01 席替え

 久しぶりにやってきた、席替えの時間。一列目なら、早い者勝ちで自由に選ばせてくれる。大半が後ろの席を賭けてくじ引きを待つのだが。


 私は決まって廊下側の一番前の席を選ぶ。授業中に先生に話しかけやすく、かといって視界に入りにくい。端っこだから、クラスを見渡すことだってできる。高校二年生の夏に見つけた、最高の席なのだ。


「さて、新しい座席が決まったな。移動開始――。」


 先生の合図により、教室が騒音で満たされた。重たいリュックが乗せられた机を引きずり、見慣れた景色に胸をなでおろす。左には皐月さつき、その後ろには芹那せりながやって来た。奇跡的にいつものメンツが集まったのだ。皐月からの「うるさくなるね」という目に、頷きで返した。


 皐月の更に左を見ると、あんちゃんが眠たそうな目で頬杖をついていた。誰にでも優しくて、頭が良い。去年から同じクラスになってはいたけれど、話したのは数回だけ。私には程遠い存在の杏ちゃんがどんな子なのか、ずっと気になっていた。


 次の席替えまでに仲良くなれたらいいな……。

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