#28 新学期の災難
新学期になって、今までのミワとの登下校にミクもプラスされてから3日経った。
地元の駅に着き、駅前でミワとミクと別れる。
『またなー』と言って手を上げると
「うん、またね」と言ってミワも手を上げて答えてくれる。
「・・・・・」
相変わらずミクは僕のことなんてスルーだ。
ミクの態度に『はぁ』とため息がでた瞬間、視界の端に何かの物体が凄い勢いで入り込んだ。
考えるよりも先に飛び出してミクの腕を掴み力一杯引っ張った。
代わりに、飛び出した勢いとミクを引っ張った反動で、ミクと体が入れ替わるように僕の体が前に飛び出た。
その瞬間、体の左側面全体に衝撃を受け、吹っ飛ばされた。
*
気が付くと、真っ暗な室内だった。
よく小説やドラマなんかにあるシーンだと「見慣れない天井で、うんたらかんたら」ってあるけど、部屋が暗くて天井とか見えないんですけど。
そのせいで、ココがどこだか判らないまましばらくボーっとしてた。
全身痛くて指先まで痺れてるし、口の中は不快な味して喉はカラカラで声出ないし、なのに頭はぼーっとして思考が上手くまとまらなくて、気を抜くとすぐ眠りそうになる。
(僕、何してココにいるんだっけ?)とココに来るまでの事を思い出そうとしたけど、何も思い出せない。
それから、さっきから尿意を催してるんだけど、体動かないからもう諦めた。
でも、漏らしたはずなのに、お尻とかに尿が染みてこない。
しばらく不思議だったんだけど『あ、オムツ履いてる』って気が付いた。
オムツ履いてることに納得したら、安心しちゃってまた眠った。
次に起きた時は、外から光が差し込んでて、ようやくココが病室っぽいことが判った。
でも今が朝なのか夕方なのかが判らない。
部屋が明るくなったから周りを見回したいんだけど、首が回らない。
手を動かそうとして、右手は動くけど左手がなんかで固定されてる。
脚を動かそうとして、両脚とも一応動くけど、後遺症のある方の左脚は、ダルい。
脚全体のスジがパンパンに張ってるようだ。
なんか中1の時の事故の後のリハビリしてた頃の感覚に似ている。
で、思い出した。
事故だ。
駅前でなんかに跳ね飛ばされたわ。
おいおいおい、またかよ。
3~4年に1回事故にあう周期でもあるのかよ。
中一の時はスリップしたバイクに巻き込まれたっけ。
しかし、困ったな。
確か、事故の時にミワとミク居たな。
あいつ等大丈夫だったかな。
あー・・・そうだ。
事故にあったなんて知ったら、イクミ泣くかな・・・・泣くよな・・・・参ったな・・・こんなことで泣かせたくないのになぁ・・・
イクミのこと考えたら、超ブルーになってきた。
何とかイクミに知られずにやり過ごすこと出来ないかな・・・無理だよな・・・。
そんなこと考えて、ズーーンっと気持ちが沈んでいると、部屋に看護師さんが入って来た。
声が出ないけど、なんとか振り絞って掠れ声で話しかけた。
『あ”、あ”の・・・』
「え!?三上さん!?気が付きました!?すぐ先生呼びますから、待って下さいね!」
そう言って、飛び出して行っちゃった。
いや、先生よりも、ココがドコとか、今なん月なん日とか、先に教えることあるだろ。てか、何でもいいから飲み物くらい頂戴よ!ノドからからなんすよ!と名前も知らない看護師さんに心の中でクレームを言うも、全身ダルくて直ぐにどうでも良くなった。
で、先生が来てから、お約束の「自分の名前言えますか?」とか「この指が何本に見えますか?」とか聞かれて、一瞬『僕の名前はヤンボーです。弟の名前はマーボーです』とか『108本です。煩悩の数だけ見えます』とかボケで返そうかと思ったけど、空気読んで真面目に答えた。
先生の説明では、軽トラに跳ねられて、4~5メーター吹っ飛んで、全身打撲で左手骨折だってさ。
頭も打ってるから、しばらく様子見る必要があるとかで、直ぐには退院出来ないらしい。
事故の日から二日経ってた。
新学期早々入院かぁ
折角クラス一緒になったのに、ミワ大丈夫かなぁ。
クラスに馴染めるかなぁ。
そんな心配してたら、母親が来てくれた。
とりあえず、僕のスマホと充電器持って来てもらうようにお願いして、先生の話聞いたら着替えとかの入院グッズ取りにまた家に帰っていった。
ノドがカラカラだったので、母親が置いて行ったペットボトルのお茶をガブ飲みしたら、すぐにカラになり、またすること無くなって、気が抜けて寝落ちした。
で、次に起きた時には、ミワとミクが居た。
僕が起きたのに気が付くと、二人一斉に大泣き。
ウチの母親が連れてきたらしい。
ミワもミクも大泣きしてて何言ってるのか判んないから、母親に聞くと
事故の時、ハンドル操作誤った挙げ句、アクセル全開暴走軽トラが歩道に突っ込んできて、その進行方向にミクが居たんだけど、それを僕が咄嗟に引っ張って、代わりに僕は跳ね飛ばされたらしい。
軽トラはそのまま建物に突っ込んで止まって、運転してたジジィはピンピンしてるとさ。
そして僕の方は、ミワが気が付いた時には血まみれで倒れてて、それ見たミワが錯乱しちゃって「アカリ!アカリ死んじゃダメ!」って泣き叫びながら僕を抱き起そうとして、ミワも僕の血で血まみれになったらしく、周りに居た人たちが「ケガ人動かしたらアカン」と引き剥がそうとしたらミワ大暴れして、救急車とか来た時も大変だったそうだ。
ミクの方は、腰抜かして立ち上がることも出来なかったらしい。
とりあえず、二人とも大泣きしてて鳴き声が頭にガンガン響くから『二人とも、頭痛いから静かにしておくれ』と宥めて、イスに座って大人しくして貰った。
『二人とも、ケガはしてない? 大丈夫だった?』
「うん・・・私たちは大丈夫だった」
『そっか、良かった・・・・で、事故のこと、イクミに連絡しちゃった?』
「うん・・・イクミに連絡したら、イクミも直ぐこっちに来るって」
『はぁ!? っつてててて、痛て・・・イクミこっちに来るの!?』
びっくりして大声出したら、首とか胸に激痛はしった。
「うん・・・イクミに凄い心配かけちゃった。どうしよ、アカリ。イクミに怒られちゃうよね?」
『いやいやいや、怒られるとかよりも、こんなことでイクミを泣かせたくないんだけど』
『あ、そうだ、僕のスマホ!直ぐイクミに連絡取りたい』
そう言って、母親に持って来てもらったスマホを受け取る。
事故の時はカバンに入れていたので、スマホ自体はダメージなしの様だった。
で、なんか履歴とか凄いことになってるけど、とりあえずイクミに電話掛ける。
ワンコールで通話が繋がり
「アカリ!アカリなの!?アカリ生きてるの!?」
めちゃくちゃ耳がキンキンした。
声デカいよバレー部。
『あの~イクミさん?とりあえず生きてます』
「よがっだぁ~」って言いながらイクミも電話口で大泣き。
『とりあえず落ち着けって。今ドコにいるの? ミワからこっちに向かってるって聞いたけど、無理しなくていいからね』
「うん(ひっくひっく)今、駅着いた(ひっく)これからタクシーで病院向かう(ひっく)」
おぅ、遅かったか。
こんな姿イクミに見せたくなかったから、こっち来る前に止めようと思ったけど、もう間に合わないか。
で、イクミ到着。
病室は、更なるカオスな状態となった。
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