第42話 キノコ炒めの可能性
結局、対策会議ブレインストーミングなんかなにも出来ずお昼になる。
それでもちゃんと歩いていたので、丘陵地帯が見えて来ている。が、その手前が林になっていた。天界謹製地図で改めて確認すると、この国は北側が未開拓ながらものづくりが盛んな地区、南側が農村地区で数本の街道が南北に走り、要所要所に都市が設けられている。
そして東西は丘陵・山脈が走る細長い形をしている国な訳だ。
丘陵・山脈には幾つかの鉱山、山村が見受けられる。国全体が一乗谷の大きいの、という表現が一番楽かな。
私達は東西に横断し、南北に縦走している訳だ。
今日は雨も止み青空が見えている。むしろ陽の光が眩しいくらいなので木の下を幕営地にする。
水分補給とトイレの為にバンガローを展開。
中に入ったミズーリは早速絨毯で転がっている。
「脱がないから。」
先に言われた。いや、それが当たり前なんですから。
トイレを済ませて手を洗う。ミズーリが並んで水筒に詰めている。魔法瓶というものは前世にもあったけれど、私がミズーリにあげた万能印の水筒は持主の意志通りの性能を発揮する。
冷え冷えの大好きなミズーリは定期的に冷え冷えで水筒詰めをしている。
蛇口から出てくるのはミズーリの大好きな「トールが出す水(ただのミネラルウォーター)」なので。トールから貰っても、それはそれで良いけど、常に抱えていたいそうだ。
この女神は健気なんだかよく分からない。
さて、塩ラーメンだけど私はあれしか作った事が無い。そう、日本人誰もが好むあの袋麺だ。あれしか作る気しねえ。頼んだよ万能さん。
ゆで卵を作って、白菜椎茸にんじん豚こまを適切な大きさ、薄さにカットして炒めておく。たけのこさん達ははまた今度。
野菜炒めは2品。キャベツ、もやし、豚コマ、キムチをさっと炒めて塩胡椒で調整。
もう一つは椎茸、エリンギ、エノキダケを指で適当にちぎったらバター醤油で炒める。
袋麺が茹で上がったら、ゆで卵を半分に切り用意した具を乗せる。
豚コマキムチ炒めとキノコのバター醤油炒めをそれぞれ別皿に入れて、仕上げは切りごまをパラパラ。
インスタントという、今まで食べできた麺とは違う食感に最初驚いていたミズーリは、スープを一口飲んでから変わった。
「ご飯。トールご飯ちょうだい。」
だよね。私もスープを少し塩辛くして、ご飯を投入していたもん。
豚コマキムチには大した反応を示さなかったミズーリだがキノコには興奮し始める。
「肉じゃないよね。これキノコだよね。なんか肉っぽい。あとこの食感私大好き。」
ここ数食は大人しく食べていたのだか、一気にへっぽこ度がマックスになっちゃった。
麺を食べ終わるといち早くご飯を投入。レンゲを差し出すと、両手で私の手を包む。
感謝の気持ちらしい。
「美味しいの。美味しいの。」
ののの再発ピンチ。私の皿からバター椎茸を食べさせてあげると、
「椎茸ってこんな美味しかったっけ⁇」
興味を変えさせる事に成功。
「キノコって調理次第で化けるからね。菌糸と菌糸の間に味をたっぷり染み込ませられるし、キノコによって香りも食感も全然違う。私達の好みに合ったキノコと好みのあった調理法を見つけると死ぬまで楽しめるんだ。」
松茸、しめし、たまご、いぐち。どれもこれもみんな違う美味しさがある。
「決まり!トール。ラーメンとコーヒーとキノコ。今後とも何卒宜しくお願いします。」
深々。
そりゃ、万能さんに頼めばなんとかなるでしょうけど。うんって言ってるし。
でもねミズーリ。君、女神の分際でどんどん存在が安っぽくなって行きますよ。
「だからトールが責任とってよね。」
私が取らないといけない責任が、気のせいかどんどん軽くなっていく。
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