スペース戦記 ~宇宙空間の霹靂~

木根間鉄男

第1話―プロローグ 人類は宇宙へ進出した―

「人類は宇宙に進出し、進化するだろう。我々は月に一歩を踏み出した頃から着実に成長し、今日この時、宇宙での生活圏を確保した。この日が、我々人類の新たな進化の一ページとなるのだ」

 西暦2050年、21世紀も半分といった節目の年。その5月20日のことだ。

 この日、人類は初めて宇宙での生活空間、スペースコロニーを解禁した。

 その20年以上前から人類は宇宙での生活を夢見、科学を進歩させてきた。

 そして今日この日、その科学は実を結び、地球と月の軌道上に約350キロメートルの円筒状の居住空間、スペースコロニーを打ち上げる。

「さぁ、人類よ! ともに宇宙に上がろうではないか!」

 これは初めてのスペースコロニー「ザ・ファースト」に居住し、そこで市長として就任したラルフ・ジョーダンの言葉だ。

 この第一号コロニーを皮切りに、各国は次々とコロニーを宇宙へと打ち出した。

 そのどれもが小さな都市のようなもの。

 コロニー都市は成長し、人々もそこへ移住し、10年もたたぬうちに宇宙は地球の第二の故郷となる。


 だが、一つ問題が起こった。宇宙で生まれた赤ん坊の額から角のような突起物が生えてくるという奇病が発生したのだ。

 生まれた時から生えている者もおれば、成長してから生えてきた、という者もいる。

 それが発覚したのが2065年のこと。

 角の大きさは人それぞれだ。親指の爪くらいの長さまでしかない子供もいれば、10センチ以上の角を持つ者も。

 角の数も1つだけの者もいれば、2つ以上持つ者もいる。

 これは本当に病なのだろうか、5年ほどかけて研究機関は究明を続け、そして結論を出した。

「宇宙で生まれた赤ん坊の角、それは進化の証です。角のある子どもたちはみな知能も身体能力も、同年代の子供よりも遥かに高い。地球では得られない宇宙からのエネルギーを受けて生まれた彼らの角、それはまさに進化の証明、進化エボリューションホーンと名付けましょう。そしてその角を持つものを進化エボルブした人類ヒューマン、イーマンと名付けましょう!」

 イーマンは成長するにつれて様々な分野で活躍した。

 スポーツの記録を塗り替えたり、新たな機械の発明に成功したりなど様々だ。

「イーマンは今は子供だが、もし大人になり我々人類に反旗を翻すとどうなる? その力に対抗できるだろうか?」

 イーマンの力を恐れた旧人類は、イーマンの行動を制限する法律を作った。

 所得できるお金や使える公共機関や場所、外出時間、様々なことに制限が設けられたが、もちろんそれで黙っているイーマンではない。

「我々は宇宙から力を授かり産まれた、しかし我々は人間だ! 同じ人間だというのに、我々だけが不当な扱いを受けるのはどうしたものか! さぁ、イーマンたちよ、立ち上がるのだ! 我々の権利を主張しよう! 元来人類は、すべて平等であるべきなのだ!」

 2090年、イーマンの青年、ルマ・ウェストランドがイーマンを束ね、政府との対話を求め立ち上がった。

 彼が求めたのは話し合いでの解決。イーマンと人間の平等化だ。

 しかし同年の12月25日のことだ。ついに政府との話し合いにこぎつけたルマ。

 だがその道中狙撃され、命を落としてしまう。

「これは我々イーマンを迫害しようとする旧人類の仕業だ! 我が友、ルマは話し合いでことを解決しようとしたというのに、旧人類である貴様らは武力でそれに応えた。ならば我々も、武器を手に取るしかない! さぁ、立ち上がれ、イーマンよ! ルマの無念を晴らし、彼が求めたイーマンの世界を手にするのだ!」

 ガルシア・アンダームーンがそう呼び掛け、イーマンたちは武装蜂起、ザ・ファーストを奪った。

そしてルマ暗殺の容疑で市長のラルフを処刑。そこをイーマンの国家、エボリューション・ガイダンスとし、地球に宣戦布告した。

 2091年1月1日のことである。


 そしてその戦いは9年たった2100年、21世紀末となっても、終わってはいなかった。

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