第17話  合宿開始 中編

第十七章  合宿開始 中編







合宿初日 午前五時半



毎日の朝練通り、いつもの時間からいつものバッティングセンターで合宿はスタートする。


しかし今日は学校が休みのため、いつもよりも長い開店三十分前までマシン打撃をする事が出来るのだ。


「いいわよ梓!今はまだ綺麗に内角の球を打とうとしなくてもいい。いつも通りのそのスイングさえ出来ていれば、詰まっても内野と外野の間に落ちるわ!」

「うっす!」

「穂澄!次は四回裏ツーアウト、ランナー二塁。カウントはワンボール・ツーストライクの場面を想定して打ちなさい!」

「承知しました!」

「雅!また上半身が泳いでる!変化球は手で打ちにいくんじゃなくて、しっかり下半身で溜めて全身を使わないとボールは飛ばないわよ!」

「わ、わかっていますわ!」


百合香のアドバイスを元に、沙希が各自の打撃を見ながら自分の中で最適化させた指示を飛ばす。


「奈月は……」

「ふぅ……みっ!ふぅ……みっっ!ふぅ……みっっっ!!」

「心配なさそうね」


新しくなったバットを手に入れ、まるで水を得た魚が如くホームラン性の当たりを連発する奈月に頼もしさすら感じ、沙希は満足気に頷く。


やっと慣れてきたバットからまた元のバットへ戻したのでどうなるかと思っていたが、どうやら要らぬ心配だったようだ。


(こっちは練習試合までにはなんとか形にはなりそうね。後は……)


横目でちらり……と、今日も百合香が指導を行っている三人組の方を見る。


「こらこらー。また最後までボールを目で追いかけないで、直感だけで当てにいってるぞ☆誰がそんな打ち方を教えたっけ~?」

「で、でもこうしないとバットに当たらないニャ……」

「うん、バットに当たらないと楽しくないもんね。だから今はより確実に、バットに当てられる練習をしてるんだよ?」

「そ、それは分かってるけどニャ……」

「もっともっと確実にバットに当てられれば、今よりずっとずっと楽しくなるのは分かるよね?だったら目先の楽しさで満足しちゃうのがどんなに愚かな事かも分かるよね?」

「うぅ……」

「分かったら言われた通りにやる。あと何度も言ってるけど、時間の無駄だから口答えする時は百合香を論破できる時だけにしてね☆」


ののあが反論できなくなるまで、満面の笑みを浮かべたまま容赦なく叩き潰す百合香。決して間違った事は言われていないので、ののあもそれに従うしかない。


「す、素振り百回……終わったであります……」

「デース……」


すると今度は背後から声をかけられ、百合香は踊るようにクルリと回転しながら振り返ると、


「お疲れ様☆でも海帆ちゃんは四十七回目、ビビちゃんは六十一回目のスイングからフォームが崩れてたよね?崩れたまま修正しないで、手抜きのまま数だけこなしてたよね?」

『ギクッ……』

「百合香がののあちゃんを見てるから気づかれないと思った?残念☆スイングの音で丸わかりなんだぞ☆」


百合香は相変わらず笑顔のまま二人に詰め寄る。その笑顔の奥から溢れ出してくるドス黒い瘴気に、海帆とビビは奥歯をガタガタ震わせた。


「じゃあもう一回最初からやろうね☆また途中で手を抜いたりしたら、何度でも一回目からやり直しさせるからね☆」

「イ、イエス!マム!」

「デ、デース!」

「よ~し、スタート☆」


二人は全力ダッシュで自分のゲージに戻ると、再び黙々とバットを振り始める。


それを見届けた百合香も上機嫌に鼻歌を口ずさみながら、ののあへのマンツーマン指導に戻っていった。


(頑張れ三人とも……。その道はかつて私達も通った道よ……)


かつての打撃練習・百合香スペシャル☆(本人命名)を思い出し、三人と重ねる沙希。その眼差しは悟りを開いた仏のように優しい。


しかし打撃練習中の時だけ、三人の瞳から日に日に光が失われていっている事は見て見ぬふりをした。






午前十時



「ニャニャニャニャにゃあ~~!」

「ヘイヘーイ!どんどんバッチこーいデース!」


河川敷へ移動し、次はノックによる守備練習。


打撃練習で溜まった鬱憤を晴らすかのように、ののあとビビは外野を縦横無尽に走り回る。


「お~い。気合入れるのはいいが、あんま飛ばすと一日持たねぇぞ~」


そんな二人を心配して梓が声をかけると、彼女達は揃って肩を怒らせながら歩み寄ってきた。


「あずやんはあの地獄を知らないから分からニャいだろうけど、これだけは言っておくニャ。自由に練習できるってのは幸せな事なんだニャ」

「そうデース。今のワターシ達は籠から解き放たれた鳥ネー。もはや誰にも止める事はできないデース」

「お、おう……そうか……。とりあえず怪我にだけは気をつけろよ……」


むしろ檻から解き放たれた猛獣のような気配を漂わせながら、光の消えた目を近づけられ、思わず梓も後ずさる。


そうこうしてるうちにまた沙希が打ったフライが飛んでくると、それをののあとビビは瞬時にまた目を輝かせ、全速力で追いかけて行った。


(……そんなにヤベぇのか……あの人の特訓……)


そういえばその特訓を受けているのがもう一人いたなと、梓は内野でノックを受けているその子を見る。


「フハハハ!自分!絶・好・調!であります‼」


するとそこには、やはりののあとビビと同じく変なテンションになっている海帆がいた。


初日はあれだけ怖がっていた正面への打球を今は恐れず捌き、得意のダイビングキャッチにも一段と磨きがかかって見える。


「いいじゃない海帆!すっかり打球への恐怖心はなくなったみたいね!」

「この程度の恐怖、一文字教官の指導に比べれば無に等しいであります!」


外野と内野へ交互にノックする合間に沙希が声をかけると、力強くグローブをバシバシ叩いてみせる海帆。


思いがけないところで百合香の圧迫指導が功を奏していた、その頃。グラウンドの外ではもう一人のコーチ、本郷久美による授業が行われていた。


「それじゃ今まで教えた事を踏まえて、この状況の場合、ピッチャーが陽菜ちゃんなら何を投げさせる?」


A4サイズのホワイトボードに描かれた野球場を上から見た絵の上に、カウントとそれに至るまでの配球、ランナー、点差などが事細かく記載されたものを奈月は体育座りをしながらジッと見つめ、


「ツーストライクに追い込んでますし、三振が取れる縦スライダー……ですか?」

「ブブー、不正解」

「な、なら高めの釣り球のストレートとか?」

「ブブー」

「よ……様子見のために外角へ外したボール球……」

「ブッブー。残念~、今の打席は場外ホームランを打たれてしまいました~」

「ふみぃ⁉そんなに凄いバッターだったんですか⁉」

「そう。そこよ」


久美は人差し指を立てると、奈月のおでこをちょんっと押す。


「ここにはわざと、陽菜ちゃんのその日の調子とバッターの情報を書いておかなかったの。なのに奈月ちゃんはそれを私に確認もせず、答えを考えちゃった」

「あ……」

「分かってきたみたいね。じゃあ復習も兼ねて、配球とリードについてそれぞれ説明してみて」

「は、はい」


奈月は頷くと、すでに久美から教わっているその二つを思い出しながら答えていく。


「まず配球は、打者をどう打ち取るかを考えて組み立てる『準備』……です。リードはそこからさらにその日の投手の調子、打者の調子や狙い球などを試合前のデータと比較して出した最適解を元に、臨機応変に対応させた『配球からの応用』……です」

「ちゃんと覚えてたわね。偉い偉い」


久美が奈月の頭を撫でると、隣で同じように体育座りをしていた陽菜もどさくさに紛れて一緒に撫でる。


「でも実際の試合はまずデータ通りにはいかないわ。試合中に生じた誤差をいかに鋭く察するか、その上でどう自分達に有利に修正していくかを考えるのがキャッチャーのお仕事よ。

よくリードが上手い下手って言うけど、これはそういう『試合全体の流れを支配する力』の事だと私は思ってるわ」

「ふみぃ……。やっぱりキャッチャーって難しそうです……」

「心配しなくても平気よ。奈月が間違ったリードをしても、私がねじ伏せればいいんだから」

「うん、陽菜ちゃん。この授業を根底から否定する脳筋発言は止めてね」


沙希から聞いてた通り、奈月に対してだけは甘くなる陽菜にため息をつくと、久美は人差し指で眼鏡の位置を直す。


「確かに陽菜ちゃんの実力ならある程度はそれも可能でしょうね。でも全国レベルになれば、そうも言ってられないのも陽菜ちゃんならよく分かってるでしょ?」

「……はい」

「陽菜ちゃんのピッチングを最大限に活かすには、奈月ちゃんのリードが必要不可欠。逆に奈月ちゃんのリードを最大限に活かすには、陽菜ちゃんがどうしてそういうリードになっているのかを理解して投げるのが必要不可欠。

そうやってどちらかが欠ける事なくお互いで助け、高め合って、初めて最高のバッテリーが完成するの」

「最高のバッテリー……。私と陽菜ちゃんで……」


まだ自信が持てず不安そうな奈月の視線に気づくと、陽菜は優しく微笑んでその頭に手を置く。


「私達ならきっとなれるわ。日本一……ううん、世界一のバッテリーにだってね」

「は、はい!私も陽菜ちゃんと世界一の、最高のバッテリーになりたいです!」

「なら、もっともっと練習して、野球に関する知識ももっともっと深めていかないとね」


久美はうんうんと頷くと、改めて自分の役割の重要さを再認識した。


世界一を目指すバッテリーを育てるのだ。これほど重要でやりがいのある仕事など中々ない、と。


「まぁ、最初のうちは難しく考える必要はないわよ。陽菜ちゃんが奈月ちゃんに教えた通り、自分が打者だったら今どういう風に考えているか、どういう球を今投げられたら嫌かって考え方をベースにして、そこから焦らず一つ一つ必要な情報を加えられるようにしていけばいいの。

そのために必要な経験を積むための練習試合を、これからは沙希が毎週組んでくれるんだしね」


そう言って久美は立ち上がるとお尻をトレーニングウェアの上からはたき、


「じゃあ頭を使うのは喜美ちゃんの内野ノックが終わるまで一旦休憩にして、それまではキャッチャーフライを捕る練習をしましょうか。沙希ほど上手く真上には上げられないけどそこは勘弁してね」


ノックを続けている沙希に「私にもバット貸して~」と、どこかウキウキした様子で歩み寄って行った。






午前十一時五十六分



野手陣には体力強化と走塁練習を兼ねた、ホームベースからぐるりと塁を一周するベースランニングを。


投手陣には奈月をキャッチャーにして、陽菜と喜美で交互に投げ込みをさせながら、沙希は腕時計で時刻を確認する。


(そろそろお昼ご飯の買い出しに行った久美が戻ってくる頃ね……。キリが良いし、午前中の練習はここまでにしようかしら)


そして午後の練習メニューを頭の中で再確認していると、


「沙・希・ちゃん♡」


なんの気配もなく、それは突然やって来た。


左腕に抱きつかれた柔らかな感触と今朝聞いたばかりの声に、沙希の首が油の切れた機械のようにギギギ…とぎこちなく動いていく。


確認するまでもなかったが、そこには百合香がいた。


「えへへ☆来ちゃった♡」

「ゆ……百合香……?あんた……仕事はどうしたの……?」

「ちゃんと頑張って、午前中の分は終わらせたよ。今はお昼休み☆」

(昼休み……!そういうのもあったか……!)


すっかり失念していた己の迂闊さに後悔するが、問題はそれだけでは済まない。もうすぐ久美が戻ってくる → 百合香と鉢合わせする → 暴走モード突入という、予知能力がなくてもはっきり見える未来に、沙希の全身から大量の脂汗が流れ出す。


その緊急事態にベースランニングを続けていた梓と雅も気づき、


(オイオイオイ……)

(死にますわ、あの方……)


しかしどうする事も出来ないので、とりあえず走りながら右手で十字を切っていた。


(ど、どうする……?久美に電話しようにも、間違いなく百合香が傍から離れてくれないだろうし……)


それでもこの最悪な状況を一転させる悪魔的奇手を閃かせようと、沙希があれこれ考えを巡らせていると……


「お~い、お昼ご飯買ってきたわよ~。あっ、沙希に頼まれてたチキンカレーは売り切れてたからチキン南蛮にしといたわ~」


弁当と飲み物が入った大量のビニール袋を両手に抱えた何も知らない久美が戻ってきた瞬間、「……あ?」という大型犬くらいなら軽く殺せそうな、殺気に満ちた声が抱きつかれた腕の方から聞こえてきた。


(あ、終わった)


同時に沙希は死を悟った無の表情で空を見上げた。今日も雲一つない快晴。死ぬには良い天気だ。いや死にたくないけど。


「おっ、百合香じゃん久しぶり~。皆も休憩してご飯にしましょう~」


沙希の代わりに勝手に休憩を入れると、皆の昼食が入ったビニール袋を地面に一つずつ置いていく久美。


しかし奈月達が練習の手と足を止めても近寄ってこない事に首を傾げ、


「どしたの?冷めちゃうから早く食べようよ」


そこでやっと全員揃って何かを指さしているのに気づき、久美もそちらを見て「ああ、なるほど」と手を打った。


そこには達観した遠い目で空を見上げてる沙希の腕に抱きついたまま、赤く光らせた目で自分を威嚇している百合香の姿。それがどういう状況か、かつてのチームメイトであった久美なら知らないはずもない。


「ねぇ……沙希ちゃん。どうしてあの女がここにいるのかな?カナ?」

「バッテリーコーチを頼まれたからよ。缶ビール六缶パックで一回の条件でね」


現実逃避を続ける沙希の代わりに久美が答えると、その場に座ってビニール袋の中から自分の弁当とお茶のペットボトルを取り出して食べ始める。


「うっさい!あんたには聞いてないわよ!」

「相変わらず嫌われたもんねぇ。まぁ、初代女子野球部をどうするかで揉めてからはずっとそうだけど」


慣れているのか暴走モードの百合香を前にしても全く動じた様子もなく、久美はお茶を一口飲むと、当時を思い出して目を細めた。


いつか沙希が戻ってきたくなった時の為に、女子野球部を残そうとした久美。


体だけでなく心も傷ついていた沙希に、もうこれ以上の負担はかけたくないと、根源である女子野球部を解散させようとした百合香。


交わらなかった二人の意見は、今も巨大な確執となって続いている。


「あーもう最悪!百合香と沙希ちゃんで女子野球部を強くしてると思ってたら、あんたまでいたなんて!」

「それは悪かったわね。じゃあどうする?私と一緒にやるのが嫌ならコーチ辞める?」

「なんで百合香が辞めなくちゃなんないのよ!あんたがいなくなりなさいよクソ眼鏡!」

「う~ん……。それは聞けない話ねぇ」


久美は頭をポリポリとかくと、食べかけの弁当を地面に置く。


「私はさ、結構今の女子野球部を気に入ってるのよ。そりゃ確かに最初はお酒に釣られて始めたコーチだけどさ、本気で頑張ってるあの子達を見てると昔を思い出すし、もしかしたら私達が果たせなかった全国制覇の夢を叶えてくれるかもって考えたら、凄くワクワクしてる。

百合香はどう?あの子達に野球を教えてて、何も思わなかった?」

「…………」

「だからさ、昔の事を水に流せとも仲良くしようとも言わない。最後まで初代女子野球部を潰そうとしなかった私を今でも許せないってんなら好きなだけ罵ればいいし、簀巻きにしてそこの川に放り投げてくれてもいい。

その代わり、今まで通りコーチを続けさせてくんないかな?この通りだからさ」


そう言うと、久美は百合香に対して頭を下げた。


「百合香、私からもお願い。久美にもコーチを頼んでいたのを隠していたのは謝るわ。でも女子野球部を強くするには、二人の力がどうしても必要だったの」


いつの間にか現実世界に戻ってきていた沙希も頭を下げる。


「二人が今でも仲違いをしているのは知ってたわ。その原因を作ってしまった私が言えた立場じゃないけど……もう一度あの頃みたく、皆で手を取り合えないかしら……?」

「沙希ちゃん……」


流石に沙希にそこまで言われては、百合香も一度落ちつくしかなかった。しかし、それですぐに割り切れるかは別の話である。


十年に亘り久美との間に生じさせてきた溝は、そう易々と埋まるものではない。それがいくら沙希の頼みであったとしても、だ。


「ごめんね沙希ちゃん……。百合香、今日はもう帰るね……」

「百合香……」

「心配しなくてもコーチは続けるし、お店も今まで通り使っていいから……。でもやっぱり、沙希ちゃんを苦しみ続けさせた久美と一緒にいるのだけは嫌……」

「それは違うわ!女子野球部を存続させて一番苦しんでいたのは――」

「いいのよ、沙希。百合香が言ってる事は何も間違っていない」

「久美……」


百合香はうつむかせていた顔を上げると、無理に作った笑顔を沙希に向け、


「じゃあね、沙希ちゃん。また明日」


その笑顔が崩れてしまわないうちに、駆け足でその場から去って行ってしまった。


後に残ったのはやりきれない空気。それを少しでも晴らそうと久美はへらへら笑いながら奈月達に向き直ると、


「ごめんね~、私達のごたごたに巻き込んじゃって。お腹空いたでしょ?ささ、少年チームの子達が来る前に食べちゃいましょ」


いつもと変わらぬ軽い口調で手招きし、自らも食べかけの弁当に手を伸ばした。






「あ、あの……。立花先生……本郷コーチ……」

「ん?どったの、奈月ちゃん?」


一足先に弁当を食べ終え、爪楊枝で歯の隙間の掃除をしていた久美が、何かを質問したそうにしている奈月に視線を向ける。


しかし奈月は久美と合った視線を逸らすと、


「い、いえ……やっぱりなんでもないです……」


そう言って、再びあまり進んでいない箸で弁当を食べ始めた。


奈月が……いや、女子野球部の皆が何を聞きたいのかは、食事中にもずっと漂っている微妙な空気で久美にも分かっていた。


「どうすんのよ、沙希。あんたのせいで、せっかくのランチタイムが台無しじゃない」

「いや、私もまさか百合香がここに来るとは思って……。ううん、私の思慮不足でした。完全に私のせいです、ごめんなさい……」


冗談のつもりだったのに、思いのほか堪えている沙希にマジレスされ、久美は深いため息をついた。


しかしこのままでは午後の練習にも影響が出かねないと判断すると、腹を括る事にする。


「私と百合香がどうしてあんなに仲が悪いのか気になる?」

「え、えっと……それは、あの……はい……」


奈月は返事に迷ったものの正直に頷く。


「それよりも、昔の女子野球部に何があったのか……。その方が気になってます……」

「だよねぇ。まぁ今の女子野球部には直接関係ないけど、私達の代に何があったのかはあなた達にも聞く権利はあるものねぇ」


申し訳なさそうではあるが、それ以上に興味を隠しきれてない他の部員達の顔を見て、久美は沙希に確認を取る。


「いいわよね?全部話しちゃっても」

「私に拒否権はないわよ。でも、聞いても面白い話でもなんでもないわよ」

「構いませんわ。むしろ聞かずにモヤモヤしたままの方が今後に悪影響ですもの」

「とか言ってる奴ほど興味津々なんだよなぁ」

「な、なにを仰ってますの⁉私は純粋に女子野球部員として、その歴史を学ぼうとしているだけですわ!」

「だが私も恥ずかしながら、実は興味がありました。是非お聞かせ願えませんでしょうか?」


穂澄の言葉が総意であると言うように、全員の視線が自分の顔へと集まったのを確認して、久美は一つ頷く。


「オーケー。ならば今こそ初代鶴川女子野球部の歴史を紐解きましょう。そう……あれは今から三十六万――いや、一万四千年前だったか――」

「なんの話をしようとしてるのよ、あんたは」


沙希にチョップでツッコミを入れられると、久美は照れ笑いをしながら眼鏡の位置を直し、コホンと咳払いをしてから今度はちゃんと語り出す。


「私達が全国大会の準決勝まで駒を進めて、その試合で負けて沙希も肩を壊したのは皆も知ってると思うけど、問題が起こったのはその後。

沙希が怪我を理由に女子野球部を退部して、残された部員達でさぁこれからどうしようかって話になったの」






十年前の鶴川女子野球部の部室で、その会議は行われていた。


部室にいるのはすでに退部してしまった沙希を除いた九人。今よりも一人多い部員数であったが、沙希が抜けて試合が出来るギリギリの人数になっていた。


そんな中で、まず口を開いたのは久美であった。


「私は……女子野球部を残すべきだと思う。沙希は今ちょっと心が疲れてるだけで、きっとまた戻ってきてくれるはずよ。

その時に女子野球部が……あの子が帰って来られる場所がなくなってたら可哀想じゃない……」

