妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです

香木あかり

一話 我慢の限界

妹のティナが私の婚約者を狙っているのは、気づいていましたの。


だから色々準備してきました。もう我慢しないことにしたのです。


ティナのことだから、今日だと思っていましたわ。今日はあなたの成人を祝う日ですものね。


「私、エドガー様と結婚したいです……。急にこんなこと言い出してごめんなさい。でも……でも、ずっと好きだったんです!サラお姉様、私からエドガー様を奪わないで……お願いよ」


ティナが涙を流しながら訴えてきた時、私は思わず吹き出しそうでした。


どの口が「奪わないで」なんて言っているのかしら?エドガー・グレアム様は私の婚約者なのですけれど。




ティナは小さい頃からいつも私のものを欲しがって、全て奪っていきました。お菓子やおもちゃを取られるくらいなら、可愛いものです。化粧品やカバンですら日常茶飯事でした。


友人からもらった誕生日プレゼントやドレスを奪われた時には、さすがに我慢なりませんでしたけど。


でも、どんなに抗議しても無駄でした。ティナが弱々しくお願いや謝罪をすると、たちまちお父様もお母様もティナの味方になってしまうのです。


「お姉様、私これが欲しいの……わがまま言ってごめんなさい。でも……」


「ティナが可哀想だろう?譲ってあげなさい」


「サラはお姉さんなんだから、少しは我慢しなさい」


ティナもお父様もお母様もいつも同じことを言うわ。いい加減聞き飽きましたの!




エドガー様との婚約の話が出て、ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?


……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。




私が黙り込んでいると、ティナが話し続ける。


「エドガー様は公爵家のご子息ですものね、家同士の繋がりが大切なのはわかっています。でも、それならお姉様でなく私でも同じですよね?ねぇお父様、お母様、私でも構いませんよね?」


「そうだな、グレアム公爵からは、うちの娘と婚約させたいと言われていただけだ。ティナでも問題ないだろう」


「そうね、サラにはまた別のお相手を探してあげるわ」


いつものパターンです。やっぱりお父様もお母様も、ティナの味方をするのね。分かってはいたけれど、婚約の話でさえ私の気持ちは無視されるのですね。


今まで家族だと思っていたから、ずっと我慢をしてきたのです。けれどこの三人は、私のことを家族だと思っていないようです。




だからもう我慢する必要ありませんわね。私はこの家を出ていきます。


この没落寸前の家を。


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