第85話 森の人はお肉好き

パンケーキは森の人にも好評でした。

メイプルシロップと蜂蜜を出したところ、メイプルシロップの方がお気にいった様で、蜂蜜瓶はぐりぐり私に返して来たので片付けましょう。

「なら私に頂戴。」

とミズーリ姉妹が持って行きました。彼女達には蜂蜜の方が舌にあったらしい。

私には区別がつかないんだけどね。

ベーコンやローストビーフは姫さまには初めてだったみたいで、黙々黙々完食すると私の皿から勝手におかわりを持っていきました。

その所業はミズーリで慣れていたので、おかわりを別皿に盛ってテーブルの真ん中に置くと、欠食姉妹が取り合いを始めました。。

意外な事に森の人も肉食に抵抗は無いみたいでお肉争奪戦に加わっている。ちょっと危ないなぁ。という事で更に別皿で森の人用に用意してあげましょう。

夢中になってベーコンを両手で引っ張っている森の人の肩を小指で触れて合図すると、パパパパパーっと戻って来て、私の手に礼代わりに抱きつき、小さなフォークでムシャムシャ食べ始めます。

可愛いい。

その姿を、なんともなしに眺めるていると。

「あれ?私達がお肉にたかっている間に、なんかトールが森の妖精に心を奪われているわ。」

「ご主人様はやっぱり小さなものが好きなんですね。でも負けませんよ。私だって帝国皇女のはしくれ。殿方を魅了させるマナーの一つも身につけていますわ。」

「しまった。私には何もなかったわ。どうしようどうしよう。…そうだ!トールのご飯を世界で一番美味しく食べる姿を見せる事が出来る。」

女3人寄ると本当に姦しいなぁ。

騒いでいるのは2人だけど。


昼食を終え、ミズーリがお皿を洗い始める。

お皿が勝手に消えていくところはどうかと思ったが姫さんは気にしないらしい。気にする事を辞めたという方が正しいかな。

「それで、これからどうなさるんですか。ご主人様。」

「食休み。」

「いやあの、そういう事では。」

「何言ってるのよミク。食休みは大切な事よ。私達みたいに徒歩の旅行者は。」

「そうですか。そうですね。」

姫さんは素直過ぎないだろうか。こっちの方も少し心配な娘だ。

「とりあえずはコマクサ屋敷に向かうが、徒歩でどのくらいかかる?」


馬だと半日かかりませんが、徒歩だと何もなければ2日強ってところです。


「そうですね。大体ふ

「姫さんは乗馬できますか?」

「へ?あ、あの」

万能さんへの問いかけを自分にと勘違いした姫さんは話の展開について行けてない。

「あ、あの。乗れますが、整備された道だけです。この辺は普通の森の中ですから難しいです。」

馬くんなら出来そうですね。


任しとき、ただし奥方とお妾さん、どちらかに絞って下せえ


万能さん、もう一頭出せますか?


可能ですが、馬移動に確定ですか?


いざという時のために確認しただけです。

徒歩移動は変わりありません。

ふむ。改めて地図を眺める。

「姫さん、森の中で人と遭遇する事は?」

「姫さんじゃなくて、ミクです。」

(頑張れミク)

「あの…。」

「ミク!呼び捨てにして下さいと、今朝がたお願いしたばかりです!。」

(君の入れ知恵ですかミズーリ)

「…ミク。」

「なんでしょうか旦那様。」

ご主人様から悪化してしまった。

(私はそこまでしろとは言ってないからね)

「そうですね旦那様。巡回兵、木樵、狩人ってあたりでしょうか旦那様。ただ、作戦開始の時に私が民間人の立ち入り制限を発令しています旦那様。私達が健在ですし発令したのは昨日です旦那様。まだ結果が出ていない以上、発令を取り下げる事は考えにくいと思います旦那様。ですから、巡回兵だけだと思われますが、その兵も4分の1が未帰還兵となっている訳ですから旦那様。更に司令官が行方不明、兵の絶対量の低下と巡回密度の必要性の二律背反に東部方面軍は身動きが取れないものと判断します旦那様。」

もう旦那様言いたいだけですね。

「旦那様ってなんか口に心地いいです。旦那様。」

「もう!瑞樹くんも鼻のした伸ばさないの!」

ここで持ってきやがったかクソ女神。

「ミズキクン?」

「トールのファミリーネームよ。ミズキ。割と好みな呼び方らしいから、いざという時に使いなさい。」

「旦那様のファミリーネームはミズキ様。ミク・ミズキ。うん、フォーリナーなんかよりよっぽど素敵だわ。」

ポンコツ貧乳三姉妹が揃うと、今まで以上に話が先に進みません。

誰か助けてください。

森の人が私を叩いて慰めてくれました。

と思ったら、何ですか、その胸強調ポーズは?

貧乳三姉妹を訂正しろとでも言いたいのですか。

うんって頷かれちゃった。

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