第5話
「カムイ様の・・・伝手・・・・・・?な、なんですかそれは。どうして平民のはずのカムイ様が王城に入れる伝手などを持っていると言うのですか!?」
そうカッカしないでくれよセリナーゼさんや。
気持ちは分かるけど、主人の目の前だぞ?
「セリナーゼ、落ち着いてください。確かにカムイ殿の仰っている事は理解できませんが、この様な事を仕事にしている方なのです。もしかしたら他の貴族の方々との面識もあるのではないでしょうか」
おぉ。ソフィア嬢が随分と冷静な分析をしてくれている。
落ち着いたどころか、だいぶ頭の回転が早い。
そんなソフィア嬢の言葉を受けて、セリナーゼさんも落ち着いてくる。
「お、お嬢様の仰る通りですが・・・しかし、それだけで王城に直接参上できるのでしょうか?事前の報告無しに王城に直接入る事は、公爵家当主であるお父上ほどの格があってようやく認められる事です。それが・・・・・・・・・」
「まぁまぁ良いじゃないですか。企業秘密ですから、そこら辺はあまり探らないで頂けると有り難いんですがねぇ」
そうだ。あまり深く探られると俺の正体がバレかねん。
詮索はほどほどにして貰えるとお互い余計な事を知らずに済むのさ。
「そ、そう言われましても・・・」
「ほら、そんな事よりもそろそろ出ますよ。ソフィア嬢とセリナーゼさんは公爵家の馬車にお乗りください。我々の馬がそれを先導致しましょう」
「しかしカムイ殿、警備の兵達はどうすれば?」
公爵令嬢が市中に繰り出すというのに、お供の兵がいない訳がない。
彼等は屋敷の外で待機して貰うように、ソフィア嬢が来た時に伝えてある。
我々としては当然の措置である。
あんなムキムキマッチョ共が大挙して我らのボロ屋敷に突入した日には、床に穴が開くどころか屋敷がそのまま崩落しかねない。
我が事務所であるこのボロ屋敷は外観だけは立派だが、中身はその名に違わぬレベルのボロさな訳さ。
結果、どうにか彼等を説得して最終的には外で待機して貰うようにソフィア嬢から命令してもらった。
彼等は不承不承と言う様子ではあったが従った。そして彼等は去り際に思いっきり俺を睨みつけながらこう言った。
「分かっているな?」
俺はニッコリしながらこう答えたさ。
「もちろんだとも」
いやはや大人の余裕のある、俺らしい返事だ。
震えてなどいなかったさ。
ただ、今日はどうやら地震があったようで、返事をするときに酷く膝が揺れていた。
それに、最近は気象もイカれているようだ。
頭部は異常に熱くなったのか大粒の汗をかいていたが、背中は寒かった。
いやぁゾクッとする寒さだったね!
天も地も今日は調子が悪いようだが、まぁそういう時もあるだろうさ!
そんな大人な俺の余裕な対応よりも、これから再会するムキムキマッチョ達の扱いについてだが、既にそれは決めてある。
「まさか彼等をここに置いて公爵令嬢を連れ回す事など出来ませんから、彼等には全員ついてきて貰う事にしましょう。あぁ、ソフィア嬢がお越しになった際に乗られていた公爵家の馬車やらその御者やらも一緒です。全員で登城致しましょう」
警備の兵達にこう言ったと仮定してみよう。
お前らはここで待て。その間に俺は令嬢殿を連れ回す。
・・・・・・・・・殺されそう。
言える訳がないさ。いくら余裕のある大人な俺でもそんな事を言える訳が無い。
だから彼等についてきて貰う以外に選択肢は無いのだ。別についてこられた所で何の問題も無い。どうせ彼等は王城には入れず、その前あたりに留め置かれるだろうし。
「わかりました。彼等には私から話しておきましょう」
「おや、ソフィアお嬢様。良いのですか?」
「何がです?」
「私から話しておくことも出来ますが?余裕のある大人な私にとってはそのくらい朝飯前ですよ?」
・・・変な目で見られている。
うん?俺は何かおかしいことでも言ったか?
それを聞くよりも先にソフィア嬢が口を開いた。
「はぁ・・・どうして殿方ってこういう・・・・・・良いんです。私から話しますから、カムイ殿は王城に向かう準備をしておいてください」
ソフィア嬢の言葉を聞いた俺は不思議な感情のまま、屋敷の扉を優しく開けた。
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