結局のところ。
いずも
第1話 僕はモテなかった
初恋はいつか、と聞かれたら恐らく小学校低学年のことを思い出すだろう。
仲がよかった女の子にだんだんみんなと違う変な気持ちが芽生えてきて。
一緒に学校に帰れて嬉しいはずなのに口数が少なくなったり、隣の席になって緊張して先生の言葉が頭に入ってこなかったり。
そんな懐かしい感覚が蘇る。
でも純粋で真っ直ぐなその気持ちはその女の子に伝えることもなく、そもそも当時の僕が恋心というものを自覚していたかどうかも怪しいのだが、いつのまにかそんな思いはどこかへ消えてしまった。
小学生によくある足が速いやつが人気というのは僕の学校でも例外ではなく、運動会のリレーやマラソン大会で活躍する奴らは男女問わず人気だった。
もちろん僕は該当者ではない。
つまり僕はモテるやつではなかった。
中学生にもなると、周りの友達もませてきて誰が誰に告白しただのあいつとあいつが一緒に学校から帰っていただのそんな話題が毎日飛び交った。
興味のないフリをして素知らぬ顔でそういった類の話題を聞いてきた僕にももちろん思春期とやらはやってきていて、ちょっと気になっていた女子の恋愛模様や嫌いな男子のモテエピソードを聞くと心の中で絶賛舌打ちをしていた。
たまに、ほんのたまに、布団にくるまって涙を流しながら一晩を過ごしたときもあった。
しかしこんなチキンな僕に恋人などできるわけもなかった。まあ別に欲しかったわけでもないが。
勿論そういったものに憧れがなかったといえば嘘になる。が、馬鹿な男子どもとは違いそういう感情を表に出さなかったことが裏目に出たのか、恋愛とは全く縁のない中学生活を送った。
勉強が普通よりできたことが功を奏し、唯一高校受験の前後、数人の女子からの憧憬の目やそれに対する男子からの羨望の眼差しを受けたのも事実だが、それは一時的な感情の揺らぎであって何かが起こるはずもなかった。
今思えばあのとき何かアクションを起こしていればまた変わっていたのか、と考える。
いや、そんな自分は想像できない。
つまり僕はモテなかった。
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