第1話 一目惚れ
クロニカ王国。僕が元いた国の名前。表向きには、華やかで誰も不自由ないように見える。しかし、奴隷制度がまだ残っている国でもある。一回、勇者たちに連れられて見に行ったが、環境は劣悪。全員やつれている。しかし、勇者はそれを見ながら笑っていた。つくづく気持ち悪い。
奴隷は多種多様で魔族以外はほとんどいた気がする。魔族は従わないので使い物にならないと勇者は愚痴っていた。
やっぱりクソだなー。と思いながら、道のど真ん中を歩いていると、
グギャァァァ
うるさいな。嫌な思い出を思い出していると、大きな竜車にぶつかりそうになる。
「ガキ、邪魔だからどきやがれ。轢くぞ。」
ガラの悪そうな巨漢が俺を見下ろす。
「悪いな。どくよ。」
そう言いながら、道の端による。しかし、竜車なんて久しぶりに見た。
竜車とは、リザードドラゴンと呼ばれる、羽のない竜を一匹又は、二匹を前に配置して、引かせる。しかし、この世界にも馬車はある。竜車を使うのは重たいものや早く着きたい場合に限る。だから、珍しいのだ。そして、竜車はよく、犯罪にも使われる。
いつもなら勇者がいて、見逃すしかないが今はいない。まずは、中を確認する。
<魔力探知>
ふむ、人が4人と、この反応は...エルフだな。だが、魔力反応が弱すぎる。わかりづらいもんだな。
魔神王なのに助けるって変な感じだな。
国に入られる前に止めなくてはね。
そして、地面を蹴り、竜車の前に出る。
「チッ」
「おいおい速度を落としてくれよ。死んじゃうだろ?」
そう言いながら、結界魔法を起動し、強制的に止める。中がぐちゃぐちゃにならないように、中の時間を止める。
<時刻魔法>
ありゃりゃ。竜がとてもグロッキーになっちゃった。治さなくちゃね。
<回復魔法>
よし、完璧。
「今、竜車を置いて、去ったら命は残してやろう。早くしてくれ。待つのは苦手なんだ。」
「調子乗ってんじゃねよ。クソガキがよ。やっちゃってください。魔法使いさん。」
「任せろ。」
影から出てくる。潜伏魔法かなんかかな。
「嫌だねー。魔法使いは。手を引いてくれよ。怪我することになるよ?」
「なにかと思えば無能な魔法使いじゃないか。追放されたか。正義のヒーローはおまちじゃないんだよ。」
久しぶりに聞いたな。僕はギルドなどで無能な魔法使いと言われていた。確かに正義のヒーローではないね。でも、僕は強いよ?
「本気で行くよ?死んじゃっても怒らないでね?」
「減らず口が」
そして、杖を取り出し、魔力を込め始める。
ちなみに、大鎌は収納魔法に直している。つまり、丸腰も当然。だけどね。僕は、魔神王だよ?
手を前に出し、力を込めて握る。
ブシャァァ
魔法使いは口から血を出し、倒れる。
心臓を潰したからね。仕方ないよ。
でも、僕の逆鱗に触れたんだからね。
<回復魔法>
「は?」
生き返った魔法使いは素っ頓狂な声を出す。
「どうだい?一度死んで見た気分は?」
「ひっ。」
恐怖で体が震えている。死の痛みはあるからね。でもね、そしてまた、手を前に出し、握る。
ブシャァァ
<回復魔法>
拳を握る。
ブシャァァァ
<回復魔法>
・
・
・
・
・
20回目くらいだろうか。痛みと恐怖で心が壊れ、廃人のようになっていた。
治してあげるか。
<回復魔法>
「おい。大丈夫か?こうなりたくないなら、最低でも、俺の前でやるな。次は、本当の死を与えるからな。」
それだけ言うと、もう興味はない。魔法使いも俺に関わりたくないのだろう。とっとと、転移魔法で帰っていった。
さて、竜車の男は、いない。逃げたか。まぁいい。そうして竜車の荷台の扉を開け、中を確認する。手錠で繋がれている。その手錠を破壊し、全員を解放する。
「運び屋の男と、魔法使いは帰った。お前たちは自由だ。家があるなら帰るべきだ。」
「ありがとう。だが、金がない。どうしようもないんだよ。」
中年の男がそういう。皆が頷く。代表か何かだろう。
「お前は信用に値するか?」
皆が首を縦に振る。エルフ以外は。
「わかった。では、金を渡そう。それで準備ができたら、家に帰るといい。」
そう言い、収納魔法を起動する。金、金、金。あった。
約200000マーネ
人一人養えるレベルの金だ。
「この金をお前に渡す。全員で使ってくれ。じゃあな。」
金を渡すと、何度も礼を言いながら、去っていった。さて、エルフの方は、
俺は驚愕した。可愛すぎる。欲しい。欲しい。欲しい。
「ねぇ、君、僕についてこない?」
そのエルフは顔を上げ、顔が強張る。
「人間は信用できない。」
それだけ言うと、突き放すような視線を向けてくる。
「僕、人間に見えてるの?」
「当たり前。」
まじか。さすが僕。高性能すぎない?
まぁ、正体バラしてもいいでしょ。かわいいし?
「僕ね、魔神王なの。」
「は?」
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