死神といっしょに生活してみた

ネネイチ

第1話 僕が君と出会った日 死後

 ここは僕にとって夢にもみたことない知らない世界だった。恐る恐る目を開いてみると激しい稲妻のような眩しい光線が僕の目を殺しにかかる。ウゥッ、もう駄目だ。なぜか僕はうつ伏せの状態で必死にもがいていた。

 僕は今どこにいる?

 何が起こったんだ?

 僕は大丈夫なのか?

一度にいろんな疑問が浮かび上がった。考えようとしても頭は真っ白。だんだんと不安からイライラしてきてなぜそのような感情になったのか、あとから考えると分からない。僕はできるだけ自分を落ち着かせ目をゆっくりと開けるようになった。でも目を開けない方が良かったかもしれない。僕が見た景色は昨日まで目に焼き付いている快晴の空、公園の噴水キャッキャッとはしゃぐ子供たち、色とりどりの花は消え去っていた。見渡す限りあたりいちめん白。まるで白い箱の中に閉じ込められたのような感じがする。

 僕は違う世界に迷ってしまったかもしれないー

僕の結論からするとこのような判断となった。でもきっと何か思い当たることがあるかも。まずこの世界について知っておくべきだと思ったが、なかなか行動に移らない。歩いてみようかな?でも逆に迷子になってしまうというかもう迷子になっているし。

 「おーい、誰かいるかー。」

声は出るし、体力的にも大丈夫そうだ。誰か振り向くだけでいい、僕の嫌いな人でも今助けてくれたら命の恩人だよ。命は言い過ぎたかもしれないけど。ゆっくりと時間の流れが経っていく中で僕は拳を強く握りしめた。


 そのとき、

 「何をしたって無駄です。」

僕の背後から冷たい声が響きわたった。上品な口調が恐ろしく怖くなってきた。悪寒がしてきた。いきなり時間の流れが急激に早くなり僕の心臓もどくどくなり始めた。神様ーーー仏様ーーー!!この僕を救ってください!!

 「だから言ったでしょ、この世界に神頼みなどしたって無駄です。」

心を読まれたような気がしてどんどん表情がかたくなっていった。

 「ここはどこなんだ。君は誰?僕はどうなったんだ?」

 「そんないっぺんに質問されても困ります。」

 「じゃあまずここはどこなんだ?」

 「その前に話しませんか?疲れているようだし。」

この人、何か隠し事をしているに違いない。あやしい匂いが僕の鼻に刺激を与えた。ひとまずそこは賛同して落ち着いてから本題に入ろう。こいつは誰なのか、まだ姿は見ていないというか見ようとは思っていない。振り向きもできない。何かありそうな気がしてやばい。もちろん悪い方の「やばい」だ。

 「では参りましょうか。」

僕はただうなずくしか考えられない。

 

 僕はその人を追っていた。その人は顔を隠していそうにサングラスとマスクをつけていた。スーツを着用していたが、今風のではない。革靴を履いていて、今の時代の流行を知っていないかのようだ。その人が進む先に灯が見えてきてだんだん僕を助けてくれるのではないかと気持ちがたかぶった。先には喫茶店があり、客がそこで談話したり休憩したりしている。

 「ねぇ、ここ喫茶店で何をするの?お金なんて持ってないし。」

 「大丈夫。君、アルコールは?」

 「まだ僕18だけど。」

 「ふーん。だと思った。まだ何も知らない若者だ。」

口調がいつの間にか敬語ではなくなった。見た目にして僕は背が低いしそれにちょっと猫背だもんな〜。その人は大人っぽく僕より年齢が高いはずだ。

 「君何歳?30とか?」

 「後で答える。それより、コーヒーは?ケーキもあるよ。」

質問はするのに答えないのはちょっとな・・・・・・

 「マンゴースムージーにするよ、あとブラウニーとチーズケーキ。」

 「スイーツ男子かよ。」

答えはYesだ。小さい頃からスイーツは好きだった(特にケーキ類は)

 「あっ、店員さん注文!マンゴースムージー、ブラウニー、チーズケーキ、

  ブラックコーヒーをお願い。」

 「かしこまりました。」

店員の胸元の名札には研修中と書かれてあった。この世界って僕の世界とまるっきり違うわけではなさそうだ。喫茶店の雰囲気も別に対して変わってはない。不安から解放されたかのように和やかでおまけにスイーツも食べれて。天国だな。

 「ねぇ、あのさ。君いつの間にか僕に対してフレンドリーになったよね。」

 「悪いか?」

 「いや別に。最初は敬語だったから。」

その人はポケットからタバコを取り出した。

 「そりゃ、初対面の人には敬語だろう?俺だって礼儀ぐらい分かる。でも俺よ

  り年上なんだから敬語を使うんだ。上下関係だよ。」

 「何歳?」

 「何歳ですか?でしょ。」

笑みを浮かべながらその人はタバコをくわえた。その人の顔と表情も分かってきた。うん、やっぱり30代くらいだ。

 「まぁ、俺はそんなことは気にしないけどよ。で、何歳だと思う?」

 「30代とか。」

 「ふんっ!見事ハズレ。」

 「20、40、50、60!」

当てずっぽにどんどん数を上げていった。

 「全部違うな。」

その人はメニューを見ながら首を振る。

 「えっ、まさかの70とか80とか!?じじい?」

 「あのさ。」

話を始めようとした時、ブラウニーとチーズケーキ、ブラックコーヒーとマンゴースムージーが運ばれてきた。

 「おじさんはコーヒー?苦くない?しかもブラックだし。」

 「おじさんって言うのやめんか。」

 「だったら、本当の歳教えろよ。」

自分は何歳ですと答えればいい話なのに、難しい答えなのかな?

 「君は全部知りたいんだね。」

 「全部ってわけではないけど、僕が質問する範囲まで答えるだけでいい。」

ふーっと息を吐くとその人は僕のチーズケーキを一口ほうばった。

 「あっ!僕の。」

 「俺が払うんだから。あと真実を知りたくはないのか?」

 「知りたくてたまらないよ。質問はしても君は答えてくれないし。」

 「じゃあ、お望みのとおり全て話すよ。耳をすまして聞いてくれ。」

その人はフォークを皿に置いて思い出話をするような感じで語ってくれた。 

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