第8話 受験期の冬
私には弟がいる。その弟は頭が良くて運動ができるよく出来た子。そんな弟とよく比べては落ち込んでいた。「なんで両親と弟はよく出来た人なのに私はこんなにも不出来なんだろう」「なんでこの家に生まれたのだろう」疑問が自分の重りになってのしかかった。そう思い詰め始めて弟と口喧嘩をしていたある時言われた。
「頑張ってないじゃん」
この言葉は3年が経った今でも言われた言葉そのまま覚えている。当時の私は辛い別れを乗り越えようとしたり、受験勉強に集中したりと生きている中で1番頑張っていた時ではないだろうか。その最中にこんな言葉をかけられた。
言われた直後、息が苦しくなった。自分の努力は努力じゃないのか。一生懸命重ねている努力を発されたこのひとつの言葉で全否定された。ショック、ダメージが大きすぎて自分では処理ができなくなっていた。この日、運が良いのか悪いのか塾に行く日だった。
ここでFの登場。入塾して最初の冬、2年生の冬からよく話していたFはとても優しく、よくおしゃべりをしていた。
元々Fは塾に来る日ではなかったが、運良く居た。Nは別の人の授業をしていて、その頃の私の授業担当はあまり仲良くない人だった。
あと少し遅れて塾に着いていたら会えなかった。よく知っている顔を見たらさらに涙が溢れてきた。しかも止められない。Fからしたら塾に来た生徒が突然泣き出した、という感じだと思う。弟と喧嘩したこと、言われたことを泣きながら話した。その時「第一志望に受かろう。それで見返そう」と言った。
正直に言うと弟の方が頭の良い高校に入学すると確信していた。だからそんなことが見返しになると思わなかった。でもそれを目標にする以外私には何もなかった。
そこから必死に前を向いて無我夢中で勉強をした。自習をしに塾に行くことは無くなったが学校で最終下校時刻18時30分まで寒くなり始めた冬も年が明けても毎日居残って勉強を、努力を重ねた。模試の判定が1番良くなることはなかったものの、塾や学校の仲が良い先生や大人に支えられて受験日が目前まで迫ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます