#15 オンナコワイ
11時過ぎに、イクミの家に着いた。
まだイクミのご両親は出発していなかったので、お礼とかの挨拶を先に済ませた。
お母さんからは「こっちに残るイクミのこと、よろしくね」と言われ、僕からも『遠距離になると、色々ご迷惑やお世話になるかと思いますので、その時はよろしくお願いします』と今後のことのお願いをしておいた。
お父さんには「帰りの車の運転、気を付けて下さい」と挨拶した。
昼食を一緒にお呼ばれして、12時半にはご両親は出発した。
その後、イクミの部屋へ行くと「ジャジャーン!」と言って、購入したばかりのスマホを見せてくれた。
今朝、近所の携帯ショップに行って開店と同時に買って来たそうだ。
早速連絡先を入れておこうと、僕の連絡先を教えた。
30分ほど、イクミのスマホを二人でいじって、操作方法や機能なんかの確認をしていたのだけど、急に閃いて『イクミにスマホカバーをプレゼントしたい。今から買いに行かない?』と提案した。
イクミは「え!?いいの?でも高いんじゃない?」と言うので
『お年玉貰ったからよゆー。それに値段もピンキリだから、実際にお店で選んでみない? あ、でもネット通販のが種類は多いか』
そんなこんなで、スマホカバーをプレゼントすることになった。
結局、イクミが「折角のプレゼントなら、アカリから手渡しで欲しい」とのご希望もあり、買い物に出かけることに。
バスに乗ってショッピングモールまで行った。
相変わらず、移動中もずっと手を繋いで離さない。
そういえば、この二日間で気が付いたんだけど、手を繋いで歩く時、身長や手の長さに差があると、なんかバランスが悪く感じる。
僕の場合だと、ミワと手を繋ぐとそうだ。ミワとは身長の差が10センチ近くある。
でも、イクミだとしっくりくる。身長がほぼ僕と同じなんだよね。
大した話じゃないけど、こういう発見に幸せを感じる。
ヨリ戻せていなかったら一生気が付かない発見。
ショッピングモールに到着すると、正月初売りの影響か普段よりも混雑していた。
携帯ショップや女性向けの雑貨屋に行けば色々あるだろうと、何店舗か見て回ることに。
イクミは今までスマホを持っていなかったが、持っていなかったが故の憧れみたいなのがあるようで、手帳タイプ(カパって開くタイプ)を中心に見ていた。
結局最初に入った雑貨屋で見つけた一目ぼれした物を購入することになり、一旦僕が預かって支払いを済ませた。
それじゃ早速装着しようという話になり、モール内のコーヒーショップへ移動した。
丁度ペアシートが空いていたので、イクミに席を取っておいてもらい、僕の方でドリンクを二人分購入し、イクミの待つ席へ運んだ。
席に着いたら早速スマホカバーをイクミに渡した。
イクミはスマホカバーを受け取ると、突然泣き出した。
『どどどどどした!?』と慌てて声をかけると
鼻をスンスンかみながら「ごめんごめん、アカリと再会する前と今の幸せのギャップが急にこうガーって押し寄せてきて、なんか胸一杯になっちゃた。こんなに幸せな気持ちになれるなんて、3日前には考えてもいなかったから」と話してくれた。
『そうだねー、僕もイクミと手を繋いで歩きながらイクミの横顔見てて似たようなこと考えたなぁ。うわ本物のイクミが横に居る!手を繋いじゃってるよ!やっぱり本物のイクミは美人だよなぁ。再会出来ていなかったら、綺麗な横顔見ることも手を繋ぐことも出来なかったんだよな・・・てね』
「なんかさ、別れてからずっと気持ちが沈んでて何やってもつまんなくてさ、ずっとこんな気持ちのままなのかなって諦めの気持ちになってたのに、再会してまた恋人になれた途端、長いこと沈んでた気持ちが全部吹っ飛んじゃったよね。あんなにつまんないって毎日思ってたのに、この3日何しても楽しいの!すっごいよね!」
『まぁ、ある意味、イクミも僕も単純なんだろうね。別れる=悲しい、付き合う=楽しい。多分それだけなんだよ』
こういう話をしてて、お互いの価値観とか僕たちは相性がいいんだと感じた。
話が色々横道に反れてしまったけど、スマホカバーをイクミが開封し、僕が装着してあげた。
カバーを装着したスマホをイクミに返すと「ありがとー!」といって座ったままハグしてくれた。
折角だから記念の写真をと、僕のスマホで二人の自撮りを撮った。
