07 少しの勇気

 写真を撮り終えて帰宅する人がちらほらといる中で、二階にいるクラスメイトを見上げて話をしているあんちゃん。周りには誰もいないため、さっきから躊躇ためらっていた私でも行けそうだ。なにより、今を逃したらもう帰ってしまうかもしれない。


「杏ちゃん、写真撮ろ!」

「いいよ~」


 スマホのカメラを起動させ、自撮り用に設定を変えていく。機種を変えたばかりで思うようにいかず、時間がかかってしまう。


「ごめんね、不慣れで……。」


 準備ができると杏ちゃんの右側に立ち、内カメラにしたスマホを縦にして持った。


「さん、にー、いち――。」


 二回連続したシャッターの音が辺りに響く。


「ありがとう~。あのね、杏ちゃん大好きだからさ、会えなくなるの寂しい……。」

「ふふっ、あとで写真送って。」

「うん、もちろん!」


そう言って軽い足取りで教室に戻った。これでようやく帰れる、と――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る