーチャー先生、壮大なサーガをありがとうございますm(__)m
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