#07 壊れ始めた二人の距離感





次の日から、ミワの僕に対する態度が変わっていった。


お喋りしてるときとかさり気なくボディタッチしてきたり、登下校の電車で座席に座ると横に座ってべったり体を密着させてきた。


極め付けは、帰りに地元の駅に着き改札を出ると、強引に腕を組んで来た。

なんだかモヤモヤしつつもミワを家まで送ると、家の前でキスをせがむようになった。


(もうコレは、ミワにとっての精神安定剤なんだ)と割り切って、されるがまま言われるがままに応じる様にした。


二人でいる時はそんな状態だったので、学校帰りに地元の駅でたまたま再会した中学時代の友達とかに、物凄く驚かれた。


なんていったって、中学時代の僕とミワは犬猿の仲で有名だったし、まさかその二人が恋人の様にべったりくっついているんだから。


それが切欠だったのか、同中の友達の間で「あの森田ミワと三上アカリの二人が付き合ってる」という噂が流れた。


僕のところにもミワのところにも中学時代の友達から、ことの真相を訪ねる連絡がちょくちょく来ていたが、当のミワは全く気にする様子もなかった。

僕の方に来た連絡には「同じ高校になって仲直りはしたけど、付き合ってはいないよ」と否定をしておいた。






高校では文化祭以降、相変わらずの平穏な日々を過ごしていた。


ただ、ミワは放課後だけではなく、お昼休みも僕がいる2組に来て、一緒に弁当を食べる様になった。


冬になっても僕とミワの関係は相変わらずだった。


以前は二人の距離感に気を付けていたのに、ミワによってそれはぶち壊され、恋人でも無いのに恋人のようにべったりくっ付き、そして毎日の様に帰り際、キスをせがまれた。







冬休みに入っても、僕達は一緒に過ごした。


クリスマスには、出かけはしなかったけど、ミワは僕の家に来て、僕の家族と一緒にご飯を食べて、ケーキも一緒に食べた。


僕の家族もミワの家族も、もう僕達二人は恋人同士なんだと思っているようで、ミワが大みそかに僕の家に泊まりたいと言うと、両方の家の親は全く反対をせずに許可してくれた。


大みそか、自室で二人で過ごしていると、何度も何度もキスをせがまれた。





そして深夜、家族が寝静まった時間になると

「アカリ、セックスしよ」ととうとうセックスを要求された。


僕は『それだけはダメだ。他のことなら言うこと聞くけど、セックスだけは絶対にダメ』と拒否した。


「なんで?アカリはしたくないの?普通、高校生だったらみんな興味あるんじゃないの?私はアカリなら全然いいよ」


『興味が無いわけじゃない。でもミワとはそういう関係にはなりたくない』


「そういう関係ってなに?恋人にはなれないってこと?」


『違う。僕とミワは友達だろ?友達なのにセックスをするってことはセフレじゃん。そんなのは絶対に嫌だ』


「なんでそんなこと言うの?キスは一杯してくれるじゃん。キスもセックスも同じじゃん」


お互い一歩も引かず、にらみ合いが続いたが、僕はこの際だからと突っ込んだ話をすることにした。


『そもそも、僕は友達であるミワとキスをするのにも抵抗がある。何度しても未だに抵抗がある。なんでミワは恋人でも無い僕にそんなことを求めるの?そういう相手が欲しかったら普通彼氏を作るでしょ?僕はミワと違って、ミワが彼氏を作ることには反対しないよ?』


「別に彼氏は欲しくない。でもアカリのことは欲しい。私だけのアカリで居て欲しい」


『もうさ、それって僕のことを恋人にしたいってことじゃないの?恋人にして束縛したいって言ってるようなもんじゃないの?』


「判んない。アカリと恋人になりたいのか自分でも判んない。でも、アカリが他の女の子と仲良くしてるの見るとイライラするし、自分だけと仲良くしてほしいって思っちゃう」


『多分それ、僕に依存してるんだと思う。僕が居ないとダメだ。僕じゃないとダメだ。僕を傍に縛り付ける為ならキスだってセックスだってなんだってする。って強迫観念みたいになってるんじゃない?』


「そんなこと言われても私わかんないよ・・・」


『とりあえず今夜は落ち着こう?セックスは無理してすることじゃないだろ?お互い同意の上でするべきでしょ?』


「判った。今日のところは諦める・・・」


『うん、そうして。もう遅いし今夜は寝よう』


何とかミワを説得し、その日はベッドでは無く床に布団を並べて就寝した。

電気を消してしばらくすると

「イクミとはセックスしたの?」と聞かれたので

『してないよ』と嘘を付いた。


僕の返事を聞いて、ミワが手を繋いで欲しいというので手を繋いで寝た。




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