二人で顔を寄せ合ってイクミは自分の顔の横にスマホをかざして、プレゼントしたスマホカバーが写る様にした。
写した写真は直ぐにイクミのスマホに送り、イクミはその写真を見てニヤニヤしていた。
目的の買い物が終わったしこれからどうしよっか、となり、折角来たからテキトーに回ろうかとなった。
二人分のカラのカップを持って席を立とうとすると、イクミが僕の袖を引いて耳元に顔を寄せてきた。
「今日からパパもママも居ないから、エッチ出来るよ。私はしたい。アカリはどう?」と。
そりゃ確かに僕も少しは考えたけど、イクミからお誘いがあるなんて思ってなくて
『あ、うん、したい・・・うん、したいです・・・』って、動揺しながらなんとか答えた。
イクミは僕の答えを聞いて「よかった♪」と言って、サっと僕のほっぺにキスしてくれた。
イクミの顔を見ると・・・こやつもメスの顔をしていた。
なんか、頭の中でミワの顔と重なって、オンナコワイって思った。
コーヒーショップを出てから1時間ほどモール内を手を繋いでウロウロした。
途中で、中学時代の友達グループに遭遇し
「あれ?三上?って、え!?高梨イクミ!?」と物凄く驚かれた。
「高梨さんって転校したよね?こっち戻ってきたの?てか、三上と付き合ってたの!?」って感じで質問されたが、僕が答えるよりも先に、イクミは僕の腕ガッチリ組んで彼女アピールしながらわざと偉そうな態度で「私たちずっとラブラブだから♪知らなかったの?」と言い放った。
それ聞いて友達連中は絶句してた。
僕は『ま、まぁそういうことだから、またな』と言って、イクミを引きずる様にその場を離れた。
イクミ曰く「冷やかされるのが嫌だったから、こっちから威圧してやった」とのこと。
やっぱり、オンナコワイ。
当然、後日同中ネットワークで「あの高梨イクミと三上アカリが付き合ってる!」という噂が流れた。
今度は事実だったので、僕も否定はしなかった。
帰りのバスで、昨日のミワとの事を話した。
家に帰るとミワが居座ってて、真正面からぶつかってみた。
僕は高梨イクミが大好きだ!
誰にも邪魔させない!
キャント ストップ マイ ラブだ!
ミワは僕の友達だ!
僕はミワを見捨てない!
って叫びまくった、と話すとイクミは「熱血のアカリ、ウケる!」とゲラゲラ爆笑していた。
「それで、ミワちゃんの方はどうだったの?」
『うん、大暴れだったよ。裏切者!って叫びながら物一杯投げられた』
「え!?ミワちゃん、暴れるの???」
『おう、滅茶苦茶暴れるよ。アイツ猛獣だから。西中の美少女コンビなんて空想上の話だから』
「・・・私、親友だと思ってたけど、ミワちゃんが暴れるとか全然イメージ湧かない。むしろ暴れるのは私の方だったと思う・・・」
『いやいやいや、ミワは普段猫被ってるから、ミワのが絶対狂暴だから。今朝だって、ウチに泊っていきやがってさ、あ、ちゃんと僕はリビングのソファーで寝たから襲われてないからね。で、ミワが帰ったあと気が付いたんだけど、布団の中にブラジャートラップしかけていきやがった』
「え???ブラジャートラップ???なにそれ?」
『そのまんまだよ。あいつ自分の脱いだブラジャー、僕の布団の中に隠してそのまま帰りやがった』
「・・・もう、私の知ってるミワちゃんと、アカリの言うミワちゃん、同一人物じゃないよね? 絶対別人だよね? そうじゃなかったらUFOに攫われてるよね? 脳みそ改造されてるよね?」
『あ!そうだ忘れてた! ミワにイクミとヨリ戻したって今朝話したの。それでイクミに会いたいって言ってて、ホントは今日一緒に来たがってたけど、イクミに確認してからってことで今日は諦めて貰ったのね。で、どうする?会える?』
「うん、もちろん!」
『じゃぁ、明日にでも連れてくる?』
「日にちは保留でもいい?出来ればもうちょっと二人っきりの時間を満喫しておきたいし。ね?」
『了解。んじゃ、明後日以降どこかで1日くらい調整しよっか』
何とか、イクミとミワの再会も実現できそうだ。
バスを降りてからも、ミワの猛獣ネタで盛り上がりながら歩いた。
帰りがけ、コンビニでコンドームを買って帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます