#25 春休みに彼女の元へ
今、僕は新幹線に乗って、イクミの住む町に向かっている。
終業式を終えて春休みに入り、今日これから2泊3日の滞在予定だ。
イクミもこの3日間は部活を休んでくれて、ずっと一緒に居れることになった。
滞在中は、イクミの自宅にご厄介になる。
最初はビジネスホテルに泊まるつもりだったけど、イクミのご両親が「それならウチにおいで」と言ってくれ、お言葉に甘えることになった。
相変わらずの歓迎ムードでちょっと怖い気もするが、ここは点数稼ぎもしておこうという打算もある。
新幹線の移動時間は約1時間半あるので、ここ最近のことを思い返して時間を潰した。
2月のバレンタインで、しつこく言い寄るクラスメイトを思いっきり罵倒したミワは、僕のアドバイス通り翌日から何事もないかの様に振舞った。
そのお蔭か、クラスメイト達からは
中には勘違い男とくっつけようとしていた周りのクラスメイト数名が、今更になって勘違い男の悪口をいいながらミワに擦り寄ろうとしたらしいが「アナタ達がアイツを焚き付けてたの知ってるんだけど? 結局アナタ達は何がしたいの? 私にはアナタ達と関わることの価値が見いだせないんだけど? ていうかアナタ達も口臭いわね? 歯、磨いてるの?」等々、僕でも言われたこと無いような絶対零度の毒吐きまくって、一刀両断した。
たまたま、その日の放課後は僕がミワの教室に迎えに行った時で、汚物でも見るような顔で毒吐くミワの姿に超ビビった。
でも折角ミワが頑張っていたので、僕も『うわ、俺4組じゃなくてよかった~!マジで口臭いの多いのな、このクラス!』と援護射撃しておいた。
それから、ホワイトデー。
イクミには、チョコのお返しに、専門店で買った洋菓子と、部活で使えるスポーツタオルを送った。
早速使ってくれているらしくて、部活の友達に「彼氏に貰ったんだよ!」と自慢してるらしい。
彼氏自慢するのなら、タオルなんかじゃなくて、アクセサリーとかにすれば良かったかと思ったけど、「部活やってるとアクセサリーなんて身に着ける機会がほとんど無いから、タオルのがいつも使えて嬉しいよ」と言ってくれて、気を使ってくれたであろうイクミの優しさに、ちょっとだけウルっと来た。
ミワには、ケーキを食べに連れて行った。
ミワの奴、僕と二人だけなのにオシャレして来たので、『義理寄りの義理なんだかんね!勘違いしないでよね!』とツンデレしておいた。
「そんなことより、いっぱい注文してもいい?」と、僕の渾身のギャグはスルーされた。
あと僕自身のことと言えば、本格的にジョギングを始めた。
平日は、2~30分程度自宅の周辺を軽く流して、週末は往復1時間程度の距離を休みを挟みながら走るようにしている。
ミワも誘ってみたけど、今のところ1度も来たことは無い。
こんな感じで、少しづつ変化がありながらも、なんとか平穏に過ごしている。
そして今日は、待望のイクミのところへ遊びに行く日。
イクミが駅まで迎えに来てくれることになっている。
事前に僕からのリクエストで、イクミの女子高の制服姿で。
「だったらアカリも高校の制服で来て!」と言うので、今僕も制服で新幹線に乗っている。
新幹線が到着しホームに降り、「駅に着いたよ」とメッセージを送る。
待ち合わせの「北改札口」を案内板で探し、階段を下りて行くと正面に改札が見え、その向こうに制服姿の身長の高い女子高生がコチラに向かってブンブン手を振っていた。
あぁ、僕の恋人はどこでも目立つ美人さんだなぁ
若干の早足で改札を抜けると、待ってくれていたイクミは「アカリ!」と大きな声で僕の名前を呼び、人目も憚らずに僕に飛びつくように抱き着いてきた。
『迎えに来てくれてありがとうね』
「ううん、アカリ、会いたかったよ~!」
イクミはそう言って、僕の体を腕ごとガッチリホールドしてブンブン振り回された。
相変わらずのパワー系愛情表現に圧倒されるも、僕も負けじと
『イクミの匂いだ、懐かし~』と言って、全力でクンカクンカした。
とりあえず、人目が気になるので、まだまだ興奮気味のイクミを宥めて、移動することにした。
もちろん手を繋いで離さずに。
ここからの移動は地下鉄の為、イクミに案内してもらい駅構内を移動。
色々お喋りしたかったけど、人ごみが多く移動しながらはゆっくり話せそうにないので、大人しく手を引かれるまま着いていった。
地下鉄に乗ってようやく落ち着いて話すことが出来た。
地下鉄では、もっぱらお互いの制服の話で盛り上がった。
イクミの制服は、セーラー服だった。
そして僕の好みに合わせての黒のタイツ。
僕の通う高校は男女ともにブレザーなので、セーラー服って憧れるんだよね。
セーラー服のイクミと放課後デートとかしたかったなぁと、その姿を見てしみじみと思った。
なので『イクミのセーラー服、どストライク!最高です!』と絶賛しておいた。
イクミは「知ってる」と言いながらも嬉しそうだった。
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