無責任な神々の後始末

@compo878744

第1話 神様の土下座

深い深い眠りから覚めた。普段、決して寝不足という訳ではないが、休みの日は目覚ましを掛けず1~2時間くらいわざと寝過ごす様にしている。

その程度には朝は弱い。

それにしても今朝はよく寝た様だ。

今の時間を調べようとして気が付いた。

時計が無い。いや、ここは何処だ。

いつものベッドに寝ていない。眩しくはないが、自然光を感じる優しい何もない空間に浮かんでいる。

身体を起こしてみると、足元に誰かが土下座しているのが見える。

ふむ、寝ぼけている様だ。また寝てみよう。

「待って下さい。起きて下さい。」

土下座していたのは女性だった様だ。整った顔を上げると慌てて話かけてきた。

「あなたは?」

「私は死と転生を司る女神、ミズーリと申します。貴方様に申し上げたき事がございます。」

「おやすみなさい」

「起きて下さい」

起きないといけない様だ。

「であなた誰?」

「はい、女神ミズーリです。本当に女神です。

貴方は不幸にも亡くなりました。」

「ふむ」

普段から体調管理には気を遣っていたし、記憶を漁っても普通にベッドに入った事が最後だ。これは心不全か、それともなんらかの突然死か?まあ、それはそれでよくある事だが、まさか自分の身に起きたという訳か。ならばここは三途の川で、この人は奪衣婆という訳かな。

「私のせいで」

おい。

「本来亡くなる予定の方は、あなたのお住まいの隣の赤ちゃんだったんですが、迎えの座標を間違えてあなたの魂を呼び出してしまったのです。」

はあ。

「ならば魂を元の身体に戻して下さい。」

「それが」

「それが?」

「貴方様がなかなか起きてこられなくて。日が経ってしまい身体は家族の方が火葬されてもうありません。」

「…」

「申し訳ありません。」

理解が追いつかない。この人は死神って事?

私はもう死んじゃった?この人のせいで?

謝られてどうしろと?

「…」

「申し訳ありません。」

「で?」

「はい」

「どうするんです?」

「私は転生も司っていますので、新しい身体と新しい能力をお授けして、現在お持ちになられている知識はそのままに新しい人生を送って頂こうと」

「お断りします」食い気味に

「え?」

「死んだのはわかりましたが、私は自分が歩んで来た人生に誇りを持っていますし、戻れないのであれば未練です。ならば大人しく死なせて下さい。」

「そそそそそんな。」

そが多い。

「とととりあえず送ります。詳細は追って」

それだけ言うとミズーリとか言う奪衣婆は人を突き飛ばす。

なんら抵抗も出来ず気持ち悪い落下感と共に意識も落ちた。



再び起きたところは森の中だった。子供の頃夏休みにカブトムシを取りに来た、そんな下草の薄く手入れされているであろうよくある森だ。

目の前に白く光るものが浮いている。

おそらくこの世界で役に立つなんらかのアイテムがあるのだろう。

とはいえ、当たり前に会話をしていたが私は絶望しているのだ。他人のミスで死にましたと言われそうですかと納得出来る程人間が練れていない。

普通に怒り心頭に達しているのだ。神様だか奪衣婆だか知らないが他人(しかも女性)に当たる事を良しとしていないだけだ。

私は光を無視して別の方向に歩き始めた。

その瞬間、背後から火の刃が私の首を貫き私は大人しく死ぬ事が出来た。

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