第112話 物作りな午後

という訳で暇な私です。

何か作ろうかな。今の私達に必要な物。何かあるかな?

今、娘達が入っているお風呂はこれ以上弄る必要はないし。その内本物の温泉でも引こうかな。

キッチンは、シンク・レンジ・冷蔵庫が揃っている。湯沸かし器を作ってもいいけど、私が望めば蛇口から出てくるし。最近どうやらミズーリも万能さん相手にある程度は融通が効かせる事が出来るらしいし。

ベッド周りも私達が寝る分には充分広いし、整っている。いかがわしい真似を始めなければ全く問題ない。その予定も当分無い(予定)。

機動力は家と馬くんで今のところ足りてる。

衣類は必要に応じて作ってるし、姫さんの座敷牢にしていた小部屋をそのまんまクローゼットにしてるから収納に問題ない。

あれ?家族も増えて狭いながらも、わりかし充実してました。


では、この森の中で必要な物ですが。

官舎はいずれ建てるとして、開拓しますか。とはいえ、木を切りたく無いしなあ。

ならば地下か空中開発になるけど、空中は日照が問題になる。地下は、うん地下都市や地下鉄なんかも面白い。

そういえば、ミズーリが川魚について色々話していたなぁ。養殖事業の準備を始めるのも良いなぁ。

キクスイの魚は不味いと万能さんが言ってたから、釣った魚をリリースした事もあったね。ならば美味しい魚も探してみるのも面白そうだ。


という訳で、私はまた1人山に登った。キクスイからの山越えや午前中の狩猟で見かけた物があったのさ。それがコレ。

枇杷に似た果実である。

万能さんに確認を取ると、食用可との判定が出た。


たしかに枇杷の野生種に似ています

しかし甘味が足りませんね


では品種改良するしか無かろうもん。掛け合わせには時間がかかるので、遺伝子組み換えでいきましょう。

前世の世界では「遺伝子組み換え」と言われて安全性の面で不安がありましたが、何しろ私ですからねぇ。どうとでもなります。

今、成っているこの実・この木の遺伝子を丸ごと組み換えちゃいます。

ついでにこの斜面一帯を枇杷の林に増やしちゃえ。時折、こうやって果樹を見つけたら増やして行こう。


さて、この山から見渡せる部分と地図を見比べて用水路と池の計画を練ります。

ふむふむ、ここはこうして。この辺りは木が隙間あるあたりだから、溜池を作ろうかな。

「(そこはダメ)」

うわぁ?びっくりしたあ!

いつの間にか、後ろに少女が立ったいた。

あれ?君は。

前に会った事あるな。ツリーさんと一緒にいたお姉さんか。

「(そこには狸の巣がある。子供が産まれたばかり)」

なるほど、それは可愛いし見てみたい。溺れちゃったら可哀想だ。

ならば少し規模は小さくなるけどこの辺ならどうでしょう。

「(そこなら大丈夫、必要なら木を退かす)」

あれ?私、森の人のお姉さんと意思疎通が出来てますね。

「(あなたのご飯をツリーが沢山食べた。私達は沢山の精霊にして一つの存在。ツリーの気持ちと記憶は全員のもの)」

なるほど。

「(だからツリーの気持ちは私の気持ち。パラリ。」

だから何で脱ぎだすのですか。

「(冗談)」

心臓に悪いですよ。

「(今は)」

いまわ?


なんだかんだで、森のお姉さんと少し打ち合わせをします。

森的に何か困っている事、必要な事はありませんか?

「(人間の焼畑の後始末)」

焼畑ですか。木や草を焼いて燃え滓を肥料にする開拓開墾ですね。

途上国がやり過ぎるせいで、温暖化や酸素不足、自然破壊が深刻になるって前世でもありました。

でも、土塁築成で外部侵入は出来ませんしこれ以上は広がらない筈ですが。

「(土を治したい)」

はあ。それはやぶさかでは有りませんが。

あ、おいおい。私の手を引っ張ってどこ行くんですか?


マスター 飛びますよ


はい?空飛ぶくらい今更ですが、何故に忠告うおおおお!

速い速い。ちと速すぎて呼吸がガガセガガガ。

「(端っこ。ちょっと遠い)」

あははははは。なんか顔が歪んでる自覚が有りますよ〜。


飛んでいたのはほんの数分。

森のお姉さんが案内したのは、駐屯地から20キロ程離れた場所でした。たしかにこれは焼畑の跡ですね。自分で作っといて何だけど、土塁って直に見ると結構高いんだ。

広さにして、なんでいえばいいんだ?東京ドーム何個分って言い方するんでしょうが、パッと見、奥行き1キロ以上幅も200メートルくらいは焼け焦げてます。

気になる事が一つ。地面固まって無い?

「(人間が燃やした時に、樹液が燃料となって燃え広がり、火が消えた時にはこうなってた)」

そっかー。松脂みたいな物が変質したのかな。このままだと土が呼吸できないし、土中の生物も死んでしまう訳か。

「(治せる?)」

治せますよ。楽勝です。

さて、どう治すかな。変質した樹液の再変質させようか、いや待て。樹液であるならば、肥料にならないかな。


出来ますね

ただし、固まっていますから 相当攪拌させないと


それは任せろ。燃える男の赤い耕耘機出陣。

耕して・濾して・空中にばら撒くフル機能装備の万能農機で、1時間もしないうちに終了。 

いや、別に一瞬でも出来るよ。でも、働きたいじゃん。狩りに出ても直ぐ終わっちゃったから、やる事なくてぶらぶらしてたんだから。

水堀から水を引いて空き地の真ん中に農業用水を作りました。いずれとは思ってましたが、もう作る機会があるとは。

さて、この空き地どうしましょう。

森のお姉さん?植樹するならどんな木がいいですか?

「(ごはん)」

はい?

「(ツリーだけずるい、私もトールさんのごはんを食べたい)」

ええと、つまりこの土地は畑にしてお野菜を作りたいと。

「(昨日食べてた竹の子が生える場所も遠くない。ここだけで食べられるごはんを作って欲しい)」

開墾地を極力減らしたいからと諦めていた農地が、まさかの誕生です。

「(こんな場所ならいくつもある。畑にするなら自由に使っていい)」

ええとそれは、全部開墾し直せと?

「(任せた)」

良かろう。任された。

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