第3話
「ソフィアお嬢様のお気持ちは痛いほど理解できます。婚約者を奪った姉は確かに許せないでしょう。またそんな姉に籠絡されてこれほど魅力的なお嬢様との婚約を保護にした元婚約者への報復を願うのも当然でございます」
俺はヨイショに抜かりない男だ。貴族を相手にするならこれぐらいは出来なくては。
それに、心象をよくしといた方が頂ける報酬も・・・・・・・・・カネの話はやめとこうか。
それよりもソフィア嬢だ。
「しかしお嬢様?」
「何かしら?」
「ソフィアお嬢様がそんな姉と下らない男にわざわざ報復するよりも、もっと楽しいことがございます」
「・・・それはどういう事かしら?私にこのまま泣き寝入りしろという事かしら?」
ソフィア嬢が怪訝な顔つきをする。
だがそのリアクションは俺の想定内だ。
「いいえ。そういう事ではありません」
「ならどういう事かしら?」
「簡単な事でございます。ここは婚約破棄令嬢救済所。報復をする場所ではございません」
「ではどうやって私を救済してくれるというのかしら?」
良い反応だ。
ソフィア嬢が食いついて来たのを見て、俺はニッコリしながらその質問に答える。
「私達の業務は婚約破棄されてしまった令嬢が、その後の新たな幸せを手にする為のものでございます」
「それはつまり?」
「そうですね・・・元婚約者のお名前をお伺いしても?」
今から紹介しようとしているあの方はこの王国でトップに近い人物だ。
そんな人物よりも格が上の人間と婚約をしていた、などとは考えにくいが、元婚約者が誰なのかは確認するべきだ。
「セルランズ辺境伯家の長男、ムストル・セルランズ殿でしたわ」
辺境伯。上から数えて侯爵に継ぐ3番目に偉い爵位だ。
与えられる領地は国の境界に近く、田舎貴族などと馬鹿にされることもあるが、それは大きな間違いだ。
国境付近の警備を一手に引き受ける故、相当の権力を有している。下手すればその重要度は侯爵よりも上なのだ。
だが、今から紹介する相手よりは余裕で格下だ。
俺は今回の商売が上手くいきそうな確信を得て、ニンマリとする。
「か、カムイ殿?」
おっとしまった。
突然ニンマリしてしまった俺を見たメイドのセリナーゼさんが怖がっている。
クライエントの前で突然の変顔はまずかったな。
そう後悔する俺だったが、アンナが助け舟を出す。
「ご安心ください、ソフィアお嬢様、セリナーゼさん。カムイがこの様な表情をするのは間違いなくクライエントを幸せに出来ると確信した時だけでございます」
うーむ。さすがは我が優秀な助手様である。
せっかく迎えに来た助け舟に乗らない選択肢など無い。
俺はアンナの言葉に続く。
「そ、そういう事でございます。さぁ!ソフィアお嬢様!」
「な、なんですの?」
いきなりニンマリしたり急に大きな声を上げる俺に対してソフィア嬢は完全に引いてるが、俺は気にせず続ける。
「しょうもない辺境伯家の長男坊なんかよりも、もっと素晴らしい方と幸せになる時ですっ!」
ーーーソフィア嬢は次女であるが故に貴族ランクが幾分か下の辺境伯家に嫁ぐ所だったが、既にその婚約は破棄された。
「もっと素晴らしい方?」
ーーーだが次女とはいえどソフィア嬢は公爵家の御令嬢だ。すぐに次の縁談が舞い込むだろうが、俺達はより良い話を持っている。そう、公爵家の令嬢ならばあの方との釣り合いは十分に取れている。
「えぇ、そうです!」
ーーーそれどころかあの方の願いが思わずして叶うのだ。それはつまり、
「さぁ!我らが王国の第二王子殿、カイン殿下に会いにいきましょう!新たな縁談をカイン殿下と結ぶ時が来たのです!」
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