ケース1 エピローグ
「「かんぱーい!!」」
王城から事務所に戻った俺とアンナは、そのまま打ち上げを始めていた。
ちなみに2人とも飲んでいるのはジュース。
俺もアンナも酒はあまり好かないタイプなのだ。
「いっやー疲れた疲れたぁっ!」
「お疲れ様ですカムイさん」
「まったくだよ!ヘタレ野郎が意外にも成長したかと思ったらノロケ野郎になっちゃうわ、令嬢の1人が放逐されるのを目撃するわ」
実に色々あった1日だった。
「なかなか愉快な1日でしたね。私も久しぶりにカイン殿下に会いたかったです」
「まぁそう言うなって。今度会うときは連れてってやるからよ」
アンナはカインのヘタレっぷりが大好きなのだ。
そりゃそうだろう?
思いを伝えずに1年もグズグズしてたらあっという間に思い人が知り合いと婚約していたのだ。
これ以上の喜劇を知っている奴はそう多くはない。
俺はどうなのかって?
もちろん知っているさ。
なーに。こういう仕事をしていると色々と面白いもんやら悲しいもんやらを見ることが出来るのさ。
「それよりカムイさん?」
「ん?」
「ソフィア嬢の元婚約者であるムストル殿はどうなったのですか?」
あーその話ね。
「ムストル殿は公文書偽造で廃嫡された事になっている。だがまぁそれだけで済むとは思えないな。公爵家へのご機嫌取りとして、もう一波乱起きるだろうよ」
「何故機嫌を取る必要が?既に勘当されたとはいえ、セリスも同じ罪を犯していたのですよ?両犯罪者共に処罰が下されたのですから、それで良いのでは?」
確かに、後半についてはそれで片がつくだろう。
だが問題は前半だ。
「いや、そっちじゃない。ソフィア嬢との婚約を勝手に破棄したことの方だ」
「あぁ、なるほど」
「どうなるかはまだ分からないが、まぁ最悪の場合はムストルの奴隷落ちだろうな」
「そんなにですか?」
「最悪の場合の話だよ。とはいえ、公爵家から言い出した縁談の話を息子が勝手に反故にしたんだ。親としては、そして辺境伯家の当主としては自らの潔白を示して公爵家と良い関係・・・は無理だろうが、それでも関わりを持っておきたいはずだろう」
全ては愚かな息子が勝手にやらかした事。私は一切関係しておりません。その証明に息子を奴隷として差し上げますので、どうかこれからもよろしくお願いします。
そういう可能性は十二分にある。
「なるほど。そういうものなんですね。面倒な人種ですこと」
「ふっ、言ってやるなよ。まぁ親父さんからすればとんでもない流れ弾だったかも知れないが、ひょっとしたら辺境伯家総出の企みだったかもしれんしな」
だが俺はその線は無いだろうと考える。
「でも俺はそういう話を聞いていない。当主サマはそういうタイプの人間じゃ無いだろうしな」
「となるとこの件はまだ全部解決したわけじゃ無いんですね」
「そうだな。だがもう俺達の出る幕は無いだろ。今回もしっかりと口止めはしておいた。それだけさえ徹底していれば、俺達の仕事はバッチリだ」
俺達は知る人ぞ知る組織なのだ。
俺達に頼み込めばより良い家に嫁げるなどと思われるのはたまったもんじゃない。
だから俺達は必ず仕事が終わった暁には、周囲への口止めを必ず行っているというわけさ。
「そうですね。しかしカムイさん?」
「なんだね?」
「これが次のリストです」
そう言ってアンナは名前がズラーーっと並んだリストを俺に見せる。
これが何かって?
そりゃもちろん。
「・・・・・・・・・はぁ。このリストに記載されてる人間全員が婚約破棄の危機にあるって・・・・・・この国大丈夫なのかぁ!?」
俺らの#次のクライエント候補__・__#の皆様の一覧だよ。
そして俺はいつものあのセリフを吐く。
「ったくよぉぉぉぉぉ!!どうしてこの国の貴族はこんなに婚約破棄したがるんだぁぁぁぁ!!」
この時の俺達は思いもしなかった。
まさか俺達が魔法貴族同士の陰謀に巻き込まれるなんて。
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