夕日が沈まないように

山崎香澄

プロローグ

 夕日に照らされ、風が吹く度にさらさらと揺れる、茶色く短い髪。あんちゃんは廊下に突っ立って、まっすぐにどこかを見ていたらしい。時間を放置して作り出された美しい世界と何度も見たはずの横顔に、ひと目で引き込まれてしまった。


 らしい、とにごしたのには理由がある。教室で片付けをしていた私からは、視線の先にあるものが見えなかったのだ。


 でも、それが何なのか、私は知っている。確かにあの瞳は、恋をしているときのだった――。

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