「でも、本人はもう投げれないって言っていたのでしょう?」

「違う。怪我はもう治ってるの。でも前と同じスピードの球が投げられなくなっただけで……」


部員の一人、風見 優の言葉を久美は否定する。


「か、仮に立花さんが戻ってくるまで私達だけで頑張るとして……だ、誰が投手をやるの……?」

「それは……今から皆の中から適性を見て決めるしか……」

「でもさ~、誰がやったって沙希ちゃんみたいな球は投げれないって~」

「だよねぇ。沙希っちがいなかったら、ぶっちゃけ県大会すら勝てるかも怪しいのは久美っちも分かってるっしょ?」

「大事なのは結果じゃないわ。女子野球部を残したままにしておくのが大事なの」


同じく部員である、神 桜子。筑波 里佐。山本 由乃も存続に乗り気ではなかったが、久美はずれた論点を元に戻し、なんとか彼女達を繋ぎ止めようとする。


「でも、やっぱり続けるからには勝ちたいな、あたしは。それに沙希が本当に戻ってくると信じるにも、それまでのモチベーションは大事になると思うし」

「良くも悪くも立花を中心にまとまっていたチームだからな。戦力としてだけでなく精神的な支柱も抜けて、どう立て直すつもりだ?」

「私が沙希の代わりになれるよう努力する。穴は完全に埋められなくても、必ず私達だけでも勝てるチームにしてみせる」


チームの頭脳として戦術を一手に引き受け、全国大会までの地図を作った久美の言葉に、城 美智子と村雨 あかりはとりあえず納得する。


「久美の女子野球部存続への意思が固いっちゅーんはよう分かったわ。で、あんたはどないなんや、百合香?」


沖 愛佳はそれまで壁に背を預け、腕組みをして無言のままうつむいている最後の部員に声をかける。


「……百合香は沙希ちゃんのいなくなった女子野球部になんて興味ない。だからこれが百合香の答えだよ」


そう言うと一文字 百合香はスカートのポケットから取り出した退部届を、久美に向かって投げてみせた。


「ま、待って百合香!あんたまでいなくなったら、試合が出来なくなっちゃう!」

「だったら解散でいいじゃない。皆だって本当は、沙希ちゃんのいない女子野球部になんて意味がないって気づいてるんでしょ?」


百合香の言葉を肯定する者はいなかった。けれど、否定する者も久美以外にはいなかった。


元々このチームは沙希が裸一貫から一人で立ち上げ、その彼女の魅力に惹かれて一人、また一人と集まって出来たチームである。


惹かれた理由はそれぞれ違うが、沙希に野球の楽しさを教えてもらったという点は全員同じ。いや、沙希と一緒にやるから野球が楽しかったと言うべきなのだろう。


その沙希が女子野球部からいなくなった今。


戻ってくるかも分からない今。


野球を始め、続けていた理由でもあった支柱を失ったからこそ、全員の心は揺れているのだ。


「でも百合香っちは本当にそれでいいの?女子野球部がなくなったら、大好きな沙希っちが悲しむかもしれないっしょ?」

「今の沙希ちゃんはもう見ていられないくらい心が傷ついてる……。準決勝であの化物に自信を完全に打ち砕かれて、その上……肩まで壊して……。

誰よりも野球を愛していて責任感の強かったあの沙希ちゃんが、百合香達を残して野球を辞めてしまうくらいにだよ……?」


ぽた……ぽた……と……。百合香の両目から溢れた涙が、床に零れ落ちていく。


「女子野球部が残ったままだと……沙希ちゃんはきっと今以上に苦しむよ……。自分で創った女子野球部だもの……責任を感じてないはずがないもん……。

だから本当に沙希ちゃんのためを想うなら……女子野球部は解散させて、野球からも責任からも解放してあげるべきだと百合香は思う……」

「百合香……」


誰よりも沙希の傍にいようとして、誰よりも沙希の事を考えていた百合香が口にした解散という言葉だからこそ、久美は何も言えなかった。


自分が沙希の事を大事に考えているように、百合香もまた、沙希の事を大事に考えた上での結論なのだ。交わらない平行線の意見だとしても、否定する気になどなれるはずもない。


「……せやな。うちは百合香の意見に賛成やわ」

「愛佳⁉」

「久美の気持ちも分かるけど、もう十分やろ。沙希はうちらに、文字通り体を張って夢を見させてくれた。

せやのにこれ以上、あいつが望んどらん夢をうちらが見続けるっていうんは恩を仇で返すようなもんちゃうんか?」

「ち、違う……。私はそんなつもりじゃなくて、本当に沙希の事だけを考えて……」

「だったら一文字の方が理に適っているな。女子野球部は一度解散。立花がまた野球をしたいと言ったら、その時にまた女子野球部を創り直せばいい」

「それが一番いいかもね~」

「あかり……里佐……。本当にそれでいいの⁉女子野球部がなくなっちゃうのよ⁉そうしたら――」

「……それがどうしたのよ……」


そこで顔をうつむかせたまま泣き続けていた百合香が、ポツリ……と呟いた。


そして久美の前まで大股で歩いて行き、両手で彼女の制服の胸ぐらを掴む。


「あんたッ!沙希ちゃんと女子野球部のどっちが大切なのよッ!別に女子野球部がなくなったって思い出までなくなる訳じゃないでしょッ⁉」

「両方大事よ!もし女子野球部がなくなったら、きっと沙希は後悔だけしたまま二度と野球をしようとしない!

