友よお前に別れを言いに来た!

月詩

第1話

 これは高校生最後の一年その夏の頃の話だ。


 俺と裕貴は小学生の頃からの親友で休みの日なんてないくらい遊んでいた。


 高校生になっても変わらず俺たちは親友という枠を超えた友情を持っていたのかもしれない。 


 今となっては忘れられない宝物のような日々だった。


 そんな、ある日のことだった。


 「……いま、なんて言った?」

 「だから、夏休みが終わったらアメリカへ引っ越すんだよ」


 9年間の親友からとんでもない冗談を聞かされた。


 「裕貴、冗談もいい加減にしろよ! 俺、そんな悲しいこと聞きたくないよ」


 仕方ないなぁーとばかりにため息をつく裕貴。


 「残念だが冗談じゃないんだ。俺はアメリカに引っ越す」


 その真剣な眼差しに俺は冗談じゃないことを悟った。


 「なんで、なんでアメリカに引っ越すんだよ! まだ、秘密基地も完成してねえし! まだ、一緒に成人式を迎えられてない!」


 その言葉にたまらず裕貴も言い返してきた。


 「お、俺だって悔しいよ! まだ、お前と離れたくねえ! でもな大人の事情っていうやつはどうしようもねえよ」

 

 その言葉に二人で泣き出した。


 長年一緒にいただけ俺たちの絆は強く結ばれ、いつしか自分の片割れのような存在になっていた。


 そのまま、日が暮れるまで二人で泣いて僕達は話し合った。


 「なあ、俺たち大人になったらどんなやつになってると思う?」


 いきなり、そう、裕貴は聞いてきた。


 「俺にもわかんねぇよ。たださ、俺たちは大人になっても一緒だといいなとは思ってたよ」

 

 その言葉に裕貴は__。


 「一緒になれるさ。絶対に……よし、決めた」


 覚悟を決めたように空を見上げる裕貴。


 「お前が寂しくないように空から見守ってやるよ」


 その言葉に何を言っているんだと、わけがわからなくなる。

 

 「宇宙飛行士になる。そうすればこの広い空を見上げたら俺がいるんだ。そうなれば寂しくないだろ」

 

 ニコリと笑う裕貴。


 その言葉に呆れた。彼は俺のために宇宙飛行士になるなんて馬鹿なことを言うやつだった。


 俺の不安は杞憂だったな。


 そんなやつが俺を忘れるわけ無いじゃねえか。


 「だから、少しの別れだ」


 「ああ、俺頑張ってみるよ。裕貴いない分、支えられてきた分」


 「ああ、忘れるな。俺たちの心はいつまでも繋がっている。だから忘れないでくれ!」

 

 そうして、夜は明けていく、一人は希望、一人は夢へ進んでいく。


 彼らの物語はありふれたものなのかもしれない。


 だが、彼らは生涯の友となるだろう。

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