それに百合香が言ってるのは沙希を信じてないって言ってるのと同じ事じゃない!なんであの子が戻ってくるって信じてあげられないの⁉」

「その前に沙希ちゃんが壊れちゃうって言ってるのよッ!この眼鏡ッ!」

「ちょ、ちょっと二人とも落ち着きなって!」


慌てて智子が間に入り、他の部員達で今にも殴り合いを始めそうな二人を引き離す。


「私は……私は例え一人だけになっても女子野球部に残るから!百合香が信じられなかった沙希を私だけは信じてるから!」

「――ッ!そうやってあんたはいっつも沙希ちゃんの事ならなんでも分かってるふりをしてッ!そういうところがずっと気に喰わなかったのよッ!」


百合香は自分を押さえつけていた三人分の腕を強引に振りほどくと、床に落ちていた退部届を拾い、改めて久美に叩きつけた。


「だったら好きにすればいいじゃないのクソ眼鏡ッ!百合香は百合香のやり方で沙希ちゃんを救ってみせるんだからッ!」


そう言い残し、扉が壊れてしまいそうになるほど激しく閉めて部室から出ていってしまった。


そして百合香は二度と女子野球部に。そして自ら、久美の前に姿を見せる事はなくなった。






「いやぁ~、あの頃は私も若かったわねぇ~。取っ組み合いの喧嘩をしたのなんて、後にも先にもあの時だけだわ」

「ちょ、ちょっと待って!久美が百合香と喧嘩したってのは聞いてたけど、そこまでいってたなんて初耳なんだけど⁉」

「そりゃ正直に話したら、あんたはまた余計な責任を感じてウジウジしてたでしょ。今ならともかく、野球から逃げてたあんたなんかにさ」

「うっ……。確かにそれはそうかもしれないけど……」

「そ、それでそこからどうなったのでありますか⁉」

「別にどうもならないわよ。百合香と冷戦状態なのはその日からずっとだし、女子野球部に関してはそうねぇ……」


二人の意見は決して交わらない平行線だったが、最終的には久美以外の部員達は百合香に賛同し、女子野球部を去って行った。


それでも久美は宣言通り一人で女子野球部を存続させようとしたが、翌年の新入生は目当ての沙希が野球を辞めたと知ると、誰一人入部しようとはしなかった。


そして女子野球部は部員不足を理由に同好会へ格下げ。さらに翌年も部員は入らず、久美の卒業によってついに部員がゼロになり、初代鶴川女子野球部は廃部となった。


「まぁ……結局、沙希は女子野球部に戻って来なかったし、百合香が正しかったのよね……」

「…………」

「でも、それだとなんだか不思議な気がするニャ」

「ん?何が?」

「今までの話を聞いただけだと、野球から離れようとしていた先生と女子野球部でぼっちになった久美っちコーチとの接点は遠くなってるから、普通は疎遠になりそうだニャ」

「だけど今でもとっても仲良しネー」

「ああ、それ。ふふ~ん♪実はこれには卒業式の日に続きがあってねぇ~♪」

「ま、待った久美!それは話さなくていいから!ってか話すな!」


慌てて物理的に口を塞ぎにきた沙希の手を妨害すると、久美はニヤニヤと笑みを浮かべ黒歴史を語り出した。






それは卒業式を終えた日の夜。


久美は自室のベッドの上で横になりながら何をする訳でもなく、なんとなく勉強机の上に並べた三年間愛用してきた野球道具をただ眺めていた。


沙希が女子野球部を辞めてからは、話す機会は一度もなかった。いつも沙希の隣には百合香がいて、まるで自分と接触させまいとしているようだった。


いや、実際そうだったのだろう。女子野球部を最後まで辞めなかった自分と沙希が会えば、どうしても彼女に復帰へのプレッシャーを与えてしまう事になる。


それは久美も望んでいなかった。だから廊下などで偶然会う以外は、自分から沙希の前に姿を晒す事は一度もしなかった。


辞めていった他の女子野球部員達とも似たようなものである。


百合香の意見に賛同したとはいえ、久美の心情も理解してくれているかつての仲間達は、気を遣ってかよく声をかけてくれるようにしてくれていた。しかし久美は彼女らとも自分からは接しようとはせず、距離を取り続けた。


その結果が一人ぼっちの女子野球部。否。最後は女子野球同好会であった。


「はぁ……私の高校三年間ってなんだったんだろう……」


もちろん卒業の日まで女子野球部存続に拘り続けた事に後悔はしていない。そして半年にも満たない短い間であったが、沙希達と野球に明け暮れた日々は、充実したかけがえのない物であった。


けれど残りの大半は、百合香に対抗して単に意地を張り続けただけではなかったのだろうか。そういう想いを拭えずにいたのも事実だった。


家に帰ってきてから、もう何度目か数えるのも面倒になるくらいの深いため息をつくと、そこで部屋のドアをノックする音がした。


「……なぁ~にぃ~……」

「お客さんが来てるわよ。女子野球部の沙希ちゃん。お店の前で待ってもらってるから早く行ってあげなさい」

「――⁉」


母親の言葉に久美は驚きで目を見開くと、反射的に跳ね起きた。


なんで?どうして沙希がここに?しかも私に会いに?


頭の中は疑問符だらけで混乱していたが、気づけば久美は上着を羽織り、部屋を飛び出していた。


そして言われた通り店の前に出ると、そこには一台の自転車と――確かに沙希が立っていた。


「沙希……」


まだ距離がある場所から久美が名前を呼ぶと、沙希は一度声の主の顔を確認するが、すぐに気まずそうに目を逸らした。


しかし次の瞬間には、首と腰の骨が折れるのではないかと思う程、勢いよく頭を深く下げ、


「久美!ごめんなさい!私が自分勝手な理由で野球から逃げたせいで、女子野球部の皆に迷惑をかけた!

特に久美には、一人で女子野球部の全てを背負わせてしまって……。今さら謝っても許してもらえないのは分かってる!

だから気が済むまで何度だって殴ってくれていい!けど、やっぱり私はあんな形で久美と別れるのは嫌だった……から……だか……ら……」


捲し立てるように謝罪の言葉を述べていた沙希であったが、徐々にその声は震え、最後はもはや声になっていなかった。


「わざわざ……それを言いに来てくれたの……?」


頭を下げたまま、しゃくり泣きしながら沙希が小さく頷く。


「ここに来るまで……他の皆にも謝ってきた……。その皆が……口を揃えて言ってたわ……。

自分は謝られるような事は何もしていない……謝るなら、女子野球部を一人で背負わせてしまった久美にこそ謝ってあげてって……」

「皆が……?ってかあんた、全員の家に行ってきたの⁉その自転車で⁉」


やはり頭を下げたまま、沙希がもう一度頷く。


それを見て久美は呆れ果てた。部員全員が鶴川市内に住んでいるとはいえ、そもそも鶴川市は神奈川県で二番に大きな都市なのである。それだけ土地面積は広いし、

一番家が遠い美智子などは自転車でも片道一時間はかかるはずである。


昔からこうと決めたら一直線で、自分が納得するまで止まらない行動力の塊みたいな子だとは思っていたが……


「私……久美の期待に応えられなかった……。久美はずっと一人で辛い想いをしながら私が戻ってくるのを信じて待っていてくれたのに……。

私はそんな久美を二度も裏切った……。ごめんなさい……本当に……ごめん……なさい……」

「馬鹿ね……別に私だって怒ってなんていないわよ。そりゃ沙希が復活してくれなかったのは残念だったけどさ……」


久美は沙希に歩み寄ると、震えるその身体をそっと抱きしめた。


かつては女子野球部のリーダーとして、皆を引っ張ってくれた頼り甲斐のある身体。その身体が、今はあまりにも小さく感じられた。


「それに謝らなくちゃいけないのは私も同じだから……。女子野球部を存続させるのは、百合香にも言われた通り沙希に負い目を感じさせ続ける事になるのは理解してた……。

それでも私は皆と……たった四ヶ月の短い間だったけど、皆と一緒に過ごしたあの女子野球部を潰したくなかった……。

沙希のためだって言いながら……本当は自分のためだったんだ……。ごめん……ごめんね……沙希……」

「なんで久美が謝るのよぉ……悪いのは全部私じゃないぃ……」


互いに相手の身体を抱きしめ合いながら、止まらない涙を流し続ける。


まるで二年半の間に出来てしまった、二人の間の溝を涙で埋め尽くすように。


いつまでも。いつまでも。


身体を抱き寄せ合ったまま……泣き続けた。






「……という事があったのじゃよ」

「なんで自分の恥ずかしい過去まで暴露して得意気なのよ……」

「ふっふっふっ、死なばもろともってね。……って、あれ?」


てっきり甘酸っぱい青春の昔話を冷やかされると思っていた久美だったが、どうにも場の空気がおかしい事に気づく。


「うぅ……勘弁して下さいよ……。アタシ、そういう話には弱いんすよ……」

「お二人がちゃんと元通りになれて良かったですぅ……!本当に良かったですぅ……!」


号泣している梓と奈月を始め、他の部員達も両目に涙を溜めて感動していた。雅だけは後ろを向いて顔が見えないが、こっそりハンカチで目元を拭っているのは見えた。


「え、え~っと……ど、どうしよ……沙希……」

「私に聞かれたって知らないわよ……」


思わぬ純な反応に今さら恥ずかしさが込み上げてきたのか、耳まで顔を真っ赤にしてオロオロしだす久美。そんな相棒に対し、沙希は深いため息をつくしかない。


「でも……私と久美は元鞘に収まれたけど、久美と百合香の溝は未解決のままなのよねぇ……」

「まぁ、それは仕方ないでしょ。さっきも言ったけど、あの時の判断は百合香のほうが正しかったんだし、それを私は最後まで邪魔していたくせに今はこうしてあんたと普通に話してるんだから、あの子からしたら面白いはずがないもの」

「それはそうかもしれないけど、やっぱり二人には和解してほしいのよ……。私にはその責任があるんだし……」

「なら百合香に言ってちょうだいな。こっちはいつでも国交回復させる気ではいるんだからさ」

「だ、大丈夫ですよ!いつかきっと、本郷コーチと一文字コーチも元通りになれる日がきます!」

「だといいんだけどねぇ」


奈月の言葉には全く根拠はなかったが、それでも久美にはそう言ってもらえるだけでも今はありがたかった。


正直に言えば、百合香との関係は二度と元には戻らないだろうと久美は思っていた。この新しい鶴川女子野球部が出来るまでは。


再び動き出した女子野球部の中で沙希は変わり――否。かつての自分を取り戻そうとしている。


(なら私達も……止まってしまっているお互いの時間を動かすべき時が来たんじゃないの?ねぇ、百合香……)


その願いは、かつてのチームメイトにはまだ届かない。


そう。今は、まだ。


けれど奈月の言う通り、いつかまた昔のような関係に戻れると信じて。


今は自分に出来る事を精一杯やろう。百合香にも認めてもらえるくらいの、自分にしか出来ない事を。


「よ~し!午後の練習も頑張りますか!ねっ、監督!」

「な、なによ急にやる気出して……気持ち悪いわね……」


久美は立ち上がると大きく伸びをして、怪訝な表情をみせる沙希に笑顔を向けた。



【続く】

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